睨んで返せればいいのだがこの不況 喜多八「にらみ返し」落語教育委員会(博品館劇場)
2008年 12月 11日
一文無しになって頼みの綱のマイホームの値段が下がっちゃったから売ることも出来ない。
泣く泣くこの寒空に一家で彷徨い歩いている。
その点、落語に出てくる長屋の衆は気楽だ。
年に一度、大晦日の掛取りさえなんとか凌げば、又一年暢気に暮らしていける。
もっとも
元旦や今年も来るぞ大晦日なんて、晴れた美空が一点の曇りもなかったかってぇとそうは問屋が卸さなかったのではありますが。
薪やってのが掛取りにくる。
下手に出て、借金の催促をするけれど一向にラチがあかない。
あかないのには男と女の間ならざる薪やと男の間には深くて暗い河があって、それをつづめて云えばからっけつ!一文無し、払えるわけがない。
業を煮やした薪や、
こうなったら、俺も江戸っ子だ。と、座り込んでしまう。
そういう魂胆ならこっちも腹ァすえて勘定貰うまでは五分と動くもんじゃねえ。覚悟しやがれ。
そのとき義経ならぬ文無し男は少しも騒がず
おもしれ~じゃねえか。俺も江戸っ子だ。おめえが金を受け取るまでは五分といわず一分たりともここを動かさねえからそのつもりでいろ!女房に薪ザッポウを持ってこさせる。
おいおい、なにしょうってんだい、俺は薪やだ、そんなもんが怖くてやってられるかってんだ強く出てみたものの、いつ金を返すと訊けば
さあ、来年かなあ、もっと先かも知れねえなあその間、飯も食わさないからじっと座ってろって、凄みも利かせていわれると
分かったよ、もういいよ、今日ンところはもう良いからけえるよ立とうとすると
待ちやがれ!どういいってんだよ?半べそをかきながらいうと
金を払わないうちは一分だって動いちゃならねえ!だから、、、分かったよ!貰ったってことで!
ええ?貰ったあ?誰から?
親方から!
俺ぇ?最近物忘れがひどくてなあ、さて、俺払ったっけ?・・・・
そうだっ!払ったんだっ!そうだそうだ払ったよな?
ええ、ええ、いただきましたとも!ジャ、よろしゅうございますね立とうとすると
おいおい!待てよ、商人だろ、領収書を置いてけ!泣きながら領収書を出すと、今度はハンコが押してないと言われ、グヤジイからベタベタ、真っ赤になるほど愚痴を言いながら押してやると
俺が払ったのは10円札だ。釣りがねえ「にらみ返し」。先代小さんの十八番。
喜多八のやるのは初めて観た。
哀れな薪やがべそをかいたり愚痴を言うのが可笑しくて、からかう男に対してもちっとも嫌な感情が残らない。
薪やがいい男なんだね、優しいんだよ、根っこのところが。
きっと明日正月の町で出会えばニコニコ笑って「今年もよろしく」なんて挨拶するんだろう。
奥(たって一部屋しかないけど)でカミサンが一部始終見ているけれど
なんですよ~、お前さん、気の毒に薪やサンでオシマイだもんな。
キャノンやトヨタの社長たちには逆立ちしても分からない世界だ。
権太楼のこれも抱腹絶倒だった。
この噺に関する限りでは①小さん②権太楼、そして鼻の差で喜多八兄いかな。
この噺はこの後「掛取りを睨んで追い返す」ことを商売にしている男が登場していろんな掛取りを「にらみ返し」ていくのが”観る落語”としてなんともいえない味がある。
喜多八の「睨み」は実際の睨みよりも、「きっとこの睨みの延長というか深みとでもいうべきところになんともいえない薄気味の悪い怖さを持った睨みがあるんだろう」という想像を掻き立てるような睨みだった。
歌太郎、最近二つ目になったばかり。
大きな声で明るくやってたが眠くて眠くて「ろくろっ首」の噺かなあ、程度で中身は聴いていなかった(メンゴ!)
喬太郎「彫マリリン」
彫り物師とキャバクラ出身の弟子の噺。
「デシって小さいってことでしょ?リットルの小さいのがデシリットル」若者言葉とかしゃべり方とかデフォルメしてヤクザの背中にピカチュウの刺青を彫ってしまう女弟子を演じる。
喬太郎追っかけ連中には受けていたが、、。
歌武蔵「河豚鍋」
「河豚は食いたし命は惜しし」、旦那は河豚を食ったことがないのでタイコ持ちの一八に毒見させようとする。
そうは問屋の二人のやりとり、一八が塩辛なんかを上手そうに食うところなどが見どころ。
どこと言ってまずいところもない高座だけど、、。
俺はフグ食ってる方がいいかな。
毒見でもなんでもやらせていただきますよ。
きれいですね。
寄席はのんびり居眠りもよし大声で笑うもよし、命の洗濯ができますよ。
楽しいですね。江戸はエコだったし、世の中結構上手く回っていたようで、小僧さんも字が覚えられたし・・・
今の経済はどう回るのでしょうか?さっぱり解りません。
こちらでは日によって、空気が汚れているので暖炉に薪を燃やすのを禁じられています。夜そのためのパトロールがあり、煙突から煙が出ていると罰金なのですって。木を燃やせない日はTVニュースで知らせがあります。
人情が人の中を和を温かくする。
長屋の連中は「ローン」抱えてまで家を買わないから気楽なのね。
これからの若い子は「ローン」抱えないで気楽に生きる子も増えそうですね。
日本にもサププライムローンがあるんですよね。
ローンの手管に騙されて、無理して家を買っている若い人も多いから。
来年はどんな時代になるんでしょう?
この噺、池袋演芸場11月下席で金八さんがやっていました。
にらみの仕事はへとへとに疲れるとにらみ屋さんが言っていまし
た。なんかわかりますね。
こうしてみるとこの噺はふたつ山があるんだ。
しょっちゅう山火事の方が問題でしょうに。
顔だけで帰るってのが今の連中には分からないでしょうね。
温かな家が待っている!