「体」のことを思うとき 川上未映子「乳と卵」(文藝春秋3月号)

昨夜2時過ぎ、厭な夢を見ているなあと思ったら腹痛、そして動悸が激しい。
トイレに行って深呼吸をして自律神経の薬を飲んで横になったが眠れない。
馬生や小さん(故人の)の世話になってもだめだ。
だんだん不安になってきた。
このまま、逝っちゃうってこともあり?

しょうがないから居間に行ってテレビ(衛星)を見たら「試してガッテン」をやっている。
普段あまりテレビを見ないから初めて見る番組だ。
枕が合っていないと熟睡ができないばかりではなく肩こり、頭痛、うつ病にさえなるんだと、いちいち思い当たることをいっている。
昼、喜多八演じる医者が「そうか、頭が痛いのか。それは頭痛に違いなかろう。これを飲みなさい」と「葛根湯」を飲ませる枕を思い出す。
足が痛くても「足痛じゃ」と葛根湯、付き添いの人にまで「お待たせしたノウ」と葛根湯だ。
俺も葛根湯でも飲もうかと思ったが、置いてない。
引出しをかき回して胃薬を飲んでテレビを見続けた。
明らかに俺の枕は低すぎるようだ。
イヤフオンで毎晩落語の枕を聴いていても、それでは頚椎の角度には役立たないようだ。
番組の教えに従ってバスタオルを二枚ほど上に敷いて横になったらようやく症状も治まってしばし眠ることができた。

俺が自分の体を意識するのはこのように何らかの異常によって、すなわち病気になって初めて、まざまざと体を意識する。
そういう意味ではこの数年はいろいろと異常の倉庫みたいになってきたし、華麗じゃない、加齢・老化のせいで嫌でも日常的に体を意識しないではいられなくなった。
若い頃はよほど具合が悪くなるか怪我でもしない限り体なんて意識をしなかったように思う。

「体」のことを思うとき 川上未映子「乳と卵」(文藝春秋3月号)_e0016828_1131733.jpgこの芥川賞・受賞作を読むと女性の体に対する感じ方は男性のそれと大分違うことを教えられる。
豊胸手術をしようと考えていろいろ勉強し上京までする姉・39歳。
夫に逃げられて小学生の娘との母子家庭、大阪の場末のホステスで今日の日々を生きている。
娘はまもなく初潮を迎えるはずだが
(本などに)これでいつかお母さんになれるんだわ。って感動して生んでくれてありがとう、みたいな(略)これはこれを読んだ人に、こう思いなさいよってことのような気がする。(略)
あたしは勝手にお腹が減ったり、勝手に生理になったりするようなこんな体があって、その中に閉じこめられてるって感じる。(略)
お母さんを見てたら、毎日を働きまくって毎日しんどく、なんで、と思ってまう。これいっこだけでもういっぱいやのに、その中からまた別の体を出すとか、そんなこと、想像も出来んし、、
母が自分を育ててくれる苦労を観て素直に感謝してやさしくできない娘は親子喧嘩して「なんであたしを生んだん」、言っちゃならないと自分も分かっているセリフを言ったあと意思疎通は紙に書いて行っている。

ま、このあたりの設定はむしろ古い小説だ。
母は自分に母乳をやって貧弱な不格好な胸になったのを整形しようとしている。
それもこれも精子と卵子が合わさってじぶんが生まれたから。
だから、、。

体について幼い頃から考えることが多くその思念は「命」のことに辿りつく。
それだけ女性の方が命について深く考えていることが多いのかもしれない。

ストーリーに何か新しいものがあるわけじゃない。
だからそれが一層俺などには分かりやすい(昔ながらの)親子の葛藤と和解として読めてそれなりに感動できる。
じわっと、という程度ではあるけれど。
樋口一葉へのオマージュという面もあるこの小説はマスコミで喧伝されているほど”奇矯な”ものではない。

「体」のことを思うとき 川上未映子「乳と卵」(文藝春秋3月号)_e0016828_1884115.jpg

夕方、またもやテレビ。
偶然星野道夫のことをやっている番組に遭遇、アラスカの四季を生き抜く生き物たちの映像と星野の遺した言葉に引き込まれて結局2時間見てしまった。
あらゆる生命が
生まれ変わりながら
ゆっくりと
終わりのない旅をしている
小説の女の子がこの番組を観たら何というかなあ。
Tracked from 墓の中からコンニチワ at 2008-02-20 15:00
タイトル : 今度は拒食症?
久しぶりで、我々の健康状態について報告します。 PTSDからのリハビリ中に脳梗塞に襲われた妻は、左手は自力で機能を回復させ、発声発音は私の指導で復旧させました。こんな軽症で済むなんて…無信心のお陰かな。 睡眠時間も概ね正常化しました。問題は、チョット食欲過多? 私は導眠剤が効きすぎの感じになってきました。不安のアタックも感じません。しかし妻と反対に拒食気味になってきました。偶然、過食症で苦しんでいる人と出会い、その嘆きを聞いている途中でその人の食生活の例を説明されたのがいけなかったよ...... more
Commented by lee88r at 2008-02-17 19:05
枕は大事ですね。高めと低めを用意しています。時々使い分けたり。
とにかく、睡眠をとるのが大事だと思っている節があります。。
「寝るほど楽はなかりけり。浮世の馬鹿はおきて働く。」
って、小さいころに祖母や母が寝かしつけるときよく口にしていた言葉が体に染み付いているのかなあ^^。
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-17 20:51
lee88rさん、使い分けないでいつも同じ、15度の角度ができるものがよいようです。あまり柔らかくないのをね。
寝るほど楽は、、わが母もよくいいました。
「あ~あ」とか「やれやれ」と言いながら。ほんとに楽そうでしたね。
Commented by sakura at 2008-02-17 22:40 x
夜中に気分悪くなると落ち込みますよね。
もし気分が悪くて どうしようか?と思った時。
救急センター #7119へ電話すると どのような状態か話すと救急車を呼ぶか、どうすればよいか教えてくれるそうですよ。
何かの時に役に立つかもと思って電話の横に番号を書いておいています。
saheiziさんは お一人ですから ご用意を、、ね。
くれぐれもお大事に、、
Commented by ginsuisen at 2008-02-17 23:12 x
大丈夫ですかー。夜中に具合が悪くなるのって不安になりますねー。#7119とお嬢様への℡が必要かも。それに食べすぎにご用心ですね、やっぱり。
Commented by きとら at 2008-02-17 23:53 x
 『朝めしの品格』に小三治の「玉子かけ御飯」が引用されていまして、面白かったので、早速『ま・く・ら』を買い、半分読んだところです。
 いいですね、この本。笑いの中にしみじみとした情感が感じ取れます。
Commented by antsuan at 2008-02-18 00:45
 ペースメーカーが異常電波に侵されたりしてませんか・・。お気をつけ下さい。
 文芸春秋、買ってありますが受賞作品には興味ありません。若い者が自然との戦いに生きるような小説は今は期待してはいけないのでしょうか。
Commented by naomu-cyo at 2008-02-18 08:51
「乳と卵」読んでみようかしら、と思いました、佐平次さんの日記読んで。若くておきれいな女性が芥川賞とった、ってほうばかりが喧伝されてなんとなく形骸化しているような気がして、読まずにいたんですけどね。
 わたしは34にもなっていまだに、自分の身体が子どもを宿す能力を備えているということが信じられない有様ですよ。
Commented by tona at 2008-02-18 08:54 x
saheiziさん、大変だったのですね。もう大丈夫なのでしょうか。
この頃、日中はない不安が夜中に嫌な夢で目覚めて暗闇の中で重くのしかかってきます。ずっと寝付けなくていやになります。加齢ですね。一人だとどんなかと想像しても恐ろしいです。
やっと義蕎に行きました。材料が新鮮で吟味してあって、美味しかったです。ありがとうございました。
お大事に。
Commented by shimamelon at 2008-02-18 09:20
まくらを変えるとってよく効きますけどね(あ、落語みたい)、私も頚椎に疾患を抱える身で、腕がしびれはじめるとバスタオルをまいてヨガの死体のポーズをします(要はダラリンと寝るだけ)、眠れないだけでも不安なのに具合悪いなんて、本当に大変でした。
川上ナントカさんは、最近の美人作家さんですねー。読書範囲が広い!
私は、母と大層こじれた仲でしたので、あまり読みたくないですねー。もうオバハンなのに、こんなこと言ってます。
Commented by みい at 2008-02-18 10:27 x
あら~心配です。もう大丈夫ですか?
おひとりだと、ほんと不安になりますよね。sakuraさんのおっしゃるとおり、♯7119メモしておいてくださいね。わたしもメモしておこう。

星野道夫さんの言葉いいなあ~こういう番組、大好きです。
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-18 10:28
sakura さん、ginsuisen さん、ありがとう。
早速電話番号を貼りました。
母が傍からみていると元気そうなのにやたらといろいろ訴えたのですが、今その気持ちが判る。手遅れですが。
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-18 10:30
きとら さん、それはかなり若い頃に書いているはずです。老成していると思いませんか。
もっとも「ま・く・ら」はもう忘れてしまったなあ。誰かに上げてしまった。
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-18 10:32
antsuanさん、川上さんの小説も若い女の子が体の変化という”自然”をどのように受け入れていくかと言う、見ようによっては自然との闘いかもしれませんね。
星野は戦いと言うよりは受容と言う感じがします。
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-18 10:34
naomu-cyoさん、雑誌だと他の記事も読みでがあっていいですよ^^。
私はマトモナ小説だなあと感じました。
石原マッチョの守はご不満のご様子ですが。
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-18 10:37
tona さん、ありがとう。
ほんとに明るくなると一体なんであんなに怖がったかと思う。
子どもの頃もそうでしたが。
義蕎暫く行ってないです。
又行きたくなりました。
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-18 10:42
shimamelonさん、同症相憐れむ、私も頚椎ヘルニアだと大病院で言われて有名な専門医に一年前から予約を取っていってみました。なんとも無い、ですって。
でも痺れたりいろいろあるのでマッサージに通っています。
お母さんとのいろいろって誰しも程度の差こそあれ、あるような気がします。
私は自分にイラついていた。
それはこの小説の少女とも同じかもしれない。
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-18 10:44
みい さん、ありがとう。今朝は元気に出勤しています。
星野さんの番組は再放送だったらしいです。
これだけの写真を撮れる人が少し早く死にすぎました。
Commented by gakis-room at 2008-02-18 12:06
独居老人の私ですので人ごととは思えません。でも,一過性のもののようですので安心いたしました。
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-18 12:51
gakis-roomさん、ありがとう。
でも加齢は一過性じゃないですね^^。
Commented by 高麗山 at 2008-02-18 18:36 x
まだこの時間になっても、生気を取り戻せません!
昨夜は長男を見て、いささかどころか大きな深みに、身を落としてしまいました。
朝からコメントしようと、文春と星野道夫さんの写真集を手元においているのですが、ページをめくる気力もありませんでした。
年齢を省みない、己に愛想を尽かしています!
Commented by hanabi_cyu at 2008-02-18 19:06
ブログを更新されるようで、よかったです☆
無理は、しないでくださいね^^
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-18 23:34
高麗山さん、そういう時はひたすらボケっとしているしかないです。私の場合は。
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-18 23:34
hanabi_cyuさん、ありがとう。今夜は元気に騒いできましたよ。
Commented by び~ちゃん at 2008-02-19 17:52 x
お元気でなによりです。又、あったかくなったら、南の島の方へもお越し下さい。
Commented at 2008-02-19 18:27 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-19 21:49
び~ちゃん さん、沖縄が恋しいですよ。
Commented by saheizi-inokori at 2008-02-19 21:51
鍵コメさん、ありがとう。
今まで「気をつけなくちゃだめだよ」という言葉を交わしつつついつい飲んできました。
うまいこと倒れっぱなしというわけにはいかないものかなあ。
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by saheizi-inokori | 2008-02-17 18:12 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback(1) | Comments(27)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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