石寒太「心に遺したい季節の言葉 絶滅寸前『季語』事典」(ベスト新書)

ようやくオリンピックの興奮は冷めたかのようですね。
女子マラソン、ほんとに野口さん残念でした、って俺も執念深い。

マラソンで給水は大事なんですね。
子どもの頃は走る時に水を飲んではいけないなんて云われたけれど、あれは間違いだった。

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「振舞水(ふるまいみず)」
暑い夏の盛りに、通行人に水を振る舞うために、桶や樽を道端に出し、冷やした水をいっぱいに入れておいて、それに柄杓や茶椀を添えて、「どうぞご自由に、、」と、飲ませるように用意したものです。
振舞水の事始について、本書に『五月雨草紙』(1866年)の記事が引かれている。
それによると「三番町通市谷見附内」にある三方屋敷に大きなケヤキがあって、その枝が塀を越えて道に差し出ていたものだから、見附から来る人、九段坂を上がってくる人たちがみんなその枝の下で一息入れて涼んだ。
それで屋敷の人(『五月雨草紙』の筆者)が邸内の井戸水を汲んで桶の柄杓と茶碗を添えて出したところ、
往来大いに喜び、毎年車夫、輿丁の類、炎天に坂道を上り来る者は、之を楽しみに来ることとなれりといふ。
一茶の句が引かれている。
振舞水ただふるまふや江戸の町
今じゃ、自動販売機か。味気ないね。
絶滅寸前の「季語」を90近く取り上げて使われている句とともに著者のその言葉への思いなどを綴っている。

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(大塚「阿波踊り」前夜祭、どこもかしこも泡だらけ?)

たとえば以下のような言葉。
いくつ意味がわかりますか?
俺には分からなかった(読めなかった)言葉ばかりだ。

春 絵踏(えぶみ) 蛙の目借時 呼子鳥 魚島
夏 あいの風 虎が雨 霍乱 落し文
秋 生御霊(いきみたま) 花野 鵙の贄(もずのにえ) 毛見(けみ)
冬 虎落笛(もがりぶえ) 皸(あかぎれ) 衣配り 探梅
新年 御降(おさがり) 稲積む 嫁が君 人日(じんじつ)
あめつちの音のはじめの嫁が君
嫁が君って?
三ヶ日の鼠のことです。
お目出度い三ヶ日には嫌われる鼠と云う言葉(忌み言葉)は使わず、目出度い言葉に言い換えられた。
何故、ヨメか。
「夜群れる」がヨメになったと云う説に「夜目」説があるそうだ。
涙を連想させるからと「雨」を嫌い「あまさがる」から「おさがり」。
「寝る」は寝付くようでよくないから「稲積む」。
「寝る」の古語は「寝ぬ(いぬ)」、その未然形が「イネ」、「稲」と。
鬼の霍乱って知ってたけれど季語だとは知らなかった。
食中毒はやっぱり夏なんだ。
ひといきに日の沈みたる花野かな  鷲谷七菜子
秋の七草、いえますか?
春ではなくて秋の花が咲き乱れる野原を「花野」というのって幽玄じゃないですか!
鷲谷さんの句↑だって「秋野かな」じゃゼンゼン面白くない。

言葉が絶滅するということはその言葉にまつわる感情も絶滅しつつあるということかもしれない。
振舞水の心、言葉を慎む心、自然の神秘・微妙な変化に感動する心、、絶滅させたくないと思う。
Tracked from 好都合な虚構 at 2008-08-28 14:31
タイトル : やっぱりボク?     
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Tracked from 好都合な虚構 at 2008-09-01 05:12
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Commented by たま at 2008-08-27 23:57 x
ひょっとして「こそぶり」も、私にとっては今どきの季語かもしれません。
先般「百日紅」(サルスベリ)のことを「くすぐりの樹」と書き込みましたが、ホントは、田舎の言葉(方言)では、「こそぶりの樹」が正解です。
四国や九州の豊後水道沿岸(※ちょうど関サバ、関アジの産地)にては、「こそぶる」とは、標準語にて「くすぐる」とのことでして、派生して、「こそばゆい」(→くすぐったい)となります。
脇の下を「コチョ コチョ」と摩ると、(身をもだえるほどに)くすぐったいから、「コチョばゆい」→「こそばゆい」・・・とは私個人の見解。
しかるに、百日紅を摩ると「・・・枝が笑う」のではなく、身をもだえるほどに枝をクニャクニャと自在に曲げる樹形の様を「こそぶり」と言ったのかもしれません。
今夜も自宅の百日紅と、いずれも「一夜花」のムクゲ(槿)と隣家のフヨウ(芙蓉)の花がお出迎えでした。
Commented by saheizi-inokori at 2008-08-28 07:07
たまさん、子どもの頃「こそぼったい」と云ったような気がします。長野の言葉なのか、周りに引揚者が多かったのでどこかの方言が持ち込まれたのか?
なかなか豪華なお出迎えですね。私のマンションは目下はツタの葉だけです。
Commented by takoome at 2008-08-28 09:11
サワディ〜カ〜
ウチなどは今の言葉ですら絶えています。だって、子供達の生活は英語なのですから、
興奮せずとも出やすい言葉なのです。仕方がないです。
でも、次男が「五輪の書」をきっと斜め読みでしょうけど、読んでいるのを見て胸を撫で下ろしています。

Commented by henry66 at 2008-08-28 12:31
先日、観光客で賑わう界隈で、「振舞水」(現代風にペットボトルの水)の売り子が「氷のように冷たい水だよ!」と大声で叫んでいましたが、その日はまるで秋のように涼しい日、水の売れ行きは悪かったようでした。季節感て、大事ですね。水の売れそうな季語入りキャッチフレーズを教えてあげたかったけど、出しゃばりに思えたので慎みました。
Commented by saheizi-inokori at 2008-08-28 13:04
takoomeさん、なにそれ?オリンピックの本?なんちゃって^^。
でも凄いもの読みますね。
Commented by saheizi-inokori at 2008-08-28 13:08
henry66さん、甲子園では「カチ割り」です、「かっちゃりゃいかがすか~」って、金魚すくいの金魚を入れてくれるような小さなポリ袋にカチ割り氷がいっぱい。
頭に乗っけたり時どきストローでちゅうちゅう、ホテルのパック入りのお茶を入れておくと水出しのお茶が美味しかった。
夏の甲子園、あれもただじゃなかったけれど。
Commented by rinrin at 2008-08-28 14:58 x
季語と言うより、花の名前を漢字で見ると。ふ~んと思ったりエーーッ杜思ったりしますよね。そうそう、きつねのかみそり、flash and shadowさんが素敵な写真をupしています。南信州
にしか咲かないと書いてありましたよ。
Commented by saheizi-inokori at 2008-08-28 15:22
rinrinさん、キツネノカミソリ、みてきました。
蓮華ショウマもありましたね。プロみたいな写真です。ありがとう。
Commented by namiheiii at 2008-08-28 18:24
いい写真ですね!ぶれて躍動感が漲っている。如何にもsaheiziさんらしい。
Commented by sakura at 2008-08-28 21:40 x
namiheiさんが仰るように阿波踊りは躍動感ある写真ですね。
キツネノカミソリだと今まで思って写していた花が
どうも違うようですワ。
Commented by saheizi-inokori at 2008-08-28 23:44
namiheiiiさん、私の携帯はピントを合わせるのに時間がかかってぶれてしまうのですよ。
でもそれが面白いです。
Commented by saheizi-inokori at 2008-08-28 23:46
sakura さん、夏水仙ですか?その違いは難しそうです。
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by saheizi-inokori | 2008-08-27 22:46 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback(2) | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori