三流の笛方は超一流だった あぜくらの集い・「新春『笛』の音楽会」(国立能楽堂)
2009年 01月 09日
国立劇場・「あぜくら会」が会員を対象に公募した、新春「笛」の音楽会。
無料だぜい!
まず素囃子「神舞(かみまい)」。
笛・栗林祐輔 小鼓・森貴史 大鼓・大倉慶乃助 太鼓・大川典良
正月にふさわしい気品のある、しかも元気なお囃子。
藤田六郎兵衛の登場。
堂々たる押し出し、朗々と快い声で能の笛について話してくれる。
「笛方は吹くのみ、かけ声すらないから舞台では一生喋らないから」と次から次へ話すのがとても面白い。
持参した笛は藤田流・初代家元の使ったもので、それから430年、代々使い続けてきたそうだ。
笛にするまでに、生長して家の中で煤にあぶられ100年近くかかっているから都合500年も前の竹が今に続いている(ストラデヴァリなんてせいぜい300年)。
8枚の部品を裏を表に表を裏にしてつなぎ合わせて中に一本、管を通して作り上げる。
宝物として大事にしまっておくのではなくこの一本をいつも使い続けなくてはうまく吹けないのだって。
雅楽の龍笛やシチリキ、西洋の笛と違い一本ごとに音程はバラバラ、それは能の音楽の「ハーモニーはない」という特徴と裏腹だとか、能管入門、勉強になったなあ。
森田流、松田弘之、一噌流、一噌幸弘を舞台に呼んで三流それぞれの「御調べ」を同時に吹かせる。
次いで「中之舞」と「獅子」の同じ所をまず歌ってみせる。
(一噌)ヒャアヒュイタルラ ヒュイタルライトこんな塩梅、親切に「複製不許」の二枚の資料(唱歌・楽譜)を入り口で貰ってる。
(森田)ル ライタルラ ルイタルラ ト
(藤田)ヒャ ヒュイタルラ ヒュイタルラ ト
三人とも歌手になれる(クラシックの)かと思うくらいいい声で驚いた。
その後、今度は「中之舞」の一部を笛で別々にやってみせる。
しかも初心者がやる基本通り、味もそっけもない演じ方とテダレがやる“あや”をつけたやり方で。
演者の違いもあるけれど流派の違いがこんなに大きいなんて!
圧巻は小鼓・大倉源次郎、大鼓・大倉慶乃助、太鼓・大川典良を呼んで「獅子」の一部を三人が合奏するのだ。
普段はほとんどお互いに交流もあまりない他流の代表選手が思い切ったことをやればやったもんだ。
しゃれっ気があるなあ。
幸弘なんて真っ赤な顔して頑張って、終わると六郎兵衛が「仕掛け花火の最後みたいですね。必死でした」、半分本音だろう。
三人の格闘技みたいだった。
笛と鼓と謡いとシテと、それぞれが大まかな流れはあるものの流派の違い、その時の気持ち、もっといえば天候の変化などに応じて臨機に演奏の仕方を変えたりする。
それに感応しあってお互いに変化していくのだという。
藤田六郎兵衛の思いが伝わってきた。
そうしたきっかけなどの細かい約束事を知らなくてもいいから違いを比べてみて欲しい。
能ばかりではなく西洋音楽との違いも比べて味わって欲しい。
休憩後。
一噌幸弘 「盤渉之音取(ばんしきのねとり)」
能では演奏されず笛の独奏のための曲。
(一噌幸弘・能管の響き)
本来ドレミファの音階は吹けない筈の能管を自在に操る幸弘マジック、途中で笛を取り換えて、蝶が舞い、蜂が襲い、雲雀が揚がり、、超絶技巧を披露してくれた。
現代音楽?フアリャ?それともモダンジャズ?
(ファリャ : 「三角帽子」第2幕 粉屋の踊り~終幕の踊り。ウイーンフイル)
アドリブもやりたい放題?
10分だけじゃ本人がもっとやりたかっただろう。
松田弘之 「乱(みだれ)」
「猩々」が酔って波の上を舞飛ぶ特殊演出の囃子。
幸弘の鋭く切り裂くような笛と違って豊かな抒情が特徴と観じていた人がその朗々たる音に随分と力が入って聴きごたえがあった。
藤田六郎兵衛に大倉源次郎の小鼓が加わり「瀧流延年之舞(たきながしえんねんのまい)」
通常、一調一管は「序之舞」、静かな曲をやる。
若い演者のために六郎兵衛と源次郎が13年前に作曲したという。
気合のこもった演奏、切れ味も素晴らしい。
源次郎がやや風邪気味(かな?)
「三流の会」というとなんか三流演奏家の集まりみたいに思われるから、「笛の音楽会」としたと六郎兵衛。
千載一遇ともいえる楽しい催しに当ててくれた「あぜくら会」さん、ありがとう!
ふろく。
gakisさんが教えてくれた韓国の笛。
(大崟試吹)
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四條黄門命ぜられて云はく、 「龍秋は、道にとりてはやん事なき者なり。 先日來りて云はく、 『短慮の至り、極めて荒涼の事なれども、横笛の五の穴は、 聊かいぶかしき所の侍るかと、ひそかに是を存ず。 其の故は、干の穴は平調、五の穴は下無調なり。 其の間に、勝絶調を隔てたり。 上の穴雙調、次に鳧鐘調をおきて、夕の穴黄鐘調なり。 其の次に鸞鏡調を置きて、中の穴盤渉調。中と六とのあはひに神仙調あり。 かやうに間間に皆一律を盗めるに、五の穴のみ、上の間に調子をもたずして、 しかも間をくばる事等し...... more
うらやましい!
笛の音は遠くまで聴こえるんですよね。
こちらまできこえてきそう!
記事にあげさせていただきました。ありがとう。
あと腹鼓を打てるかな。琴線は自分で鳴らさないし。
いくらでも分けてあげますよ。はい、どうぞ!
調和ということだともちろん調和しています。
500年前にタケノコから育った竹が今美しい音を奏でていると思うとホントに玄妙な感覚になりました。
一本だけ唄ものの笛もってて、たま〜にひとりでやってます。
はなから難しい音だせたのでカルチャー教室の先生は初心者だって思ってくれず厳しくて、やになっちゃってすぐやめちゃった〜
音階が形になって頭にうかんで、私にとってはフシギな楽器でした。
若い時からやれば上手になったと思うんだけど今は情熱がないです。
そういえば笛の一噌さんって、同期のガサツなカメラマンと飲み友達だったと思います。今はどうだか知らないけど、、
なんか爬虫類好きな人なんでしょう?
私が亀飼ってるから同期がお前へんな奴だけど、飲み仲間で爬虫類飼ってて笛吹いてる変わったやつがいるべ。って話してました。
あらまあ。。実は偉大な人だったのね、、
知人が数年前から竜笛を習っていて誘われるのですが、私にとっては聴く側に徹したい領域です・・・。
徒然草で笙(チューニングが命の楽器)の名人が
披露した音楽理論に笛の名人が苦言を呈するという
段について書いたものをトラックバックさせて
いただきました。
BYマーヒー
六郎兵衛がいうには能管は音程が問題ではなくてどれだけ気合いが入って力つよくふけるかが問題なのだそうです。
人と合わなくても叱られなくて合わせようとして気が緩むのを叱られるのだそうです。
兼好が書いているのはそのことかもしれませんね。
ありがとうございました。
志ん生が通った世界湯も近いし、初音湯もいいです。
そういえば志ん朝が若い頃通ったモダンジャズ喫茶「しゃるまん」が夕焼けだんだんを降りてすぐのところにありあますね。