分相応、程のよさって? (SD3)

昨日の記事のコメントに返信していて落語の「片棒」を思い出した。
ケチで身代を築いた赤螺屋(あかにしや)ケチ兵衛、身代を三人の息子の誰に譲るか、悩んだ挙句に口頭試問。
「俺が死んだらどういう葬式をするのか?」
長男が、黒塗り金蒔絵の重箱に極上の料理をつめて灘の生一本と車代十両を三千人に、
次男は、神輿や屋台を出して木やり、芸者のてこ舞を先頭に行列を作って練り歩くだのと
恐ろしいことを仕方話でするものだからケチ兵衛さん、もう卒倒しそうだ。
「今すぐ勘当だ!」
最後に登場した三男は葬式なんてもったいない。
鳥葬にしたいところだが、それはいくらなんでもひどいから
一応はお通夜をやるけれどみんなに言っといた出棺時間を繰り上げて誰も来ないうちに出る。
お菓子代が節約できる。
早桶は漬物樽で間に合わせて荒縄で括って棒に吊るし私が担ぐ。
問題は片っ方を担ぐ人がいない。
オヤジすかさず「息子、心配するな、片棒は俺が担ぐ」。
お後がよろしいようで。

津田梅子がアメリカから帰ってメソジスト教会の経営する学校で教えたときの感想。先生はミッショナリー、アメリカ人だ。
(その学校は)、百五十人の生徒を入れる寄宿舎、講堂、食堂、教室などの他に先生用の五家族の入れる三棟の家屋があります。この教員用の家は、それだけで生徒のためのものより費用がかかっているのです。全部がまとめてアメリカに報告されてしまうのですが、そのお金の大部分は先生のためのものなのです。(略)宗教の話をソフトに話したり、パンフレットを配ったりするとき、彼らの良心の妨げにならないのでしょうか。(大庭みな子「津田梅子」から)
NOVAの社長室の豪華ぶり、正確な名前は忘れたが似た名前のマンションだったかの女性経営者の自宅の放埓なぜいたくさ、高官たちの豪遊、不祥事を起こした経営者の法外な報酬、、。
梅子が生きていればさぞかし怒髪天をつくことだろう。

分相応、程のよさって? (SD3)_e0016828_20323186.jpg不祥事を起こしたからそういうことが白日の下に曝されるけれどそういう豪奢とか目を剥くような多額の報酬はちっとも珍しいことではないのだろう。
ナンセ、日本の累進課税は経営者のやる気を殺ぐから、という理由で税制改革を進めているのだから、並外れた待遇を恥じるなどという感覚はあまりないのが現在のリーダーたちだ。

「責任」ということを考えると、それぞれの人が精一杯がんばって獲得した報酬や待遇については別に問題はないのじゃないか(倫理的にはともかく)と考える人がいるかもしれない。
梅子が憤慨したミッショナリーだって遠く日本まで来て貧しい子どもたちに教えているのだから感謝こそすれ責任を果たしていないなどと言ったら怒るかもしれない。

分相応、程のよさって? (SD3)_e0016828_20332342.jpgしかし、俺は敢えて言いたい。
分不相応に高額な報酬や豪華な環境を享受することはトップとしては責任を果たしたとはいえない。
ミッショナリーの先生たちは自分達の取り分を減らし住宅を質素にして、
その分を生徒に必要な費用に回すべきだ。
もっと多くの生徒を教えることが出来たのにと考えれば
ミッションを果たしたとは云えないだろう。
社長が使う金を節約すればもっと人を雇えるかもしれない。
社員の教育・研修に使えるかもしれない。
そういうことがお客様にとってその会社をより魅力的な会社にする。
それは社員に戻ってくる。

「責任者を出せ!」(SD)というカテゴリーを作ったときはいくらでも責任論を展開できると思ったけれど、これが意外に難しい。
論点が多すぎるし”考え方””視点”を変えると議論が拡がって収拾がつかない。
そこで議論の整合性にあまりこだわらずに時々の感想を書いていこうと思う。
責任を論じる場合、誰が責任者か?と考えると(最終的にはそれが目的なのだが)何も云えなくなりそうなので、
とりあえず「こんな奴は責任を果たしたとは云えない」という「こんな奴」を挙げてみた。
それが己の欲望を抑えることが出来ない奴、つまり平気で高額の報酬を手にするトップだ。

分相応、程のよさって? (SD3)_e0016828_20345473.jpg難しいのは、それを判断する基準はないということだ。
がんばってトップになり会社の運命に責任を負っているのだからそれ相応の待遇は必要だ。
その”それ相応”を誰が判断するか?
社員の平均賃金の3倍を超える報酬は違法とする、なんてワケにはいかないし、トップのやることに文句をいう部下も少ないし、経営者同士は同盟関係にあるから他所のことに口出しはしない。
むしろアイツがあんなに貰ってるなら俺も、だ。
俺は貰いすぎている、と考えている人は少ないだろうな。
特に仕事もろくにやらない奴ほどモットモットだ。

やはり責任論は難しい。
されど、貰いすぎは無責任、自戒し、大方の納得を得られる待遇に甘んじる節度が責任者には求められる。

写真、上から神田・まつや「もりそば」700円、新宿・水山「釜揚げちゃんぽん」680円、うまい。
下北沢・丸安「野菜そば」750円。
いずれも良くお世話になるメニューです。
Commented by ginsuisen at 2007-10-31 23:39
分相応って大事ですよね、それにしてもお葬式というのは、なぜにきちんとお寺へのお金がクリアに決まってないのでしょう。わからずになんども住職に聞いてしまったら、あとで叱られました。そういうことは仏に仕えている人は答えないのだとか。お手盛が生きている世界、あまりにも多すぎますね。麺メニュー、どれもみんな美味しそう。ちゃんぽんに1票かな。
Commented by きとら at 2007-11-01 00:28 x
 研究者のモチベーションは金ではないようです。ビジネスマンも官僚も、金より仕事そのもののはずなんですがねぇ。
 それに、ちゃんとした経営者なら私財をなげうっても従業員の生活を守るのが本当だと思うのですが、世の中、特に上の階層、おかしくなってますねぇ。
Commented by saheizi-inokori at 2007-11-01 07:48
ginsuisenさん、私のお坊さんは平気でお金のことを話してくれます。当たり前ですよね。
「お気持ち」でなんていってるんだったらほんとに気持ちだけにしたらいいです。
Commented by saheizi-inokori at 2007-11-01 07:53
きとら さん、特に二代目、三代目という苦労知らずが公私混同して無茶をするようですね。またはひたすら遊泳術でのし上がって来たような人。今までの付けを取りかえそうとする。
Commented by sakura at 2007-11-01 10:34 x
毎朝、毎朝驚くニュースばかり、、、
開いた口がふさがらない・・・
Commented by antsuan at 2007-11-01 12:41
有限責任と無限責任。本来、株式会社は有限責任であり最終的には株主が責任を被ってお終いなのですが、日本の株式会社では代表取締役が連帯責任として個人補償をしています。つまり無限責任です。
政治家や役人は役職を辞めれば責任はなくなりますが、武士は切腹と云う無限責任を負っていました。この無限責任に相応な報酬とはどれぐらいなのでしょうね。
もちろん、私は佐平次さんの意見に大賛成です。
Commented by saheizi-inokori at 2007-11-01 15:04
sakuraさん、口を開きっぱなし、かくして入れ歯直しに歯医者通いです。
Commented by saheizi-inokori at 2007-11-01 15:06
antsuanさん、3倍は低いですか?一概には言えないとは思うけれど。
政治家は辞めても責任はなくならないのではないでしょうか。
まして辞めない人はなおさら。
Commented by sakura at 2007-11-01 17:19 x
saheiziさん。
明日 丁度 歯医者さん行き!
行ってきま~す。毎月の検査ですけど・・
Commented by ume at 2007-11-01 23:05 x
飼い犬の名前は今は「ウメ」ですが、元々は「梅子」でした。津田梅子の聡明さを受け継いでもらいたいとの思いがありましたが、見事に期待を裏切りました。ちなみにH.Nのumeは「ウメ」からもらいました。
Commented by saheizi-inokori at 2007-11-02 07:57
sakuraさん、毎月検査ってエライなあ。歯医者嫌いには考えられないです。
Commented by saheizi-inokori at 2007-11-02 07:58
ume さん、この本にはアメリカ人が「イヌ」と言う名前の犬とか「ねこ」となづけて猫を飼う話もでてきますよ。
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by saheizi-inokori | 2007-10-31 23:23 | 責任者を出せ! | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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