観るたびに楽しさが増す 能「邯鄲」(第六回能楽現在形②・宝生能楽堂)

邯鄲は観世清和友枝昭世と二度観た。
観世さんはわが能初体験、ただただ美しさに感じ入っていた。
友枝さんのときは狭い舞台、特に一畳台という作り物の上でよくもいろんな動きが出来るもんだと感心していた。

今回は今まで以上にスピーデイな場面転換と囃子、地謡の楽しさを感じた。
90分を越していたから実際にはそう早く終わったということではなくて、一畳台をめぐって大きく場面とシテの感情が変化していくのが分かって、それがスピーデイに感じられたということだ。

横になる。眠りに入る。夢をみる。
パンパンと扇子で枕もとを叩く音があたかも催眠術をかけるようだ(かかるのは観客であり、シテ)。
王位につく。一畳台は宮殿となる。なんと豪華な。
在位50年の祝宴。めぐる盃、曲水の宴。
月の世界の住人のような気持
四季折々は、目の前にて、春夏秋冬、万木千草も、一日に花咲けり、面白や、不思議やな。
「楽」と舞が恍惚状態に入ったか。
突然全てが消えて、横になっている。
パンパン、再び催眠術から目を覚まさせる扇の音。
50年の栄華も邯鄲の夢、一炊の夢にすぎないことを悟る。
人生の実相を観取する。

本舞台の動きに先行して橋掛に次の登場人物が現れたり、逆に先に切り戸口から消えて行ったり、いろんな工夫がこの曲を面白くしていることがわかった。
そのせいか三回の邯鄲で一番楽しかった。
もう一度友枝蘆生をみたらもっと面白いかもしれない。
(そんな贅沢はそれこそ夢の中だ)。

この記事も書き終わったところでミスをしてすべて消えてしまった。
まるで邯鄲の夢だ。
もう気力がないからメモだけで。



シテ・蘆生 狩野了一
子方・舞童 狩野裕一
ワキ・勅使 宝生欣哉
ワキツレ・廷臣 殿田謙吉 御厨誠吾 野口能夫
ワキツレ・輿舁 梅村昌功 則久英志
アイ・宿の女主 野村萬斎
笛・一噌幸弘 小鼓・吉阪一郎 大鼓・亀井広忠 太鼓・観世元伯
地謡・友枝昭世 粟谷能夫 出雲康雅 長島茂 友枝雄人 金子敬一郎  佐々木多門 大島輝久
Commented by convenientF at 2008-08-09 06:14
まるで関係ない報告事項です。

本日「幕末太陽伝」をTSUTAYAに返しに行きます。

そんなこと報告するな、なんて言わないで、イノサン....

どうせ、高齢者割引でまた借りてくるけどいいだろ、イノサン?
Commented by saheizi-inokori at 2008-08-09 07:05
CFさん、私はそいつは買ってあるんです。
でも買ってからは観てない。
いったいにDCDってのはみるのはおっくうです。まず機械がなかなかうまく動かせない。悔しくて新しいのを買ったけれど面倒ですね。
そしてどうしてもDVDってのはつまんない。
資料的にみるしかない。落語なんて録音テープが一番です。
映画はまだそのまんまだからいいけれど落語とか能とかはカメラが余計なアングルで撮るからつまんない。
それに能や落語ってライブの空気がなくては駄目な演芸だと思います。
こちらもカンケーネー返信でした。
Commented by lotus at 2008-08-09 09:00 x
すみません、私も関係ない報告事項にコメントを。「幕末太陽伝」はほんとうにうまくできた映画ですね。落語が3話ぐらいに幕末情勢をいれこんで、オールスターキャスト。フランキー堺の、凄みがあると言っても好い芝居のうまさを初めて知りました。左幸子や南田洋子が若くて、かわいくてうれしくなります。
そうそう、普通のお芝居もライブでないとだめです。声もききとりにくいし、カメラが映している場面しか見ることができないからでしょうか。
Commented by ginsuisen at 2008-08-09 15:30 x
一炊の夢・人生は本当にはかないのかも。今朝生まれた蝉がもうスズメに捕まっていました。なんだかせつなかったです。
私もTV映像の能・伝統芸能・全部ダメと思います。というか、NHKのカメラワークがひどすぎ。定点観測でいいと思うのです。定点観測にしておいて、将来はアップ、遠近をそれで見る側が選べるといいなー。ま、すでにおられない名人はDVDで見るしかないのでがまんしています。
Commented by MAKIAND at 2008-08-09 21:40
今、冷やしたワインを飲んで、ちょっと良い気分になってきたところに、こちらを読んで、涙が出てしまいました。
なきじょうごではありません。
いろんな事が頭の中をぐるぐる回っています。
いろんな情報について、なかなか口にできなかったりします。
ドキュメント物の本ばかり読む私は、本当はこんなお話をしたいのですが、ノー天気な私も、実は本当はそんなに簡単に片付いてはいないはずなのにと思いながら、だれともそんなお話をする勇気がありません。
Commented by saheizi-inokori at 2008-08-11 18:12
lotusさん、「幕末太陽伝」は「居残り佐平次」「品川心中」「お見立て」「芝浜」「三枚起請」、、他にもあったと思います。相当な数の落語が登場しますよ。私もビデオは買ってあるのですが観てないので今度しっかり勘定してみます。
Commented by saheizi-inokori at 2008-08-11 18:14
ginsuisen さん、今日読後感を書くのですが、堀井憲一郎も落語はビデオはだめだと書いてます。
Commented by saheizi-inokori at 2008-08-11 18:18
MAKIANDさん、誰しも”片づかない”のではないでしょうか。
片づかない思いを、その端々をちょっと書いてみる。どう書いても書きつくしているわけではないけれど、ちょっと書いてみることで何かを解放したような気になることもあります。
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by saheizi-inokori | 2008-08-08 23:07 | 能・芝居 | Trackback | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori