バラが咲いた さびしかった僕の庭に 小三治・扇橋二人会(調布グリーンホール)
2007年 11月 30日
小三治が言った。
柳家 禽太夫 ( きんだゆう) 「水屋の富」
先日「にっかん飛び切り」で志の吉がやるのを観たばかり。
落ち着いた語り口で抑えたやり方。
水屋が千両当てる前に街の人たちに愛されて明るく楽しい毎日を送っている様子を禽太夫はやらなかったが、
俺はそれをやった志の吉の演出の方がいいと思う。
時どき志ん朝を思わせる口調が出る。
扇橋「三井の大黒」
「噺家渡世」の宣伝をするが、それ自体が扇橋節横溢で満員の客は大喜び。
例によって小三治賛歌を歌い上げる(ぼそぼそと)。
血気盛んな職人に聞きとがめられてボコボコにされているのを棟梁が止めて聞いてみると上方の大工だと言う。
連れて帰っての棟梁とのやりとりがなんともとぼけて味がある。
なんだか扇橋その人が左甚五郎となって噺に出てきたようだ。
小三治「千早振る」
「たっぷり!」と声がかかると
扇橋と小三治がお互いのネタをマクラで紹介し解説しあう。
こんなシーンにめぐり合えるなんて!
「千早振る」の出来?
絶品でした。
それこそ、これ以上はないというくらいに”気取りもなく”伸びやかに、平易に語った。
健やかな笑い。
文字に書いたらどうと言うことのないクスグリで爆笑が起きる。
怖いほどの”間”の力、言葉と言葉の”間”だけではなくて仕草、表情の”間”、一秒の何分の一狂ってもまるで違うものになるような”間”だ。
小三治の語り方・言葉づかい、これは日本語の正統ではないか。
現代の流行の言葉を使うのではなく、現代に活き活きと生きている言葉を感じさせる。
古典だからと言っていかにも古い伝統的な言葉づかいをしなくても自然に伝統を踏まえている。
時間は短かったけれど中身が濃くて堪能した。
小三治の前に柳貴家小雪が神楽をやったが、可愛くてきれいで楽しかった。
一日経ってもまだ心の中に温かいものが残っているようだ。
写真上、雑司が谷・鬼子母神の大銀杏、樹齢600年。
下は雑司が谷・「和邑」・「つくね蕎麦」。
扇橋とふたりでやるのは滅多にないから楽しみにしていた。俺も楽しみにしていた。
柳家 禽太夫 ( きんだゆう) 「水屋の富」
先日「にっかん飛び切り」で志の吉がやるのを観たばかり。
落ち着いた語り口で抑えたやり方。
水屋が千両当てる前に街の人たちに愛されて明るく楽しい毎日を送っている様子を禽太夫はやらなかったが、
俺はそれをやった志の吉の演出の方がいいと思う。
時どき志ん朝を思わせる口調が出る。
扇橋「三井の大黒」
「噺家渡世」の宣伝をするが、それ自体が扇橋節横溢で満員の客は大喜び。
例によって小三治賛歌を歌い上げる(ぼそぼそと)。
「千早振る」なんて前座のやるような噺でも小三治はやってしまう。それを聴いていて私はジーンとなって泣いちゃいましたよ。「江戸の大工は仕度は勇ましいが仕事は下手でぞんざい」、工事現場で聞こえよがしにつぶやくきたないオヤジ(実は名人・左甚五郎)。
あの噺をあれだけに話せる人はいない。
私はいつも短くていい加減なんだが小三治はいつもきっちりやるから、今日も楽しみ、、彼のマクラが長いのもいいです、、。
血気盛んな職人に聞きとがめられてボコボコにされているのを棟梁が止めて聞いてみると上方の大工だと言う。
「いくつ殴られた?」住む所もないというから家に連れて行く。
「18」
「どうしてそんなことを勘定していたんだい?」
「別にやることもないから」、、
「今どこにいなさる?」「ここにいる」
連れて帰っての棟梁とのやりとりがなんともとぼけて味がある。
なんだか扇橋その人が左甚五郎となって噺に出てきたようだ。
小三治「千早振る」
「たっぷり!」と声がかかると
やりたいけれど今日はどうしても9時には終わらなきゃならないから、、。と、ことわって
扇橋とは同窓生と言うか戦友と言うか便所掃除からなんからみんな一緒にやった仲だ。9時という終わりの時間が気になるし、もっとずっと聴いていたいし、、と、「千早振る」に入ったので内心わ~っ!だ。
今日の「三井の大黒」は先代の三木助の得意ネタだけど扇橋の今日の出来は特によかった。ああいうことはなかなかないんですよ。
ナニ云ってるんだか分からないことがしょっちゅう、、。(チョイと扇橋のマネをするから場内爆笑)
安藤鶴夫さんが誉める三木助を私は評価していなかった。
評価しないということは、要するに好きになれなかったということで、なぜ好きになれなかったかというってェと、いやに気取ってばかりいたから、、。
三木助の弟子はたくさんいるけれど正直にいうと三木助を抜いたのは扇橋ひとりだ。
三木助をちゃんと活かしながら扇橋の世界を創った。
扇橋より8つ若い私が8年後にああいうようになれるかどうか、分からない。
あれで、困ったところもあって今日も自分が規定の時間を越えてしゃべったのが分かってないんだから。
自分じゃ25分くらいだと思ってたって、、45分もしゃべった。
大体世間じゃ私のマクラが長いというけれどそれも扇橋のせいで、以前は私はこんなに長くマクラをやらなかったのに、扇橋を聴いているとなんだか分からないことをごちゃごちゃ云っている。
ああいうことで済むのなら、と私もやっているうちに扇橋の癖が伝染して治らなくなっちゃった。
扇橋と小三治がお互いのネタをマクラで紹介し解説しあう。
こんなシーンにめぐり合えるなんて!
「千早振る」の出来?
絶品でした。
それこそ、これ以上はないというくらいに”気取りもなく”伸びやかに、平易に語った。
健やかな笑い。
文字に書いたらどうと言うことのないクスグリで爆笑が起きる。
怖いほどの”間”の力、言葉と言葉の”間”だけではなくて仕草、表情の”間”、一秒の何分の一狂ってもまるで違うものになるような”間”だ。
小三治の語り方・言葉づかい、これは日本語の正統ではないか。
現代の流行の言葉を使うのではなく、現代に活き活きと生きている言葉を感じさせる。
古典だからと言っていかにも古い伝統的な言葉づかいをしなくても自然に伝統を踏まえている。
時間は短かったけれど中身が濃くて堪能した。
小三治の前に柳貴家小雪が神楽をやったが、可愛くてきれいで楽しかった。
一日経ってもまだ心の中に温かいものが残っているようだ。
写真上、雑司が谷・鬼子母神の大銀杏、樹齢600年。
下は雑司が谷・「和邑」・「つくね蕎麦」。
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ginsuisen
at 2007-12-01 00:40
x
う、う、う~!行きたかったな~。仕事つまってなかったら。
0
初めての高座に感動したにわか仕立ての落語ファンumeはこの記事を読んで、「う、う、う~行きたかったなー」と思いました。
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散歩好き
at 2007-12-01 08:59
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同級生の小はん師匠も昭和36年に高校を卒業し三木助に入門、三木助亡き後小さんの弟子なりました。扇橋師匠と同じ道を歩んでいます。小生には今の所小はんさんの方が解りやすいのですが扇橋さんは比較的寄席にも出ているので努めて見る様にします。
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antsuan at 2007-12-01 09:44
読んでいて、私も思わず「わ〜!」でした。
師走ですね。噺家の襟巻きをして火鉢に手をかざす仕草などが目に浮かびます。
師走ですね。噺家の襟巻きをして火鉢に手をかざす仕草などが目に浮かびます。
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saheizi-inokori at 2007-12-01 10:21
ginsuisen さん、羨ましがらせてしまいましたね。このイベントを教えてくださった方に感謝しています。
一期一会、を感じるいい会でした。
一期一会、を感じるいい会でした。
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saheizi-inokori at 2007-12-01 10:22
ume さん、う、う、う~申し訳ない!ひとりだけいいことして。
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saheizi-inokori at 2007-12-01 10:25
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saheizi-inokori at 2007-12-01 10:26
antsuanさん、最近の噺家は着物を脱ぐと随分今風な格好をしていますよ^^。
お客の方が古風かもしれない。
お客の方が古風かもしれない。
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maru33340 at 2007-12-01 13:22
羨ましい。
小三治さんの「千早振る」はサライの付録のCDで聴いて感心しましたが、是非ライブで聴きたかった。
扇橋さんは最近埼玉に戻ったときにたまたま末廣で2回聴きましたが、本当にすっかり陽炎みたいにふわふわとしていて、「なんだかよくわからないのに気持ちが良い」芸風になっていて(20数年前学生時代に聞いたときはまだ随分しっかりしていた)僕は個人的に好きです。(ちょっと晩年の先代正蔵みたいで、何をしゃべっても、特になにもしゃべらなくてただの雑談でも、存在自体が芸になってしまう領域に到達しているようですね。)
小三治さんの「千早振る」はサライの付録のCDで聴いて感心しましたが、是非ライブで聴きたかった。
扇橋さんは最近埼玉に戻ったときにたまたま末廣で2回聴きましたが、本当にすっかり陽炎みたいにふわふわとしていて、「なんだかよくわからないのに気持ちが良い」芸風になっていて(20数年前学生時代に聞いたときはまだ随分しっかりしていた)僕は個人的に好きです。(ちょっと晩年の先代正蔵みたいで、何をしゃべっても、特になにもしゃべらなくてただの雑談でも、存在自体が芸になってしまう領域に到達しているようですね。)
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saheizi-inokori at 2007-12-01 14:09
maru33340さん、なんか申し訳ないすね。
CDよりもずっと出来が良かった、なんて云ったらマスマス申し訳ないなあ。
先代正蔵をご覧になったのですか?
私は踊りを見たのを覚えていますよ。噺の方ははっきり覚えていません。テープはよく聴きますが。
CDよりもずっと出来が良かった、なんて云ったらマスマス申し訳ないなあ。
先代正蔵をご覧になったのですか?
私は踊りを見たのを覚えていますよ。噺の方ははっきり覚えていません。テープはよく聴きますが。
by saheizi-inokori
| 2007-11-30 22:49
| 落語・寄席
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