「今さら」の半日 室町「砂場」 付録・「裏ミシュラン」

日本橋・室町での夜の集まりまで時間があいたので、久しぶりに銀ブラ。
表通りと裏通りをジグザクに歩いてみると「世の中、変わったなあ！」とオノボリサン気分。
途中で「銀座湯」、ここも久しぶり、一階で湯銭を払って階段を上がると小さな脱衣場がある。
浴室の壁が服部時計店など銀座の風景のタイル張り。
いい気持ちになって、外は寒いので湯冷めをしないようにマフラーで首を防備して再び歩く。

室町「砂場」、以前時々来た店で、どこにあるかもよく知っているつもりだったが、スタート地点が違っていたし、このところいつも俺を悩ますボケのせいで迷ってしまう。
前の会社で若者たちを連れていって散財したことはどこかに書いた。
「砂場」が蕎麦屋であることを、どういう”高級な”蕎麦屋であるかを実地に教えてあげたのだ。
そんな因縁も思い出すと今さら道を聞こうという気にならないので、愚直にうろついて店に着いたときはぎりぎり、滑り込みセーフだった。


昔から同じ会社にいて、時々話したりすることなどもあったけれど仕事が重なることはあまりなかったような仲間の集まり。
今はみんな違う会社にいる。
俺が一番年上、みんなもそろそろ社会人としての人生の仕上げにかかる年頃。
「時々集まって呑もうよ」、声をかけたのは俺だ。
二月に一度、７人が順に幹事と決めて、あっという間に最初の幹事に戻って、彼が選んだのが「砂場」と言うわけだ。
「なにしろ、ここの蕎麦の盛り方はバーコードみたいだから、、」とバーコードを連発する幹事。
席にはそういう感じの男もいるのになあ。

今までの会社生活では相手がキャリアの場合は、上司であると後輩であるとを問わずその男がキチンと責任を果たしているかと言うことを重要な判断基準にして付き合っていた。
親しいから大目に見るなどということはなく親しければかえって厳しい注文をつけた。

こうして仕事を離れて和気藹々とやっていると、今までの付き合いで気がつかなかった人柄や才能が見えたりして驚いたり楽しかったり。
"許しあって群れることの安逸"みたいなものを感じる。
ふっと「ああ、俺にも別の人生が有り得たかな」などとムズカユイ感傷。
有り得なかったことはトウに自覚しているくせに。

勘定を済ませてきた幹事がニコニコしている。
隣の部屋から小泉純一郎が出てきたので握手したんだって。
シャレではなく本気で喜んでいる。
さっきまで刑法と刑事訴訟法の考え方の違いを語り、ミシュラン三ツ星の店の品の無さをなじり（彼はポケットマネーで奥様を連れて勉強して歩いたのだが銀座の水商売のお姉さんをご同伴の似非紳士がふんぞり返っている店があった由）、朝日新聞の堕落に怒り、、していた男にしてはツマンナイことで喜ぶんだな、と意外でもありちょいとがっかりもしたんだ。

みんなと別れて一人で電車に乗ってから「そうじゃない。彼の反応が素直なんだ。ああいうところが俺にはマネができないんだな」と思いました。
これも今さらやり直しが利くわけがないのだけれど。

写真中は「砂場」のお通し、蒲鉾一切れ食べてしまった。アサリの炊いたのと生海苔がうまい。
蕎麦の盛り付けはそれほどバーコードじゃないね。
玉子焼きとか天ぷら、焼き鳥などいろいろ出たからお腹は十分だ。
下は下北沢で見かけた張り紙。
ちょっとみたら逆効果にならないか？

それから、ミシュランのこと、案の定物議を醸している。
俺も全貌を見たら少々眉唾だな、と思った。
前にミシュランのことを書いた本を紹介したのを忘れていました。
パスカル・レミ　「裏ミシュラン」（バジリコ）といいます。
ご参考までに。