貧しきことは幸いなるかな 土屋賢二「ツチヤの貧格」(文藝春秋)

本に意味を求めるのは、底のないバケツをさがすようなものだ
本書に数多記されているツチヤ師の含蓄に富んだ奥深いお言葉のひとつである。
挫折するためにも目標は立てなければならない
深遠だノウ。

師の畏るべき妻の現在一番の望み(五百万個ある望みの内の一番という意味だ)とは
「苦しまないで年をとらないまま生きていること。永遠に」
であった。
意外だった。てっきり妻は「自分には老化も苦痛も死もやってこない」と考えているものと思っていたのだ。まさか、これを望みにするほど謙虚だとは思いもよらなかった。
まあ、一番目の望みなんて時々刻々に変化するのだが。
目にゴミが入ればゴミが取れることが一番の望みだ、と、これも師の至言ではないか。
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週刊文春に延々500回以上、今もなお好評(かどうかは知らない)連載中のコラムの単行本化、第何弾だろう。

ちなみに最近出た1月22日号には「夢の変遷」と題して、5.6歳の女の子が「逆上がりすることが一番の夢」とテレビで云っていたことについて
・・気立てのいいお嫁さんがほしいなどという強欲な夢を抱く人でも、この女の子のような夢
を抱く時期があったのに、
実際、大人になって成熟すると、子どもの頃には想像もしなかったほど人生は複雑になる。まさか机の上を片づけるのが夢になる日が来るとは、夢にも思わないはずだ。
と述懐される。
なんともいぶし銀製の珠玉のようなご感想であることか。
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(南大塚あたり)
師の師たるゆえんは、こういう箴言について、俺如き愚なる弟子の理解を助けるために誠に懇切きわまりない解説を付け加えられる点にある。
惜しむらくはその解説を読むことで理解が進んだということは一度たりともないのだが。
それは、俺と師のレベルが違い過ぎるのか、師の言葉に含まれる真実があまりにもあまりにもで如何に自由乱暴・前後裏腹・言語不明・抱腹傾倒・前人未食・後人空腹・天地有用な解説によっても凡人の理解を絶するからか、または(文字にするのも憚られるのだが)師が耄碌していて本人も理解できない言葉を吐き散らし書き散らししているからか。

俺の鋭い直感は最後が正解であると告げているのだ。
俺の直感が鋭い?「謙虚教」の教祖補佐心得を自自共に認められる俺にして何故そのように自信満々に言いきれるのか?
それは池袋・旭屋書店の書棚に数多ある書物の中で本書に目を留め、カード払いとはいえ(現金がないから)購入した一事をもって明らかである。
実はconvenientFさんのコメントにかなり影響されたのだが、財布は俺の財布だ。

師は時に正気を取り戻すことがあるらしい。
解説を一切しないで至言をただ放り出すときがその時と拝察する。
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(大塚・物納の宅地を公園にしたのだろう。住んでいた人が使った井戸がそのままオブジエに。塀の上にこいつがいるなんて気がつかなかった)

かかる意味のない、どこが面白いのか皆目見当もつかない文章が何年も連載されるだけでなく、単行本化され、文庫本化されるのはエコ対策上も由々しき問題ではあるが、そういうことを言えば凡そ週刊誌はまだましとはいえ、毎日何百冊と出版される単行本のほとんどが無意味というより人畜有害な内容ばかりであることは師が夙に“底のないバケツ”の比喩に喝破された通りであろう。
むしろかかる能天気な・人畜無害な(なんたって意味不明なんだから)文章にたとえひと時とはいえウツシ世の悩み、特に世の愚か者どもを救うために我が双肩に担わされている重荷のことを忘れることが出来れば功徳とも云うべきか。

乗った新幹線と持っている指定席券の列車が違う場合、
切符と電車が一致しないのだ。切符が間違っているか、電車が間違っているか二つに一つだろう。どちらにせよ私に罪はない。
嗚呼、なんという潔さ、すべてを自らの責任に引き寄せて(まとめて蹴っ飛ばす)泰然とするお姿!
見習いたい、せめて切符を間違うところぐらいは(しょっちゅうじゃないか)。
心洗われる、ともいえまいか。
Commented by gakis-room at 2009-01-17 22:02
週刊文春は2,3度買ったことがあります。「ツチヤの口車」でしたっけ。
明日,買いに行きます。
Commented by saheizi-inokori at 2009-01-17 22:09
gakis-roomさん、週刊誌の方ですね?安いからその方がいいかも^^。
Commented by hisako-baaba at 2009-01-17 22:14
面白そう・・・図書館に注文してみたいです。

廃屋も古井戸も風情がありますね。神保町裏の廃屋(店)はとうとう無くなりましたっけ。
Commented by saheizi-inokori at 2009-01-17 22:26
hisako-baabaさん、この人の同じシリーズがすでに文庫になっているのもありますよ。「ツチヤの口車」「簡単に断れない」「紅茶を注文する方法」「ソクラテスの口説き方」、これらは私もひとつも読んでないのですが。
Commented by antsuan at 2009-01-17 23:45
週刊誌も冬の時代だとか、人気コラムが単行本になるからじゃないでしょうか。
Commented by kaorise at 2009-01-18 01:05
私こういう英国人みたいな「おしゃまさん」大好き。
、、切符も電車も間違っていなのだよ、君が間違った、それが事実だ、
だがもちろん、君に罪はないから安心したまえ、、、
老化した人類にはよくある話さ!誰も君を責める権利はないよ。
とシャーロックホームズ風に言いたいわ。
Commented by 高麗山 at 2009-01-18 01:17
(南大塚あたり)という、スナップ自然で良い映ですね。。。
「ツチヤの貧格」サラット流して読み、もう一度と思えども、現在奥方の自室にあり、侵入不可!
機会があれば、又後日。
Commented by saheizi-inokori at 2009-01-18 07:06
antsuan、紙のメデイアはほとんどみな厳しいですね。新聞、雑誌、特に「現代」の廃刊はさびしかったです。
人気コラムがあるということはまだましなんでしょう。
Commented by saheizi-inokori at 2009-01-18 07:11
kaoriseさん、「先生が電車を乗り間違えただけです」、ツチヤ師の女弟子はにべもなくそう答えました。「ひとつ失敗がみつかったら30は失敗が隠れているはずです。ゴキブリと同じです」と続けるのでした。ああ、ゴキブリ!
Commented by saheizi-inokori at 2009-01-18 07:14
高麗山さん、傾いた家などになんとなく同情するのです。わが姿をみるようで。
土屋先生はどこか女性蔑視じゃないだろうか、少なくとも女性コンプレックス?
Commented by convenientF at 2009-01-18 08:36
>実はconvenientFさんのコメントにかなり影響されたのだが、

saheizi-inokoriさんに影響を与えるような恐ろしいコメントは書いていません!

多分、「妻」か「助手」か「学長」か「H教授」の仕業でしょう(^^;)。

>財布は俺の財布だ。

そうですとも。ツチヤ教授の財布は奥方がお持ちのようですが...

>土屋先生はどこか女性蔑視じゃないだろうか、少なくとも女性コンプレックス?

私は、「妻」「学長」「教授たち」「助手」「学生たち」など女性登場者の言動は、おそらく彼女たち本人との合作と見ています。

とにかく、ほとんどは500円前後の文庫であり、著者ご自身が自慢していらっしゃるように在庫豊富です。
Commented by HOOP at 2009-01-18 11:36
たまに出張すると、電車に乗ることもあるのですが、
そんなときに買うのは週刊文春で、週刊新潮ではないのですが、
この選択に影響しているもののひとつがツチヤ氏のコラムですね。
Commented by saheizi-inokori at 2009-01-18 21:19
convenientFさん、影響は甚大ですよ。
そうか、女性たちの合作か、それもややコンプレックスの発言?
Commented by saheizi-inokori at 2009-01-18 21:20
HOOPさん、土屋先生が読んだら随喜の涙をこぼすかも。
Commented by rinrin at 2009-01-18 21:49
短い文章は、私には寝る前に1つとてもありがたいものです。
それが難しいと困りますが^^;)
Commented by saheizi-inokori at 2009-01-18 22:06
rinrin さん、ほんとは聖書が一番なんでしょうが、ツチヤ師の話でかんべんしてもらいましょう^^。
Commented by m_poppy at 2009-01-19 01:06
ツチヤ氏は素敵ですね!ファンになってしまいそうです。(文庫本探してこようかな。)
でも奥方様や女弟子さんの前ではかすみますね~。見習わなくては。
今の私の望みは、虫歯がこのまま何もしなくて治りますように!!です。謙虚教の教祖さまになれそうです・・・。
Commented by saheizi-inokori at 2009-01-19 06:22
m_poppyさん、何をおっしゃる!教祖などまだまだですぞ。この私が教祖補佐心得なのです。
道は遠い、もっと謙虚に修行なされませ^^。
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by saheizi-inokori | 2009-01-17 21:55 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback(3) | Comments(18)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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