ヤクザと革命運動の違いは?聞き手・宮崎学「松崎明 秘録」(同時代社)
2008年 05月 22日
その世界では知る人ぞ知る「鬼の動労」の元委員長。
反体制的労働運動の中でももっとも急進的先鋭的な活動でストライキの旗を振ってきた松崎明。
国鉄改革に際して傍目には180度転身、国労と袂を分かってJRの誕生に全面的な協力をしJR東労組の委員長として絶大な力をふるう。
たが、実は今も革マルに属しているという週刊誌報道もある。
そのあたりの松崎の言い分が語られている。
国鉄改革については
特に国鉄改革の重要な標的が国労・動労であっただけにいい加減な踏み絵ではすまなかっただろうし。
ただ、絶対反対で戦ったら勝ち目はなかっただろうという洞察は当たっていたと思う。
革マル問題については最初から学生上がりばかりで労働運動経験者のいない本部の指示にはほとんど従わなかったと云い
世の中を完全に変えようという革命運動と徐々に良くしていこうという労働運動とでは、根本的に一致しない面があるというのだ。
宮崎は早稲田大学の共産党細胞でゲバルト活動も行なったり、ヤクザ稼業にも足を突っ込んだり、今は「突破者」(自伝、面白い)をはじめとしてノンフイクション作家・評論家として活動している。
二人とも元は共産党に入り革命を志すが共産党に幻滅して別の道を歩んできた。
今の共産党のイメージしか知らない人には想像できないかもしれないが60年安保の頃は共産党の下部組織である民青も角棒とヘルメットで暴力的活動を行なっていたのだ。
そういう二人の体験に基づく日本の革命勢力の裏と表の物語は興味深い。
当然、語る人の主観が入り自己正当化する心理も働いていると思うがそれを差し引いても面白い。
革命を目指しながらも党として組織が大きくなればなるほど不可避的に生ずる官僚的傾向が致命的に革命的な運動の妨げになっていく。
党派性とか理論的な純粋性を追うに必死のインテリ活動家はどんどん現実と遊離して行くがそれをますます純粋性の証として異論を吐くものに対しては内ゲバ・暴力をふるうこともためらわない。
(久しぶりに出勤して大塚・「岩舟」で「ぶっかけ蕎麦」、夏服に似合う揚げ茄子だ)
宮崎が共産党の官僚主義を批判して言う。
万引きをした党員がいたときのこと。
労働者の相互扶助、助け合いが労働組合の原点なのに道徳的に腐敗しているからそんなヤツは切れと言う指令がくる、それは
そこで働く個人たちの幸福とか現実ではなくて企業や組織の名前に傷がつくことが一番の問題になっている。
内部統制とかコンプライアンスなどという掛け声のもと、アメリカから押し付けられた基準つくりや点検に巨額の費用を使って躍起になっているが本音のところでの遵法ではないし(大企業ではないが吉兆をみよ)組織活性化により構成員の満足感を高めていくための内部統制ではない。
派遣業法を作って労働者の買い叩きをし、それが行き過ぎて法律違反だといわれると(キャノンをみよ)形だけ正社員にするが実態は臨時雇いと変わらない。
そこで再び宮崎は言う。
同感だよ。
俺も非官僚のほうに入れてくれないかなあ。
いや、無理かも、結構官僚的だもの、俺っちは。
表題の関連では二人とも山口組の前身である田岡組のことを高く評価する。
組合活動家にはヤクザの親分のように“侠”の精神を持って、仲間がやられたら俺が先頭に立って戦ってやるというようなところがあればいいと考える人もいるそうだ(松崎)。
ヤクザも対立抗争があって殺し合いもするけれど、ヤクザは「収め方」を知っていて、これ以上やったらダメだと思うと収めてしまう。
革マル対中核のような内ゲバにはそれがない(宮崎)。
反体制的労働運動の中でももっとも急進的先鋭的な活動でストライキの旗を振ってきた松崎明。
国鉄改革に際して傍目には180度転身、国労と袂を分かってJRの誕生に全面的な協力をしJR東労組の委員長として絶大な力をふるう。
たが、実は今も革マルに属しているという週刊誌報道もある。
そのあたりの松崎の言い分が語られている。
国鉄改革については
国鉄の分割民営化のときにも、当初から私は絶対反対だったけど、でも、いくら探してみても、勝利の展望は全くないと見えてきた。全く展望がない中で、もし動労が戦闘的に絶対反対でやったら、たぶん国労はいい子になって、こっちだけやられる、と思った。ずっとそういうことを経験してきていましたから、その頃はそう思ったんですね。さて、当時の国労がそれほど柔軟かつ強力な組織指導・運営ができたかは俺は疑問だ。
特に国鉄改革の重要な標的が国労・動労であっただけにいい加減な踏み絵ではすまなかっただろうし。
ただ、絶対反対で戦ったら勝ち目はなかっただろうという洞察は当たっていたと思う。
革マル問題については最初から学生上がりばかりで労働運動経験者のいない本部の指示にはほとんど従わなかったと云い
(1975年の北海道の蒸気機関車基地廃止闘争の時)このときまでは私は革マル派にいましたよね。だけど革マル派の理論と基本方針にはっきりと反する方向に行った。と語る。
世の中を完全に変えようという革命運動と徐々に良くしていこうという労働運動とでは、根本的に一致しない面があるというのだ。
宮崎は早稲田大学の共産党細胞でゲバルト活動も行なったり、ヤクザ稼業にも足を突っ込んだり、今は「突破者」(自伝、面白い)をはじめとしてノンフイクション作家・評論家として活動している。
二人とも元は共産党に入り革命を志すが共産党に幻滅して別の道を歩んできた。
今の共産党のイメージしか知らない人には想像できないかもしれないが60年安保の頃は共産党の下部組織である民青も角棒とヘルメットで暴力的活動を行なっていたのだ。
そういう二人の体験に基づく日本の革命勢力の裏と表の物語は興味深い。
当然、語る人の主観が入り自己正当化する心理も働いていると思うがそれを差し引いても面白い。
革命を目指しながらも党として組織が大きくなればなるほど不可避的に生ずる官僚的傾向が致命的に革命的な運動の妨げになっていく。
党派性とか理論的な純粋性を追うに必死のインテリ活動家はどんどん現実と遊離して行くがそれをますます純粋性の証として異論を吐くものに対しては内ゲバ・暴力をふるうこともためらわない。
宮崎が共産党の官僚主義を批判して言う。
万引きをした党員がいたときのこと。
労働者の相互扶助、助け合いが労働組合の原点なのに道徳的に腐敗しているからそんなヤツは切れと言う指令がくる、それは
突き詰めていくと、万引き問題で民青に対する他党派の批判がやられたらダメージを受けるだろう、組織的な打撃を受けるかもしれない。処分の動機はここに在るわけです。つまり組織の防衛本能なんですよ。僕はそれが気に食わなかったんです。その当時はね。全ての面で防衛的本能ばかり働いている組織っていったい何なのか。俺は大企業や官僚の組織もよく似ていると思う。
そこで働く個人たちの幸福とか現実ではなくて企業や組織の名前に傷がつくことが一番の問題になっている。
内部統制とかコンプライアンスなどという掛け声のもと、アメリカから押し付けられた基準つくりや点検に巨額の費用を使って躍起になっているが本音のところでの遵法ではないし(大企業ではないが吉兆をみよ)組織活性化により構成員の満足感を高めていくための内部統制ではない。
派遣業法を作って労働者の買い叩きをし、それが行き過ぎて法律違反だといわれると(キャノンをみよ)形だけ正社員にするが実態は臨時雇いと変わらない。
そこで再び宮崎は言う。
これは佐藤優の影響を受けているところがあるんですけれども、実は社会の構造というのは、プロレタリアートとブルジョアジーの対立じゃなくて、官僚と非官僚の対立という構造のほうが実は現実の社会には合った分析じゃないかという考えがあるわけですね。そういう分析のもとに、プロレタリアートを代表する党ではなくて、非官僚階層、非官僚階級を代表する党があっていいんじゃないか。愉快だなあ。
同感だよ。
俺も非官僚のほうに入れてくれないかなあ。
いや、無理かも、結構官僚的だもの、俺っちは。
表題の関連では二人とも山口組の前身である田岡組のことを高く評価する。
組合活動家にはヤクザの親分のように“侠”の精神を持って、仲間がやられたら俺が先頭に立って戦ってやるというようなところがあればいいと考える人もいるそうだ(松崎)。
ヤクザも対立抗争があって殺し合いもするけれど、ヤクザは「収め方」を知っていて、これ以上やったらダメだと思うと収めてしまう。
革マル対中核のような内ゲバにはそれがない(宮崎)。
Tracked
from el pajaro
at 2008-05-23 06:08
タイトル : Monologue
10年続けたジャズボーカルのレッスンをやめて1年。 代わりにイタリーの古典を習ってきました。 ようやくクラシックの声が戻り、高音もジャズの頃より2度半伸びたので何とか「ハイバリトン」と名乗ることが許されそう。 ところが、ご存じの方はご存じなように、イタリー語とスペイン語にはまったく同じ綴りの単語が沢山あります。それらの単語の発音が、歌う度に行ったり来たり。 そのためかどうか真意は分かりませんが、センセイが「次の次からフランス物、FaureやDuparcをやりましょうよ」と言い出しました。 ...... more
10年続けたジャズボーカルのレッスンをやめて1年。 代わりにイタリーの古典を習ってきました。 ようやくクラシックの声が戻り、高音もジャズの頃より2度半伸びたので何とか「ハイバリトン」と名乗ることが許されそう。 ところが、ご存じの方はご存じなように、イタリー語とスペイン語にはまったく同じ綴りの単語が沢山あります。それらの単語の発音が、歌う度に行ったり来たり。 そのためかどうか真意は分かりませんが、センセイが「次の次からフランス物、FaureやDuparcをやりましょうよ」と言い出しました。 ...... more
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gakis-room at 2008-05-22 22:23
> 労働運動経験者のいない本部の指示にはほとんど従わなかった
他の新左翼と違って,労働者組織を持っているのが革マルの自慢,だから,虎の子の労働者組織である動労を温存するために,動労を危険領域には近づけない,それが革マルの方針だと理解していました。
他の新左翼と違って,労働者組織を持っているのが革マルの自慢,だから,虎の子の労働者組織である動労を温存するために,動労を危険領域には近づけない,それが革マルの方針だと理解していました。
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saheizi-inokori at 2008-05-22 22:35
gakis-roomさん、黒田寛一がいての動労、動労があってのクロカン、対立しつつもお互いを必要としていた。本書でもそのあたりが語られます。
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高麗山
at 2008-05-23 01:15
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初志はどうあれ、所詮“クロカン”の「子飼い」と当時は見ていました。
究極は、労組貴族がたどりそうな道を歩んだようにしか見えません!
究極は、労組貴族がたどりそうな道を歩んだようにしか見えません!
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henry66 at 2008-05-23 04:16
非官僚階級を代表する党をつくっても、その党の中で官僚制度がすぐに生まれたりして。(私だって、たまには悲観的です)
揚げ茄子のお蕎麦。「食べたい!」と咄嗟に思いました。
私は煙草をやめてからお肉が食べられなくなりました。
揚げ茄子のお蕎麦。「食べたい!」と咄嗟に思いました。
私は煙草をやめてからお肉が食べられなくなりました。
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saheizi-inokori at 2008-05-23 07:58
高麗山さん、henry66さん、権力は(右であれ左であれ)いずれは腐敗するのでしょうね。
組織を作ると必ず効率性とか維持していくための様々な仕組みが必要となりそれが官僚制につながっていく。
宗教団体において然り学会においておや。
ソローの気持ちが分かります。
組織を作ると必ず効率性とか維持していくための様々な仕組みが必要となりそれが官僚制につながっていく。
宗教団体において然り学会においておや。
ソローの気持ちが分かります。
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hanabi_cyu at 2008-05-23 14:33
あ!さへいじさんも入院されていたんですね!
そんなのにじいちゃんのことを心配してくださってありがとうございました<m(__)m>
じいちゃんだんだん元気になっています。ありがとうございます<m(__)m>
私もぶっかけ蕎麦食べたくなりました^^
そんなのにじいちゃんのことを心配してくださってありがとうございました<m(__)m>
じいちゃんだんだん元気になっています。ありがとうございます<m(__)m>
私もぶっかけ蕎麦食べたくなりました^^
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suiryutei at 2008-05-23 18:42
こんばんは。
読めば、きっと面白い本だろうとは思いますが、「・・絶対反対でやったら、たぶん国労はいい子になって、こっちだけやられると思った」というあたりに、自分がやられたら厭なことを相手にやるなよと感じてしまうのです。甘いのかもしれないけれど。
それから、宮崎氏が共産党のゲバルト隊長だったのは、60年安保よりもうすこし後の60年代後半では。革マル派が拠点にしていた大学で、彼のいた学部だけは共産党が自治会執行部をおさえたんですよ。
読めば、きっと面白い本だろうとは思いますが、「・・絶対反対でやったら、たぶん国労はいい子になって、こっちだけやられると思った」というあたりに、自分がやられたら厭なことを相手にやるなよと感じてしまうのです。甘いのかもしれないけれど。
それから、宮崎氏が共産党のゲバルト隊長だったのは、60年安保よりもうすこし後の60年代後半では。革マル派が拠点にしていた大学で、彼のいた学部だけは共産党が自治会執行部をおさえたんですよ。
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MAKIAND at 2008-05-23 20:56
昨日こちらを覗いて、揚げナスが美味しそうだったので、早速作りました。ふふふ 美味しかった~^^
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saheizi-inokori at 2008-05-23 23:46
suiryuteiさん、そうなんでしょうが、組織を守るという大義名分があるのだと思います。
確かに急旋回しなかったら多くの組合員が職場を失ったはずです。
その辺が学生上がりの革マル本部の連中と組合運動の違いだということを松崎は本書で語っています。
私は彼を弁護しているのではないです。そういう行動として理解しているだけですが。
宮崎はおっしゃる通りです。
60年安保の頃にゲバルト民青がヘルメットをかぶっていると党本部は「カメラに写るな」と指導したことを語っているのです。
確かに急旋回しなかったら多くの組合員が職場を失ったはずです。
その辺が学生上がりの革マル本部の連中と組合運動の違いだということを松崎は本書で語っています。
私は彼を弁護しているのではないです。そういう行動として理解しているだけですが。
宮崎はおっしゃる通りです。
60年安保の頃にゲバルト民青がヘルメットをかぶっていると党本部は「カメラに写るな」と指導したことを語っているのです。
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saheizi-inokori at 2008-05-23 23:48
MAKIANDさん、揚げ茄子もシギナスも、水ナスも、、茄子の季節ですね。
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saheizi-inokori at 2008-05-24 08:50
hanabi_cyuさん、じいちゃん、大事に。
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saheizi-inokori at 2008-05-24 08:51
YUKI-arch さん、アウトローの心情ってどこか魅力がありますね。セナに唐獅子牡丹か。
by saheizi-inokori
| 2008-05-22 21:29
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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