花見うどん うまいぞ~ 「落語研究会」(国立小劇場)
2008年 03月 29日
国立劇場の前庭(写真)からお堀端、一挙に桜が満開だ。
なのに小劇場の中に木枯らしが吹いた。
呼び止めたどこかの御新造が熱い鍋焼きうどんを啜る音が夜の街に聞こえる。
赤く燃えている炭と煮えた鍋、そこだけがほっこりとあったかだ。
あつっ、喉元を通り過ぎていくうどんの熱さと腹ん中があったまってくるのが感じられる。
久しぶりの小三治の「うどん屋」。
うどん屋を相手に絡む酔っ払いの造型の見事さ。
苛められたうどん屋の哀感もともかく憎ったらしい酔っ払いが愛おしく泣けてきそうになる。
二杯目を飲む前にじっと茶碗を見つめて、
と頑張って家を出てきたのに、、
かといって湿っぽくはない。
笑いが次から次へと弾ける。
小三治が目を向けるその先には渋皮のような顔にお愛想笑いを浮かべ背を丸めたうどん屋が俺にもみえるようだ。
「間」の効用をこれほど感じさせた高座はあまり記憶がない。
無言の「間」の方がはるかに多くを語っていた。
正月にも小三治の同じ噺を聴いたが出来はまるで違う。
決定版になるかもしれない。
柳家ほたる「転失気」
柳亭左龍「粗忽長屋」
入船亭扇橋「弥次郎」
先日紀伊國屋寄席で「ねずみ」を聴いたときにちょっともつれてしまったので心配していたが
今日は元気一杯、この人ならではの飄逸な持ち味全開だった。
いつもはマクラで小三治のことをいろいろ言うのに直ぐに噺に入った。
北海道があまり寒くて火事が凍ってしまったので記念に細い棒(凍った火事の)の束を牛の背中に乗せて歩いていたら溶けてきて背中が燃え始めた。
あわてて水をかけたけれど「焼け牛に水」で「もう 嫌だ」と牛が言った。
、、
表情も口調も変えず、しかし心底から愉しんでいる風情で延々30分近いホラ話。
こういう噺が好きな人ばかりだったらどんなにいい世の中になるだろうか。
古今亭志ん輔「豊竹家」
枕に茶の湯に招かれたときの事を振って笑わせる。
好事家・趣味の世界の噺の導入としても成功だ。
噺は6代目円生の独占だった音曲噺。
見るもの聞くもの考えること、全てを義太夫で語るという親父が即妙に口三味線で合いの手を勤める女と愉快なやりとり。
頑張ったね。
そして小三治だった。
いつもと逆に小三治が扇橋ネタを枕に振る。
一緒に中国旅行をしたときの扇橋のボケ振り(若いときからの天然ボケだと小三治はやさしいね)に場内はオオウケ。
既に楽屋に引っ込んでいる扇橋に対する暖かい笑いでもあった。
冬のうどん屋を連れてきてイットキ場内に木枯らしを吹かせた小三治、結局は俺たちにも熱いうどんを振舞ってくれたもんだからいい気分で夜桜の外に出て行った。
写真上から、国立劇場前、江戸川橋・ソウル「トトリム(ドングリの粉で作った豆腐?)」、新江戸川橋公園(江戸川・神田川沿いの見事な桜並木を歩いて行った先)、飛鳥山公園。
なのに小劇場の中に木枯らしが吹いた。
おおっさぶ、、な~べや~きうど~ん~屋台を担いでうどん屋が行く。
呼び止めたどこかの御新造が熱い鍋焼きうどんを啜る音が夜の街に聞こえる。
赤く燃えている炭と煮えた鍋、そこだけがほっこりとあったかだ。
あつっ、喉元を通り過ぎていくうどんの熱さと腹ん中があったまってくるのが感じられる。
久しぶりの小三治の「うどん屋」。
ソバ~ネギ南蛮しっぽく~やや高く粋な二八ソバに対して太く押しつぶしたような色気のないうどん屋の売り声。
うどん屋を相手に絡む酔っ払いの造型の見事さ。
苛められたうどん屋の哀感もともかく憎ったらしい酔っ払いが愛おしく泣けてきそうになる。
酔い覚めの水千両と値が決まりなんと旨そうに水を飲むものか。
二杯目を飲む前にじっと茶碗を見つめて、
酔っ払って理屈を云うことはねえよな、さらにうつむいて茶碗に囁くように小さな声でぽつりと
どうも すみませんでも、
江戸っ子がうどんなんて食えるけェ ばか!捨てゼリフで行ってしまう。
寒くて風も強いしこんな日は商売休んだらどうだいカミサンにそういわれても
何云ってやがる こんな日こそ売れるんだ
と頑張って家を出てきたのに、、
な~べやき~うど~ん~江戸っ子にバカにされるうどん屋だから一層哀れが増すようだ。
かといって湿っぽくはない。
笑いが次から次へと弾ける。
小三治が目を向けるその先には渋皮のような顔にお愛想笑いを浮かべ背を丸めたうどん屋が俺にもみえるようだ。
「間」の効用をこれほど感じさせた高座はあまり記憶がない。
無言の「間」の方がはるかに多くを語っていた。
正月にも小三治の同じ噺を聴いたが出来はまるで違う。
決定版になるかもしれない。
柳家ほたる「転失気」
柳亭左龍「粗忽長屋」
入船亭扇橋「弥次郎」
先日紀伊國屋寄席で「ねずみ」を聴いたときにちょっともつれてしまったので心配していたが
今日は元気一杯、この人ならではの飄逸な持ち味全開だった。
いつもはマクラで小三治のことをいろいろ言うのに直ぐに噺に入った。
北海道があまり寒くて火事が凍ってしまったので記念に細い棒(凍った火事の)の束を牛の背中に乗せて歩いていたら溶けてきて背中が燃え始めた。
あわてて水をかけたけれど「焼け牛に水」で「もう 嫌だ」と牛が言った。
、、
表情も口調も変えず、しかし心底から愉しんでいる風情で延々30分近いホラ話。
こういう噺が好きな人ばかりだったらどんなにいい世の中になるだろうか。
古今亭志ん輔「豊竹家」
枕に茶の湯に招かれたときの事を振って笑わせる。
好事家・趣味の世界の噺の導入としても成功だ。
噺は6代目円生の独占だった音曲噺。
見るもの聞くもの考えること、全てを義太夫で語るという親父が即妙に口三味線で合いの手を勤める女と愉快なやりとり。
頑張ったね。
そして小三治だった。
いつもと逆に小三治が扇橋ネタを枕に振る。
一緒に中国旅行をしたときの扇橋のボケ振り(若いときからの天然ボケだと小三治はやさしいね)に場内はオオウケ。
既に楽屋に引っ込んでいる扇橋に対する暖かい笑いでもあった。
冬のうどん屋を連れてきてイットキ場内に木枯らしを吹かせた小三治、結局は俺たちにも熱いうどんを振舞ってくれたもんだからいい気分で夜桜の外に出て行った。
写真上から、国立劇場前、江戸川橋・ソウル「トトリム(ドングリの粉で作った豆腐?)」、新江戸川橋公園(江戸川・神田川沿いの見事な桜並木を歩いて行った先)、飛鳥山公園。
きれいな桜ですねー。おかげ様で、お花見させていただきました。今日明日が見ごろでしょうか。
そして、うどんも聞きたいけど、花寒いときって、うどんが美味しいですね、食べに行こうかな。
そして、うどんも聞きたいけど、花寒いときって、うどんが美味しいですね、食べに行こうかな。
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散歩好き
at 2008-03-29 16:30
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子供の頃「ドングリ」を食べると「どもり」になると言われましたが千葉県北西部限定の迷信かもしれません。
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saheizi-inokori at 2008-03-29 16:38
ginsuisenさん、あっという間に咲いてしまって花見の予定を立てることができなかった人もいるかもしれませんね。不意打ちのような咲き方。
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saheizi-inokori at 2008-03-29 16:40
散歩好きさん、長野でも「唖」になるとか云いましたが今のところ平気です。
特別な味というわけではないけれどずいぶん食べました。
特別な味というわけではないけれどずいぶん食べました。
桜満開ですね。きれい~ 嬉しいですね。
讃岐は南国なのに、昨日行った公園のソメイヨシノは、まだ蕾でした。もうそろそろ咲こうかなって感じでした。
今日は、少し肌寒い日、夜は、讃岐うどんが食べくなりました。
落語っていいですね。よき時代に浸れる気がします。
讃岐は南国なのに、昨日行った公園のソメイヨシノは、まだ蕾でした。もうそろそろ咲こうかなって感じでした。
今日は、少し肌寒い日、夜は、讃岐うどんが食べくなりました。
落語っていいですね。よき時代に浸れる気がします。
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gakis-room at 2008-03-29 19:12
トトリムって,そのものに味はありませんね。それなのに「なぜ食べるの」と韓国人に聞いたら,「体にいいんだから」と言われました。私には「体にいい」は時にはおいしさよりも優先するのかなと思いました。
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MAKIAND at 2008-03-29 21:00
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saheizi-inokori at 2008-03-29 23:36
みい さん、変ですね。東京は不意打ちのように満開になりました。
今夜は少し冷え込んでうどんが恋しいですよ。
今夜は少し冷え込んでうどんが恋しいですよ。
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saheizi-inokori at 2008-03-29 23:37
gakis-roomさん、特に味らしい味はしないけれどなんとなく田舎の雅趣とでもいうような、、。
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saheizi-inokori at 2008-03-29 23:39
MAKIANDさん、小三治はうどん屋に頼まれてあの噺をしたのかも^^。食欲をそそられました。
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saheizi-inokori at 2008-03-29 23:42
園長さん、長野の桜が咲くころには続いてほかの花も一斉に開いて独特の春ですね。
久しぶりに行ってみようかと思っています。
久しぶりに行ってみようかと思っています。
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74mimi at 2008-03-30 06:38
昨日 余程伺おうかと思いましたが・・・
今日は勇気を出して「江戸っ子はおうどんを食べてはいけない」のでしょうか?「うどん」は粋な食べ物ではないのでしょうか?
「江戸っ子は宵越しの金をもたない」(間違っているかも)は聞いて
いますけど・・・(訊くは一時の恥)
今日は勇気を出して「江戸っ子はおうどんを食べてはいけない」のでしょうか?「うどん」は粋な食べ物ではないのでしょうか?
「江戸っ子は宵越しの金をもたない」(間違っているかも)は聞いて
いますけど・・・(訊くは一時の恥)
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saheizi-inokori at 2008-03-30 09:40
74mimiさん、うどんはどちらかというと関西文化ないしは地方の産物、江戸っ子はソバを手繰るのが粋だという空気があったようですね。
なんとなくソバは男性的、うどんは女こどもが食べるものという考え方もあるかも知れません。
事実私の若い頃はソバやには男性客が多くうどん屋(数は少なく普通のソバ屋がうどんを出すことが多かった)には家族連れとか女性客が多いように感じました。
ソバ屋の昼酒などは粋なものとされていますがうどん屋ではイマイチ様にならないという感じでしょうか。
もっとも最近は全く様変わりで男性が讃岐うどんを喜々として啜り女性が昼下がりソバ屋で一人酒をちびちびやってってもちっとも奇異な感じがなくなりました。
亡くなった江戸評論の杉浦日向子さんがソバ屋酒のことを紹介したりしたのも懐かしいです。
あの、「つるつるっ」と音をたててそばを手繰るのは女性には抵抗があったかもしれませんね。
なんとなくソバは男性的、うどんは女こどもが食べるものという考え方もあるかも知れません。
事実私の若い頃はソバやには男性客が多くうどん屋(数は少なく普通のソバ屋がうどんを出すことが多かった)には家族連れとか女性客が多いように感じました。
ソバ屋の昼酒などは粋なものとされていますがうどん屋ではイマイチ様にならないという感じでしょうか。
もっとも最近は全く様変わりで男性が讃岐うどんを喜々として啜り女性が昼下がりソバ屋で一人酒をちびちびやってってもちっとも奇異な感じがなくなりました。
亡くなった江戸評論の杉浦日向子さんがソバ屋酒のことを紹介したりしたのも懐かしいです。
あの、「つるつるっ」と音をたててそばを手繰るのは女性には抵抗があったかもしれませんね。
母が千鳥が淵のサクラを見てきて、感激しておりました。ちょうどいい時に上京したようです。
姉は、母のほうがパワーがあってつかれたようでしたが、東京のさくらを満喫してきたようです。
姉は、母のほうがパワーがあってつかれたようでしたが、東京のさくらを満喫してきたようです。
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saheizi-inokori at 2008-03-30 11:48
ご丁寧な説明を有難うございます。
ソバは男性的でうどんは女性的・・・存じませんでした。
両親は信州出身ですが、父はおソバよりおうどんが好きでしたから
家でおソバを食べたことがありませんでした。私は「そばがき」が大好きで、今でも日本町でそば粉を買ってきて作ります。
SFの日本町のレストランでは白人女性がお蕎麦やおうどんを音を立ててすすっています。エッ!と思うことも。
お話がそれました。
ソバは男性的でうどんは女性的・・・存じませんでした。
両親は信州出身ですが、父はおソバよりおうどんが好きでしたから
家でおソバを食べたことがありませんでした。私は「そばがき」が大好きで、今でも日本町でそば粉を買ってきて作ります。
SFの日本町のレストランでは白人女性がお蕎麦やおうどんを音を立ててすすっています。エッ!と思うことも。
お話がそれました。
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saheizi-inokori at 2008-03-31 16:17
by saheizi-inokori
| 2008-03-29 00:32
| 落語・寄席
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