魂は売らない ヘンリー・D ・ソロー「生き方の原則」
2008年 05月 19日
「政治とか毎日の決まりきった仕事とか、人々の注意を最も強く引くものは、確かに人間社会の重要な機能です。しかし、人間の体の大切な機能と同じように無意識に行われるべきです。(略)病気になると、人は消化がうまく行っているのかどうかを意識し、そのためにかえって消化不良を起こします。(略)個人ばかりではなく、国家もこのような慢性消化不良を経験しているわけです。政治の世界ではそれをどういった雄弁で装飾し表現するかはみなさんの想像におまかせします。このように、私たちの人生は、目覚めているときには意識していない方がよいことを、すっかり忘れてしまうわけにはいかないばかりか、悲しいことに、その多くをおぼえているのです。いつも消化不良の人間として自分たちの悪夢を話すためにではなく、時には消化良好の人間として永遠に神々しい朝を讃えあうために出会えないものでしょうか。この要求は法外なものではないと思うのです。」
先に『一市民の反抗』を紹介したソローの生き方の原則だ。
政治のあり方に無関心であってはならないと自らに言い聞かせ(本当は好きでもなく興味もないのに)、怠け者の心を励まして新聞や本を読んで、なんとか"自分の意見"を持って発言しようとしながらも霧の中で迷っている羊のような俺。
ソローは憫笑?冷笑?同情はしてくれないだろうな。
だって文句言いながら税金を払い、いやいやながら浮世のしがらみに身をゆだねているんだから。
自己責任!
「太陽が昇り、沈むのを毎日この目で見、自らを宇宙の営みに結びつけて生活することができれば、私たちはこれからもずっとすこやかな精神を失わないでしょう。国民という言葉をよく耳にします。しかしそもそも国民とは何ですか。(略)この世界で暮らしているのはひとりひとりの個人です。」
奴隷制には絶対反対だからそれを支持する州政府に税金を納めることを拒否する。
しかし、折しも始まった南北戦争には意外に冷淡だったソロー。
商業が市場拡大自体を目的とし始めた社会に批判的なソロー。
現代の人間の多くは空想の世界に遊ぶ変人と見るかもしれない。
俺はなんとも懐かしい人柄を感じる。
新自由主義とか世界がこんなに酷くなってしまうと、つまるところはソローは"真実"を語っているのではないだろうか。
訳、解説は山口晃。
文遊社。
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greenagain at 2008-05-19 18:57
ソロー氏は、アナーキストではなく、政治に失望していない所に、言葉の説得力を感じます。
私自身は、回り回って、シンプルなものを求める心境になっています。
私自身は、回り回って、シンプルなものを求める心境になっています。
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みい
at 2008-05-19 19:08
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>太陽が昇り、沈むのを毎日この目で見、・・・・・・・これからもずっとすこやかな精神を失わないでしょう。
そのとおりだと思います。宇宙の営み、自然の営みに、結びつけて生きていければ、いつも思うことです。
そのとおりだと思います。宇宙の営み、自然の営みに、結びつけて生きていければ、いつも思うことです。
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saheizi-inokori at 2008-05-19 19:34
greenagainさん、ね!ソローに回帰しますよね。
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saheizi-inokori at 2008-05-19 19:36
みいさん、あなたのブログをソローに見せたら喜ぶでしょう。
遅ればせながら、エリック・ホッファーに興味を持ちましてね。まず自伝をと思ったのですが売り切れていましたので、案内書の『エリック・ホッファー・ブック』を買いました。
「私が満足するのに必要なものはごくわずかである。
一日二回のおいしい食事、タバコ、私の関心をひく本、少々の著述を毎日。
これが、私にとっては生活のすべてである。」(『波止場日記』)
65歳まで沖仲仕をしながら読書と著述。
生き方のモデルとしてはソローより身近な感じです。
若い頃は政治に意識的であろうとしたものです。しかしこの頃は否応なく意識させられますね。しかも怒りや憎悪ばかりが駆り立てられます。しかし展望はない。キレやすくなるはずですよ。
「私が満足するのに必要なものはごくわずかである。
一日二回のおいしい食事、タバコ、私の関心をひく本、少々の著述を毎日。
これが、私にとっては生活のすべてである。」(『波止場日記』)
65歳まで沖仲仕をしながら読書と著述。
生き方のモデルとしてはソローより身近な感じです。
若い頃は政治に意識的であろうとしたものです。しかしこの頃は否応なく意識させられますね。しかも怒りや憎悪ばかりが駆り立てられます。しかし展望はない。キレやすくなるはずですよ。
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saheizi-inokori at 2008-05-20 06:40
きとらさん、読んだことのない人です。
若い頃見向きもしなかった事物、人柄、生き方に気がつかされてまるで旧知のような感じがすることがあります。私の気づくのを待っていてくれたような。嬉しい気づきですね。
若い頃見向きもしなかった事物、人柄、生き方に気がつかされてまるで旧知のような感じがすることがあります。私の気づくのを待っていてくれたような。嬉しい気づきですね。
by saheizi-inokori
| 2008-05-19 07:53
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(6)