好きだなあ、こういうオッサン R・D・ウィングフィールド「フロスト気質」(創元推理文庫)
2008年 12月 08日
「クリスマスのフロスト」「フロスト日和」と読んで好きになったジャック・フロスト警部。
着たきり雀のコートにジャケット、イギリスの片田舎って寒いんだろうな、小汚いエビ茶色のマフラーもトレードマーク。
惚れて一緒になった女房にも直ぐにアイソをつかされ、その妻も死んでしまった。
不眠不休、泥沼の捜査活動の合間にもふと結婚前に二人が交わした愛の場面を思い出す。
「出るところは出ていて引っ込むところはしっかりひっこんでいた」、要するにスケベな警部なんだ。
いたいけな子どもが残酷に殺された事件などシリアスな場面でもシモネタギャグは止まらない。
悲嘆にくれる関係者の気持ちを逆撫でするような悪態・発言を連発する。
このあたりはクセというより確信犯、故意だな。
美人の張り切りお姉ちゃん・部長刑事はカッコウのセクハラ対象、署長秘書は必ず”指浣腸”の餌食に。
(小閣楼・「トリそば」。フロストはサンドウィッチを齧りながら署員に状況説明をする。溶けたバターがスーツに垂れる)
書類をまとめることは不能に近い。書いた数字(犯罪統計)は殆どデタラメ。
署長室のタバコをちょいちょい失敬する。
日本の官僚を知って書いたのかと思うような、保身でガチガチ、手柄は俺、責任はフロスト、超勤は認めない、判断はしない、絵に描いたような馬鹿署長。
ナントカしてフロストを追い出したいけれど、そして失敗続き、トラブルばっかり、身を守ることなんかこれっぽちも出来ないフロストなのに、追い出せないどころか最後はイヤイヤでも誉めざるを得なくなる。
シモネタギャグ(”ちんぽこ”の頻出!)とともに署長やその取りまきを冷やかすギャグが痛快、署長のお説教・嫌味に切り返す頓知(無視=聞いていない、という手も多用)が絶妙だ。
(東池袋)
フロストが切れ味抜群の名探偵かというと、、どうも違うんだね。
”直感の人”、しばしば狂って方針転換する直感、行き当たりバッタリな捜査。
でも、俺はその直感に魅せられる。スルドイよ。
しかも粘り強いんだな。
「え~お互い、夏の疲れが取れないのに師走になっちゃって」と登場する喜多八のごとく”やる気全然なし”で登場して、喜多八のごとく次第に夢中になって休むことも知らずに捜査に没入していく(喜多八は粋できれいだってのがまるで違うんだけど)。
ドタバタ・ナンセンス喜劇ではない。
本書で発生する事件は、「ゴミ袋から発見された全裸の指を切断された少年の死体」、「謎の腐乱死体」、「15歳の少女誘拐事件」、「少年誘拐事件」、、まだあったかな、同時並行的に発生し覚えきれないほどだ。
そのどれもが現代(といっても1995年発表)の病というべき特徴を備えている。
刑事たち、科学的捜査官、解剖医、、お馴染み捜査活動そのもの、その展開に伴って登場する様々な現代人の描写はリアルで臨場感を覚える。
手に汗握る展開もふんだんだ。
(そう睨むなって!写真撮るだけなんだから。大塚の路地で)
だらしないフロストの骨の髄にあると思われる(こっちの買い被りかもしれないが)ヒューマニズム・人情味・正義感・反骨・不精・男臭さ(鼻つまみたくなるかもしれない臭さ)、、こういったところが、読んでいて”たまんない”気分にさせるのだろう。
そうでなくては上下2巻を一気読みなんて出来るもんじゃない(もちろんスケベなフロストも大好きだけれど)。
作者はすでに亡くなっているそうで本書を含めて6作しかない。
未邦訳はあと2冊だという。
訳・芹澤恵
着たきり雀のコートにジャケット、イギリスの片田舎って寒いんだろうな、小汚いエビ茶色のマフラーもトレードマーク。
惚れて一緒になった女房にも直ぐにアイソをつかされ、その妻も死んでしまった。
不眠不休、泥沼の捜査活動の合間にもふと結婚前に二人が交わした愛の場面を思い出す。
「出るところは出ていて引っ込むところはしっかりひっこんでいた」、要するにスケベな警部なんだ。
いたいけな子どもが残酷に殺された事件などシリアスな場面でもシモネタギャグは止まらない。
悲嘆にくれる関係者の気持ちを逆撫でするような悪態・発言を連発する。
このあたりはクセというより確信犯、故意だな。
美人の張り切りお姉ちゃん・部長刑事はカッコウのセクハラ対象、署長秘書は必ず”指浣腸”の餌食に。
書類をまとめることは不能に近い。書いた数字(犯罪統計)は殆どデタラメ。
署長室のタバコをちょいちょい失敬する。
日本の官僚を知って書いたのかと思うような、保身でガチガチ、手柄は俺、責任はフロスト、超勤は認めない、判断はしない、絵に描いたような馬鹿署長。
ナントカしてフロストを追い出したいけれど、そして失敗続き、トラブルばっかり、身を守ることなんかこれっぽちも出来ないフロストなのに、追い出せないどころか最後はイヤイヤでも誉めざるを得なくなる。
シモネタギャグ(”ちんぽこ”の頻出!)とともに署長やその取りまきを冷やかすギャグが痛快、署長のお説教・嫌味に切り返す頓知(無視=聞いていない、という手も多用)が絶妙だ。
フロストが切れ味抜群の名探偵かというと、、どうも違うんだね。
”直感の人”、しばしば狂って方針転換する直感、行き当たりバッタリな捜査。
でも、俺はその直感に魅せられる。スルドイよ。
しかも粘り強いんだな。
「え~お互い、夏の疲れが取れないのに師走になっちゃって」と登場する喜多八のごとく”やる気全然なし”で登場して、喜多八のごとく次第に夢中になって休むことも知らずに捜査に没入していく(喜多八は粋できれいだってのがまるで違うんだけど)。
ドタバタ・ナンセンス喜劇ではない。
本書で発生する事件は、「ゴミ袋から発見された全裸の指を切断された少年の死体」、「謎の腐乱死体」、「15歳の少女誘拐事件」、「少年誘拐事件」、、まだあったかな、同時並行的に発生し覚えきれないほどだ。
そのどれもが現代(といっても1995年発表)の病というべき特徴を備えている。
刑事たち、科学的捜査官、解剖医、、お馴染み捜査活動そのもの、その展開に伴って登場する様々な現代人の描写はリアルで臨場感を覚える。
手に汗握る展開もふんだんだ。
だらしないフロストの骨の髄にあると思われる(こっちの買い被りかもしれないが)ヒューマニズム・人情味・正義感・反骨・不精・男臭さ(鼻つまみたくなるかもしれない臭さ)、、こういったところが、読んでいて”たまんない”気分にさせるのだろう。
そうでなくては上下2巻を一気読みなんて出来るもんじゃない(もちろんスケベなフロストも大好きだけれど)。
作者はすでに亡くなっているそうで本書を含めて6作しかない。
未邦訳はあと2冊だという。
訳・芹澤恵
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お茶好き
at 2008-12-08 23:44
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こんばんわ。お久しぶりです。やっとパソコンが直りsaheiziさんのブログを見ることが出来るようになりました。
今回ご紹介の本もハードカバーでしょうか?
今回ご紹介の本もハードカバーでしょうか?
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saheizi-inokori at 2008-12-09 06:36
お茶好き さん、文庫本ですよ。ただし二冊で900ページ。読み出があります。
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74mimi at 2008-12-09 06:46
ジャック・フロストはUKのテレビドラマ(刑事もの)で放映されたものがDVDになっています。借り出して観ますが面白いです。
フロストさん チョッとだらしがありませんがいやらしさはありません。気に入っています。調査に行った先の家で殆どといってよいくらい"a cup of tea"を所望して真実を聞き出すのですが、この一杯のお茶を"cuppa"(カパ)と発音するので、うちではお茶の時間になると「カパにしよう」と言います。
同じくUKのテレビドラマに"Foyle's War" (Michael Kitchen主演)がありますが、佐平次さんに気に入って頂けると思うのです。
DVDないでしょうか・・・
フロストさん チョッとだらしがありませんがいやらしさはありません。気に入っています。調査に行った先の家で殆どといってよいくらい"a cup of tea"を所望して真実を聞き出すのですが、この一杯のお茶を"cuppa"(カパ)と発音するので、うちではお茶の時間になると「カパにしよう」と言います。
同じくUKのテレビドラマに"Foyle's War" (Michael Kitchen主演)がありますが、佐平次さんに気に入って頂けると思うのです。
DVDないでしょうか・・・
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saheizi-inokori at 2008-12-09 07:06
74mimiさん、本書にそのテレビ番組の主役俳優の話題がちらっと出るのですよ。
お勧めの番組、私は英語じゃ、ちょっとなあ^^。
お勧めの番組、私は英語じゃ、ちょっとなあ^^。
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takoome at 2008-12-09 09:11
サワディ〜カ〜
おっさんとゆう言葉に反応し、その猫の目に刺された私はフロスト警部を知らなかった。^^
おっさんとゆう言葉に反応し、その猫の目に刺された私はフロスト警部を知らなかった。^^
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convenientF at 2008-12-09 09:18
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lotus
at 2008-12-09 09:46
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「クリスマスのフロスト」「フロスト日和」「夜のフロスト」と3冊読んで、次の作品は翻訳されないのかなあとずーっと思っていました。出てたんですね! 情報ありがとうございます。早速注文します。
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saheizi-inokori at 2008-12-09 11:21
takoomeさん、なかなか話せるおっさんですよ。
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saheizi-inokori at 2008-12-09 11:23
CFさん、こんなのがあるんですね。「孤独な復讐」が本書の中の一分のようですね。
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saheizi-inokori at 2008-12-09 11:27
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みい
at 2008-12-09 13:07
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saheizi-inokori at 2008-12-09 13:38
みい さん、セクハラにご注意^^。
内容と関係ないコメントでスミマセンが、東池袋のユリノキの写真、すてきですね!
小閣楼にもまだ行っていません…。
小閣楼にもまだ行っていません…。
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saheizi-inokori at 2008-12-12 10:06
髭彦さん、ありがとう。交差点でふと見上げて美しさに思わず携帯を取り出しました。
by saheizi-inokori
| 2008-12-08 22:03
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(14)