文章のグルメが選ぶ短編集 北村薫 宮部みゆき 編「名短編、ここにあり」(ちくま文庫)

俺の好きな二人の作家が選んだ短編集、読みたくなるよね。

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まず半村良の「となりの宇宙人」で落語の世界に連れて行ってくれるなんざ、さすがに円紫師匠の北村さん、宮部さんも新作落語の選考委員をやったほどの落語通だけに、楽しい艶っぽい落語みたいなSFが皮切り。

黒井千次「冷たい仕事」が不思議な、カサブタを剥がす快感とでも言うような、そうそう分かるよな、みたいな快感をブラックな感じで描く。
黒いさんだものな。

小松左京「むかしばなし」はヒネリが利いていいね。

城山三郎「隠し芸の男」。
哀愁漂うサラリーマン人生、泣くになけない。残酷とさえ言える。
ペーソス。

吉村昭「少女架刑」。
これが俺のベスト。
吉村がこういう小説を書くのか(なんか劇画にありそう)と思うがよく読むと簡潔であってひと言ひと言が叙情を湛え美しい文章であるのはいかにも作者らしい。
冷たいエロティシズムが指し色。
これも寂しい、まるで死体置き場のような寂しさ。
それでいてどこかにユーモアを感じる。

吉行淳之介「あしたの夕刊」。
作者にしては珍しく男女の関係が出て来ないコント。

山口瞳「穴」。
これも落語にある俳諧のような諧謔。

多岐川恭「網」。
マアね。

戸板康二「少年探偵」。
いかにも北村ワールド。
イヤ戸板さんが先輩か。殺人も泥棒も登場しない優しいミステリー。

松本清張「誤訳」。
これだけがあまり気に入らなかったなあ。

井上靖「考える人」。
今若い人はほとんど知らないかな。
「氷壁」は映画にもなったね。
ある男が何故木乃伊(ミイラ)になったか?
後半から面白い。
ミイラにならざるを得なかった人生とは?
ベスト2かな。

円地文子「鬼」。
女の業を描いた人らしい短編。
Commented by lee88r at 2008-03-26 00:19
こんばんは。
本屋で気になってまだ読んでいませんでした。短編集、あんまり手を出さないのですが、読んでみようかなぁ。考える人、おもしろそうですね。
Commented by 74mimi at 2008-03-26 07:23
これは読みたいです!
今度SF行ったらK書店に寄って、あるかどうか見てきます。
なければオンラインで注文します。
吉村昭氏の作品は殆ど読んだつもりですが、これは読んでいません。佐平次さんは私の情報源です。ありがとうございます。
Commented by saheizi-inokori at 2008-03-26 10:10
lee88rさん、短編は気に入ったものだけを読めばいいから気楽ですよ。
もっとも編集者は掲載順まで神経を使っているようですが。
アンソロジイは編集者の創作とすら言えるそうです。
Commented by saheizi-inokori at 2008-03-26 10:12
74mimiさん、たまたま本屋で見て買いました。
たいていの本はアマゾンの方が簡便に手に入りますが、本屋での遭遇という楽しみは格別です。
Commented by 74mimi at 2008-03-27 06:01
K書店にあるかどうか見てみます。
日本のアマゾンは国外からは購入できないと思うのです。
K書店のオンライン・ストアを調べましたけど、見つかりませんでした。時の運にまかせましょう・・・
Commented by saheizi-inokori at 2008-03-27 07:39
74mimiさん、みつかるといいですね。
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by saheizi-inokori | 2008-03-25 21:16 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(6)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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