不気味な・面白い・哀しい女の物語 川上弘美「物語が、始まる」 |
「珍しいなあ、人間はダメなのに、、ひょっとすると人間じゃないなあ」見知らぬ人に馬鹿言ってる僕。
「人間ですよ」笑って言うお母さん、「化けてるんだ」にっこり笑ったお母さん、もしかしたらほんとに、、?

男の雛形(生きていて成長する)を拾った物語、ドンドン大きくなる座敷トカゲを飼う物語、何匹も猫を飼っている、通りがかりの私を招いてご馳走してくれたり、その家には穴があったりする婆、その婆に恋人の鰺夫が会いたがったりする物語、姉と先祖の墓を探しに行って死んだ父や母やもっと昔の死んだ人たちと会う物語。
四つの物語が語られる。

内田百閒と村上春樹と百物語を混ぜたような、、でもやっぱり「蛇を踏む」の川上弘美だ。
不気味、不確定、軽いユーモア、そこには「センセイの鞄」にも通じる、一人のふわふわとした哀しい女の存在があるように思う。
あ、哀しくなんかない?
そう決めつけるのは僕のセクハラかもしれないなあ。

中公文庫