怖い! 佐藤優「テロリズムの罠 右巻 -忍び寄るファシズムの魅力」(角川)
2009年 02月 27日
恐慌、100年に一度の大恐慌を前にして日本はどうすればいいのか。
新自由主義の進行を阻止しなければならない。
なぜならばそれは世界を崩壊に導くからだ。
どのようにして?
労働力を賃金で買って再生産を続けるのが資本主義の本質だ。
その労働力はこれを提供する人間の生活を保障することによって再生産される。
結婚して家庭をもち子どもを育てることによって次世代の労働力が供給される。
労働者が教育を受け教養を高めることによって技術革新に対応できる労働の質が確保される。
年収200万円以下の給与生活者が1000万人を超えている状況(それはますます悪化している)では上に書いた労働力は確保できない。
すなわちいずれは資本主義の崩壊だ。
こんな簡単なことを弁えない経営者・政治家・官僚がいることが不思議だ。
「こんな世界に誰がした?」と言って自らの不明・不作為を恥じたり反省するのは被害者である一般国民であって主たる責任者である権力エリートではないのが世の常、これが暴動やテロにつながるのではないかと思う。
新自由主義を克服するための道筋ふたつ。
ひとつは
保護主義は滔々たる流れになりつつある。
グルジア紛争に見られるようにロシアは武力による帝国利益の確保=新帝国主義の旗を掲げた。
麻生が掲げた「自由と繁栄の弧」なる価値観外交は最早通用しない。
各国が自国のエゴを最大限にぶつけ合う新帝国主義の世界にあって日本は国論を統一して能動的な外交を展開しなければならないと筆者は云う。
そして田母神論文事件を捉えて、自衛隊のクーデターというシナリオについて、思考実験をきちんと行なっておく必要があると言う。
むしろ自民党より民主党の中にタモガミが多く(ウン、あいつかァ)自衛隊員の能力と士気は外交官を凌ぐものがあるとも云うのだ。
だからタモガミをタブーにせず自衛隊員に大川周明や北一輝などの思想を教えその限界と危険性を認識させておくべきだと。
(雨が雪になって嬉しくてしょうがないからあっちこっちから写真を撮ったけど窓越しのせいか雪は映らなかった)
元厚生事務次官が襲撃されると、すぐに「テロだ!」という反応がある。
それは国民の間に、無意識のうちにテロによる社会の変化への期待があるからだという指摘は怖い。
「こんな世界に誰がした、それはお前も責任があるよ」と言われても自民党に投票したこともないし真面目に仕事をして社内の不正を内部告発したら飛ばされた・飛ばされる人間に出来ることはなんなのか?
デモに参加したって何にも変わらない、公務執行妨害で逮捕されるのがセイゼイ。
ファシズムは自らをファシズムとは云わない。
国家(日本では民族と同一視される)の救済、格差の是正が叫ばれて、なんらかの”宗教=理念”が打ちたてられ、敵が設定される。
それは差別でもある。
肌の色による差別がなくなって(ほんとに?)も新たな差別が創られる。
新自由主義から転げ落ち・はみ出した人々・階層を糾合してエネルギーに変えるのがファシズムの得意技だ。
(大塚・「くう」、俺の誕生日を祝ってくれた人たちがいた。いつものように質の良いものを楽しませてくれてこれでこの先大丈夫かと心配になるほど。鹿児島からのソラマメは今年の初もの)
筆者がいうもうひとつの、残された道筋。
このシナリオに向かわない限り日本の未来はないと筆者は言い切る。
雨宮処凛のように”右”でも”左”でもなく悲惨な貧困層の事実を訴えその救済に動くあり方、富裕層を批判するのではなく只管絶対的貧困を問題視する行き方、それを筆者は評価する。
そうして
俺は憂鬱、ブルーを越してブラックな気分になった。
どうも三つ目のシナリオって現実性が乏しいのじゃないか。
中沢新一が「対称性のある世界の復活」みたいなことを説いている講義録をかなり夢中になって読んだことがある。
佐藤の云うことと中沢の云うことは重なるのだろうか。
話としては魅力的だが、実際には、、?
ってことは、、救いがないってことなのかネ。
(映画「大阪ハムレット」、大阪弁のハムレット、言葉だけやないねんよ。なんやえらい元気もろうてしまいましてん。銭湯は出てくるし、このポスターのバック、まるでワイが撮ったようやないかい。今日で終わりですけどどこかで又やったときにはアンジョウ願いまっさ)
現代国家論についてのユルゲン・ハーバーマスの引用は興味深かったが、「人間の不安」についての経済哲学者・滝沢克己のそれは難解で降参しました。
先日紹介した「左巻」とお対。
新自由主義の進行を阻止しなければならない。
なぜならばそれは世界を崩壊に導くからだ。
どのようにして?
労働力を賃金で買って再生産を続けるのが資本主義の本質だ。
その労働力はこれを提供する人間の生活を保障することによって再生産される。
結婚して家庭をもち子どもを育てることによって次世代の労働力が供給される。
労働者が教育を受け教養を高めることによって技術革新に対応できる労働の質が確保される。
年収200万円以下の給与生活者が1000万人を超えている状況(それはますます悪化している)では上に書いた労働力は確保できない。
すなわちいずれは資本主義の崩壊だ。
こんな簡単なことを弁えない経営者・政治家・官僚がいることが不思議だ。
「こんな世界に誰がした?」と言って自らの不明・不作為を恥じたり反省するのは被害者である一般国民であって主たる責任者である権力エリートではないのが世の常、これが暴動やテロにつながるのではないかと思う。
新自由主義を克服するための道筋ふたつ。
ひとつは
国家がシンボル操作によって排外主義を煽り立てて、国民の活力を国家に糾合しようとするシナリオ本来、代表する利益や理念が異なる筈の政党(民主主義の前提)の違いを超えて国家のためにすべての者が責任を果たせと叫ぶオバマはムソリーニに通じると筆者は云う。
保護主義は滔々たる流れになりつつある。
グルジア紛争に見られるようにロシアは武力による帝国利益の確保=新帝国主義の旗を掲げた。
麻生が掲げた「自由と繁栄の弧」なる価値観外交は最早通用しない。
各国が自国のエゴを最大限にぶつけ合う新帝国主義の世界にあって日本は国論を統一して能動的な外交を展開しなければならないと筆者は云う。
そして田母神論文事件を捉えて、自衛隊のクーデターというシナリオについて、思考実験をきちんと行なっておく必要があると言う。
むしろ自民党より民主党の中にタモガミが多く(ウン、あいつかァ)自衛隊員の能力と士気は外交官を凌ぐものがあるとも云うのだ。
だからタモガミをタブーにせず自衛隊員に大川周明や北一輝などの思想を教えその限界と危険性を認識させておくべきだと。
元厚生事務次官が襲撃されると、すぐに「テロだ!」という反応がある。
それは国民の間に、無意識のうちにテロによる社会の変化への期待があるからだという指摘は怖い。
「こんな世界に誰がした、それはお前も責任があるよ」と言われても自民党に投票したこともないし真面目に仕事をして社内の不正を内部告発したら飛ばされた・飛ばされる人間に出来ることはなんなのか?
デモに参加したって何にも変わらない、公務執行妨害で逮捕されるのがセイゼイ。
ファシズムは自らをファシズムとは云わない。
国家(日本では民族と同一視される)の救済、格差の是正が叫ばれて、なんらかの”宗教=理念”が打ちたてられ、敵が設定される。
それは差別でもある。
肌の色による差別がなくなって(ほんとに?)も新たな差別が創られる。
新自由主義から転げ落ち・はみ出した人々・階層を糾合してエネルギーに変えるのがファシズムの得意技だ。
筆者がいうもうひとつの、残された道筋。
日本で生活する人々が、国家の干渉を極力廃止、相互扶助、贈与を行なうことで社会を強化していく。その結果として、日本国家が強化されると言うシナリオ社会の強化が目的で国家の強化は結果だというのがミソか。
このシナリオに向かわない限り日本の未来はないと筆者は言い切る。
雨宮処凛のように”右”でも”左”でもなく悲惨な貧困層の事実を訴えその救済に動くあり方、富裕層を批判するのではなく只管絶対的貧困を問題視する行き方、それを筆者は評価する。
そうして
米国、ロシア、そして日本における国家機能の強化がファシズムと結びつかないようにするための思想的作業が2009年の最重要課題になる。が本書の結語だ。
俺は憂鬱、ブルーを越してブラックな気分になった。
どうも三つ目のシナリオって現実性が乏しいのじゃないか。
中沢新一が「対称性のある世界の復活」みたいなことを説いている講義録をかなり夢中になって読んだことがある。
佐藤の云うことと中沢の云うことは重なるのだろうか。
話としては魅力的だが、実際には、、?
ってことは、、救いがないってことなのかネ。
現代国家論についてのユルゲン・ハーバーマスの引用は興味深かったが、「人間の不安」についての経済哲学者・滝沢克己のそれは難解で降参しました。
先日紹介した「左巻」とお対。
Tracked
from 好都合な虚構
at 2009-02-28 08:24
タイトル : 後悔先に立たず
2002年1~3月期から、2006年4~6月期までの期間に名目GDP(年率換算)は21兆円増えたそうです。史上最長の好況です。企業の配当、役員賞与、内部留保は当然上昇しましたがサラリーマンの所得は4兆円も減っているそうです。 こんなような現象です。 その上、配偶者特別控除の廃止、老年者控除の廃止、定率減税の半減と3.9兆円の大増税が実施されました。定率減税という変なものも全面的に廃止されましたが、所得税が掛かるだけの所得のある人は激減しているので残っていても機能しません。そもそも、...... more
2002年1~3月期から、2006年4~6月期までの期間に名目GDP(年率換算)は21兆円増えたそうです。史上最長の好況です。企業の配当、役員賞与、内部留保は当然上昇しましたがサラリーマンの所得は4兆円も減っているそうです。 こんなような現象です。 その上、配偶者特別控除の廃止、老年者控除の廃止、定率減税の半減と3.9兆円の大増税が実施されました。定率減税という変なものも全面的に廃止されましたが、所得税が掛かるだけの所得のある人は激減しているので残っていても機能しません。そもそも、...... more
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ginsuisen
at 2009-02-28 00:47
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探しましたー。4月に横浜のジャック&べティでやるらしいですー。似合いますねー、この映画と横浜黄金町。
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saheizi-inokori at 2009-02-28 08:05
ginsuisen さん、又行くのですか。最後の岸壁を走るところとかもう一度みたい?
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convenientF at 2009-02-28 09:40
>こんな簡単なことを弁えない経営者・政治家・官僚がいることが不思議だ。
昨晩、大学時代の同級生5人と盛大に飲みましたが、この「不思議」が話題の中心でした。中には世界的大企業のトップだったヤツもいましたし、私以外は60代半ばぐらいまで大企業の役員だった面々ですが、3代後ぐらいから「不思議な連中」が主流になってきたそうです。
「どうでもいいってばどうでもいい」んだけど、時々悪夢をみるそうです。
>転げ落ち・はみ出した人々・階層を糾合してエネルギーに変えるのがファシズム
共産主義やナチズムの台頭の歴史そのものですよね。
>国民の間に、無意識のうちにテロによる社会の変化への期待がある
それをひしひしと感じるようになっています。アブナイ、アブナイ。
昨晩、大学時代の同級生5人と盛大に飲みましたが、この「不思議」が話題の中心でした。中には世界的大企業のトップだったヤツもいましたし、私以外は60代半ばぐらいまで大企業の役員だった面々ですが、3代後ぐらいから「不思議な連中」が主流になってきたそうです。
「どうでもいいってばどうでもいい」んだけど、時々悪夢をみるそうです。
>転げ落ち・はみ出した人々・階層を糾合してエネルギーに変えるのがファシズム
共産主義やナチズムの台頭の歴史そのものですよね。
>国民の間に、無意識のうちにテロによる社会の変化への期待がある
それをひしひしと感じるようになっています。アブナイ、アブナイ。
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旭のキューです。
at 2009-02-28 10:27
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年収200万円以下が1000万人とは、治安の悪くなるやばい数字ですね。先日、泥棒に入られ10万やられました。怖い世の中になりつつあります。
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orangepeko
at 2009-02-28 11:17
x
こんにちは。
「チェ」を観た時…沸々と湧き上がるものがありました…
私の中にも「ファシズム」は台頭しているのでしょうか(・・?)
言葉も行為も嫌いなのですけどね…(^^;
今の日本では…クーデターは起き得ないですね(^O^)まだ平和(・・?)
「チェ」を観た時…沸々と湧き上がるものがありました…
私の中にも「ファシズム」は台頭しているのでしょうか(・・?)
言葉も行為も嫌いなのですけどね…(^^;
今の日本では…クーデターは起き得ないですね(^O^)まだ平和(・・?)
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saheizi-inokori at 2009-02-28 11:20
convenientFさん、近経しか勉強しなくなったこともこういう大枠の議論が捨象される原因かも知れません。
佐藤はマル経を使って絵解きをしようとしているのですね。
ホントに危ない瀬戸際、乗ってる船が瀧が近づいているのに移りゆく岸辺の景色に見とれているのかもしれません。
佐藤はマル経を使って絵解きをしようとしているのですね。
ホントに危ない瀬戸際、乗ってる船が瀧が近づいているのに移りゆく岸辺の景色に見とれているのかもしれません。
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saheizi-inokori at 2009-02-28 11:21
旭のキューです。さん、災難でしたね。
でも10万円で済んでよかったかも知れない、命あってのものだね。
でも10万円で済んでよかったかも知れない、命あってのものだね。
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saheizi-inokori at 2009-02-28 11:27
orangepekoさん、アジアのあちこちで起きていて日本だけが安全だという保証はないと佐藤はいうのでしょうね。
感覚的にはピンとこないけれど、2・26もそう大昔のことではないのですね。
先代の小さんはあのとき反乱軍に入っていたそうです。
警視庁を占拠して上官の命令で「子ほめ」をやったそうですがクスリともしなかったと云ってました。
感覚的にはピンとこないけれど、2・26もそう大昔のことではないのですね。
先代の小さんはあのとき反乱軍に入っていたそうです。
警視庁を占拠して上官の命令で「子ほめ」をやったそうですがクスリともしなかったと云ってました。
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convenientF at 2009-02-28 16:11
>近経しか勉強しなくなったこともこういう大枠の議論が捨象される原因かも知れません。
仰る通りだと思います。
私たちのように、アダム・スミスからゲーム理論までを自発的に勉強してくれば視角が違ったはずですよ。
社会人になったらそんな書生っぽいことに時間を使わず株主にゴマを擂れ!なんでしょうね。
仰る通りだと思います。
私たちのように、アダム・スミスからゲーム理論までを自発的に勉強してくれば視角が違ったはずですよ。
社会人になったらそんな書生っぽいことに時間を使わず株主にゴマを擂れ!なんでしょうね。
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hisako-baaba at 2009-02-28 16:35
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saheizi-inokori at 2009-02-28 17:43
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saheizi-inokori at 2009-02-28 17:44
hisako-baabaさん、明治と云わずに、つい最近まではもう少しましな連中がいたはずですよ。政治家も。
急に劇的に悪くなって、昔アホだと思った政治家がいまでは懐かしいほどですよ。
急に劇的に悪くなって、昔アホだと思った政治家がいまでは懐かしいほどですよ。
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convenientF at 2009-03-01 09:00
>今トヨタ礼賛に終始している。
エーッ、それは異界魔界奇々怪々ですねぇ。
長年「ジャストインタイム」「かんばんシステム」などで搾取されてきた部品メーカーや作業員が今は路頭に迷っています。
それを礼賛しているのですか?
吸血鬼、悪魔を褒め称える教授!
竹中みたいに外国に住民登録しているのでしょうか。
エーッ、それは異界魔界奇々怪々ですねぇ。
長年「ジャストインタイム」「かんばんシステム」などで搾取されてきた部品メーカーや作業員が今は路頭に迷っています。
それを礼賛しているのですか?
吸血鬼、悪魔を褒め称える教授!
竹中みたいに外国に住民登録しているのでしょうか。
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saheizi-inokori at 2009-03-01 09:12
convenientFさん、さて何処に住まいいたすやら、異界の人ゆえ定かではありません。
しかし、彼女を迎えるゾンビも近辺にうろうろしているのが気味が悪いですね。
むしろゾンビたちからみたら私の方が亡霊みたいなものなのかもしれない。
しかし、彼女を迎えるゾンビも近辺にうろうろしているのが気味が悪いですね。
むしろゾンビたちからみたら私の方が亡霊みたいなものなのかもしれない。
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convenientF at 2009-03-01 14:32
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saheizi-inokori at 2009-03-01 18:53
convenientFさん、結構手ごわそうですよ^^。怖がる、畏怖するという神経が摩耗しているかも知れない。いや最初から無い?
by saheizi-inokori
| 2009-02-27 23:40
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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