憲法違反だらけの裁判員制度

一昨日書いた裁判員制度、深く考えてもいなかったのにテレビでの最高裁の役人が「死刑判決を決めるのもみんなで渡れば怖くない」みたいな馬鹿な事を云ったのを聞いたものだから、寝た子が起きたというのか裁判員制度について少し本などを読んでみた。
分かったことは寝てちゃいけない!ってことだ。

どうやらとんでもないことが進行しつつある。
俺はいったい憲法を学んだことがあったのか?
我ながら情けない。
憲法第76条第3項 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
義務教育修了のみが資格となる一般市民が憲法で定めているような判断をなしうるのか。
一般常識があればいいというようなものではない。
殺人という犯罪が起きたとして、それは正当防衛になるのか、情状の酌量は、検察の言い分と弁護側の言い分が真っ向から食い違っているのに膨大な証拠資料を読んでその裏に在る真実(警察の作った資料が正しいとは限らない)を看破したのち適用されるべき法律と量定の判断を”独立して”行わなければならない。
最高裁などの広報資料では「心配しなくても本職の裁判官がそういうことは教えてあげます」というようなことが書いてあるが、それは憲法上許されないことだ。
難しい司法試験をクリアして司法研修を受け実務についても最低5年くらいは判決には加われないほど裁判官は勉強をしている。
その人たちが3人、裁判員が6人の計9人で平等に一票づつを持って多数決で判決を決めるのだ。
たとえば本職の裁判官が全員無罪という意見でも素人の裁判員のうち5人が有罪といえば死刑判決も出せる(この記述は間違いです。訂正記事をお読み下されば有難いです。すみません生かしておかないと後の記事の意味が不明になるものですから。)
大きな事件があるとテレビが横並びで感情的な“常識”を振り回して「やっちまえ!」みたいな論調を繰り広げる。
「だいたいあの顔つきはどうみても”やってる”よな」「そうそう、どうみたって黒だよ」くじ引きで選ばれた6人がそういう野次馬的判断をしないという保証はない。

一方,国民は、
憲法第37条第1項 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する
「行っちゃいけないところに勝手に行ってゲリラに捕まったのは自己責任だ」とか「酔っ払って運転するような奴はみんなクビにすべきだ」のような銭湯や居酒屋の法律論を口から泡吹いてがなっているようなあんちゃんやおばはんが“公平な“法律判断を下せるのか。
今度の制度では被告人は裁判員による法廷を忌避する権利はない。
日本の法廷では被告人は自ら陳述をして思うところをいう。
陪審制のアメリカではそういうことはしない。
検事が被告人の余罪とか私生活などについて厳しい追及をして陪審員に悪い印象を与えようとすることを避けている。
裁判員は匿名にするようだがそれは被告人にとっては恐ろしいことだ。

憲法違反だらけの裁判員制度_e0016828_2326215.jpg
tenjin95 さんがコメントで「仏教徒として不殺生戒を破る死刑判決を出したくない」と書いておられる。
憲法第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
別に仏教徒のことを言わなくとも法律で決めた範囲で処罰を決めよということ自体内心の思想の自由を侵害するのではないか。

さらに
憲法第8条 何人も、、、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
裁判員が直面するのは法定刑の重い重大な犯罪だから長い期間法廷にしばりつけられ難しい議論や証言、資料と取り組まなければならない。
目を背けたくなるような残酷な写真や陳述も冷静に見聞きして真実の発見に努めなければならない。
一緒にいる他の裁判員は“いい人”ばかりとは限らない。
ヒステリックに論理もなく憎悪をぶつけるような人かも知れないが、そういう人とも冷静沈着に忍耐強く議論をして“良心に従い““公平な”結論に導かなければならない。
それを苦役とはいわないだろうか。
とすれば憲法第3条に保障する国民の自由権及び幸福追求権を侵害する。

暴力団の親分が被告人だったら子分達は傍聴席に来ている。
いくら匿名でも顔を知られたら、住所を調べるなんて簡単だ。
執拗なマスコミが取材に来るかもしれない。
守秘義務は一生課せられるから家族に対して思い出を語っても場合によっては懲役刑に処せられる。

アメリカの陪審員制度は結構冤罪や誤審が多いそうだ。
アメリカ人は「いいじゃないか皆で決めたんだから」みたいな感じでそれも問題にしないのか。
日本の起訴後の有罪率が高いのは被告人が有罪を認めても裁判で有罪の判決を得てのち処罰されるからということもある。
アメリカでは本人が有罪を認めると陪審裁判に移行することなく有罪が確定するのだ。

俺は顔つきも態度も良くないし、やることもあまり上等な人間ではない。
敵も多い。
いつ冤罪でつかまるかもしれない。

今までいろんな場面で“正論”を言うと「理屈ばかり言うな」とか「上で決めたことだから」「会社全体がそういう方向なんだから」というようなことを言われて孤立したことが何度もある。
そういうときの“エリート”たちがいかに平気で良心をなくしその場その場で嘘もつき弱いものを見殺しにして平然としているか!
彼らの言うことを聴いていると、俺も彼等もが一緒に確かにみた事実は幻だったのかと我が眼を疑いたくなることも何べんもあった。
こういう輩に裁かれたくはないなあ。

ほんとうは裁判員制度みたいな無茶苦茶なものは国会や政府が強行しても最後は司法が救ってくれるのが三権分立なのにこれは最高裁判所が先頭に立って強行しようとしている。
恐ろしい世の中になった。
Commented by そら at 2008-05-24 00:19 x
裁判員制度。。。
一番の問題は,裁判員に「死刑」の判断ができることだと思います。
死刑判決が出るためには,専門家(裁判官)の半数以上が賛成しなければいけないとか何だとか(細かい数字は忘れちゃった),いろいろ細かく規程があるようだけど,だからといって,法律も何も知らない一般市民がどれだけ正しく裁けるかなんて,私だったらと鑑みると,とても自信がありません。
重たい,判断したくないというのが正直なところです。
裁判官がおっしゃるようには簡単なことではないよね。
梟さんおっしゃるように,相手がやくざさんだったら,どっちに転んでも怖そうだし,できれば一生かかわりを持ちたくないんだけどなぁと。
              (続きます^^)
Commented by そら at 2008-05-24 00:19 x
それから,裁判員の候補者が裁判官から質問されて,それを踏まえて裁判員を決定する…ということになってるみたいで。
その質問には,「死刑に賛成か反対か」という質問も含まれる。

あと,「裁判員候補者を辞退することもできます」ということで,前に書いていらっしゃった方のように,宗教上,死刑には賛同できかねるという立場の方も,どうぞ降りてくださって結構です…ってあるんだよね。
なんかね,死刑反対論者は丁重に門前払いをしておきながら,
ガンガン死刑にしろ!みたいに極端な賛成論者を除外する機能がないように思うんだ。
…私は梟さんのように理詰めで考えているわけではないけれど。
だけど,「何のための裁判官なの?」という気持ちが,やっぱりあります。
Commented by saheizi-inokori at 2008-05-24 00:39
そらさん、裁判員を辞退できる事由はもっと限定的で嫌だからとか宗教上は駄目だと思いますよ。
死刑に限らず過半数、5人で決まるのです。
アメリカの陪審員は12人の全員一致が条件です。
全く、制度の目的が馬鹿みたいですね。
刑事裁判に国民が親しむためとかって政府の広報書類には書いてあるけれど。
Commented by きとら at 2008-05-24 01:02 x
 何かいいことがあるだろうかと無理矢理探してみました。
 あからさまな「国策起訴」、例えば自衛官官舎反戦ビラ配り事件、もしかすると裁判員は無罪に投票するかもしれません。さて、こういう種類の事件に裁判員が召集されるのでしょうか?
Commented by rinrin at 2008-05-24 06:43 x
私はどうしてこんな事を一般市民にさせるのか全然解らない
だって、早い話知らない人の、スゴーく嫌な身の上話を、くわしーく聞いて来るんでしょ。それも経験した事のないようなことでしょ。病気にならないかしら?嫌だと思っても退場とかも出来ないんでしょ。どうやってそんなことに親しみを持てるかわからないです。
Commented by saheizi-inokori at 2008-05-24 08:41
きとらさん、裁判員制度が対象となるのは「法定刑が死刑または無期懲役か禁錮が含まれる犯罪」と「法定刑が短期一年以上の罪のうち、故意で被害者を死に至らしめた犯罪」に限られます。
ですから、おっしゃるような事件は対象にならない。なったとしても、、?
Commented by saheizi-inokori at 2008-05-24 08:48
rinrin さん、それがほとんどの国民の感情だということは世論調査でも分かっているのです。
全く世論の後押しのないままに一握りの、しかも刑事裁判に関わった人が一人もいない審議会で決まったようです。
狂信的に陪審員制度を導入したいと考える人と絶対反対の人が猛烈な議論をしておさまりがつかなくなって妥協としてこんな変な案ができた。
現在の司法制度に対する問題点の把握とか検討はほとんどなされなかったというのですから、あきれてしまう。
法曹界のトップとか評論家などが集まってこんな案を作るということ自体をみても裁判員が行う評議の行く末が危ぶまれます。
Commented by MAKIAND at 2008-05-24 19:36
私も、saheiziさんの記事を読んで怖くなりました。
Commented by saheizi-inokori at 2008-05-24 22:17
MAKIANDさん、本当に怖いです。日本が根っこから変ってしまうかもしれない。
さっき居酒屋のママが私の持っている本を見て裁判員て大変らしいけれど私はなりっこないからいい、みたいなことを言ってました。
自分が裁判員にならなければ誰かがやる。その人は今日隣の席で怪気炎を上げていて男かも知れない。そういう人が下した審判を正すべき最高裁がこの暴挙の首班だということ。
常識の通じない恐ろしい社会になったのだと思います。
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by saheizi-inokori | 2008-05-23 23:35 | 責任者を出せ! | Trackback | Comments(9)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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