3人のお爺ちゃんの生き方、逝き方

今朝は久しぶりに8時過ぎにオフイスに着いた。
3人目に着いた。
前の会社で7時半頃に出勤していた、あの空気を思い出してちょっと気持ちがいい。

昼に「○○さんのお別れ会」。
大ホテルの大会場に一杯の参会者、屋台が出てわ~わ~いって食べたり飲んだりしていた。
当人は写真になっちゃって、だから表情を変えることもなく笑っている。
この費用は故人がエラかった会社負担である。
俺は自分が愛して心血を注いだ会社にこんなことをされたら化けて出るだろうなあ。
社員たちの要望があってもお金がなくてかなえてあげられなかったことがたくさんあるもの。

3人のお爺ちゃんの生き方、逝き方_e0016828_20244283.jpg先日、一枚の葉書がきた。
前にここにも書いた俺のもっとも敬愛する先輩の訃報だ。
簡単な印刷の文面に奥様が添え書きで
病室で気分のいい日は
よく昔の歌を歌っていました。
望んでいたようにひっそりと逝きました。
と書いてある。
乱れのない美しいペン書きで、すぐに昔お宅にお邪魔したときの奥様の笑顔を思い出した。
そのお宅でいつまでも文部省唱歌を歌って帰ろうとしない俺を見守ってくださった笑顔を。
社会的には相当な地位にあった方だが誰にも知らせないで近親者だけの葬式をしたようで49日を過ぎての葉書だ。
香典など一切お断りという意味の文章を読んで故人と一緒に働いていたときのエピソードが蘇ってきた。
当時、社内でお歳暮や中元を上司に贈る風習が盛んだった。
それを辞めさせようと、贈り物返送作戦をやったのだ。
市内のデパートに聞いたら受け取らないといえばデパートの負担で贈り主に戻してくれるとのこと。
社内のいろんな会議でそれを徹底した。
いろいろきれいごとをいうよりそういう具体的なことをちゃんとやるのが大事なんだよ。
増収だとか安全だとか職場管理だとか大抵の会議でエライさんが言いそうなことをまったく言わず
皆さん、ご苦労様
上の人に使うお金があったらその余裕で部下達と楽しいお酒を呑んでください。
としか言わなかったなあ。
ゴルフにも連れて行ってくださったがモチロン手銭。

どちらの先輩にも、思い出が山ほどあって、思い出している限りはその人は死んだことにならないと自分に言いきかせても、やはりどうしようもない寂しさを感じる。
はっきりと何かが失われていったことを感じる。
懐かしい人が亡くなった、ということばかりではなく、大きな大きな何かだ。

俺は献花だけして直ぐに会社に戻った。
ある幹部と話をしたがじれったい。
困難にぶち当たる前から困難だからやらないみたいなことをいうのだ。
亡くなった先輩と俺は困難なんて考えもしなかった。
すべきことは何か、ということしか考えなかった。

疲れて帰りに寄った寿司屋、初めての店。
「鰹のタタキ」(上の写真・赤いのは西洋唐辛子)「しめさば」(カラシで食べると旨い。2枚食べた後の写真)でアッタカイのを一本。

3人のお爺ちゃんの生き方、逝き方_e0016828_2025113.jpg最近飲み過ぎの動き過ぎだから今日は軽くと思って「握って」と頼んだら
女将が親方に「今日Mさん誕生日なんだって」
「二人でやるのかい?」
さっきから配達なんだろう
酢の物二つとか作っている。
「なんかないかねー」
女将は誕生日の”気持ち”を考えているみたい。
うーん、腕組していた親方が造ったのは刺身の盛り合わせ。
「おい、魚の説明してやれよ」職人に言う。

「幾つの方ですか?」思わず尋ねた俺。
多分老夫婦なんだろうと思った。
「70~?幾つだろう?」店の中でいろんな意見があって結論は78。
「そうなんです。中学生のお孫さんと二人暮らし、良く来て下さるんです」
えっ!孫?
「お母さんが亡くなってね。」

お爺ちゃん!長生きするんだよ!(当人が一番それを祈っているだろう)。
俺までお爺ちゃんに誕生祝いを上げたくなった。
そんなわけで「もう一本!」
Commented by sakura at 2007-10-30 22:25 x
最近は近親者だけでお葬式を済ませお香典も一切お断り
のところが多いですね。
saheijiさんは生真面目な所がおありなのですね。
わざわざお金出してお昼を召し上がらなくってもいいのに、
と私は思いますので 一言。
ホテルで 幹部の方とお話されたのなら、じれったい。なんて
言わずに先輩のお話をなされば良かったのにと思いますが、、
<亡くなった先輩と俺は困難なんて考えもしなかった>
こういう事を話してあげたほうが先輩もお喜びではありませんか?
それが 偲ぶ会の趣旨ではないでしょうか・・・

このコメント一寸送信するのを考えましたが、、
思った事を言っても怒られないsaheiiziさんだろうと思って、、
失礼な言い方でしたら ごめんなさいませ。

Commented by きとら at 2007-10-30 23:47 x
>すべきことは何か、ということしか考えなかった。
 
 高杉良『亡国から再生へ』にありますが、城山三郎が高杉さんに、「使命感や志というのは難しいことではない。為すべきことを成すの一点に尽きる」と言ったそうです。
 為すべきことを成す、はその通りですが、難しいことではない、というのはどうでしょうか。少なくとも我々凡人には難しいですよ。ヒーローにもドンキホーテにもなれないのが普通です。庶民は庶民なりに為すべきことをしている人も少なくありませんが、現実は一介の無力な庶民にすぎず、しかし何らかの理想を持たざるを得ない庶民にとっては、回りは壁だらけですよ。勿論、自身の怠惰怯懦もありますが。

Commented by saheizi-inokori at 2007-10-31 07:53
sakuraさん、ありがとうございます。
お昼は私のわがままです。素直じゃないのです。
先輩そのものの話はしませんでしたが、その人の責任と言うこと、部下たちの思い、といったことについて1時間近く話しました。
少し目に光が出てきましたが、、。
長い人生をそうやって生きてくると年をとってから新しい生き方をするのがなかなか大変です。今まで回りもそういう人が多くて相互援助協定みたいなものだったのでしょうね。
記事に書いたように先輩を偲んだのでいつもより私も頑張りましたよ^^。
Commented by saheizi-inokori at 2007-10-31 08:02
きとら さん、高杉さんの本を読んではいませんが、城山さんの云ってることは「志という言葉の内容はそんなに高度な難しいことを指しているのではなくもっと身近なものだ」ということなのではないでしょうか。実際にそういう志を貫くことには現実面でいろんな障害や邪魔が入ってくるかもしれませんが。
壁だらけでも志を忘れずにいつかはやってやろうと前進し続ける。またはそのことをいつも考えている。
そういうところから案外事態は変化することが多いようにも思います。問題は本来給料の内に入っていて現実にやろうとすれば出来るはずなのに困難を言い立ててやろうとしない、そういうやからが同盟を作ってやる気のある人たちの壁になっていることです。
私は本当はもうそういうのは見て見ぬ振りをすべき立場なのかもしれません。今まで言い過ぎたしやり過ぎたし。もう静かにしてろ、ということなのかとも思う。でも、、なのです。
Commented by shimamelon at 2007-10-31 08:26
化けてでるだろうなぁという箇所、なんか共感できるような、なんか落語みたいですね。「故人のために」という周囲の人の大方賛成を狙った線で実施されて、「ちげーよ!」と。
その先輩の方の高潔さ。うらやましいですね。
理想像がはっきりと示すことでき、現実的に行動できて、手段で人を傷つけない。
私もなれるだろうか、これから。
(なるように努力するんだよ、ってことでしょうかね)
Commented by みい at 2007-10-31 08:57 x
奥様の添え書きいいですね。saheiziさんの敬愛する先輩ご夫婦のお人柄がよく解ります^^ そういう先輩に出会えるだけで幸せですよね。うらやましいですよ。
これからも、変わらぬsaheiziさんでいてください。

そのおじいちゃんにわたしからも「お誕生日オメデトウ!」
Commented by tona at 2007-10-31 09:01 x
49日を過ぎてから葉書が届いたという方の生き方に共鳴します。
我が夫のときそのようにやってくれと、今から遺書を書くと言っています。
夫もやめて3年過ぎましたが、まだ繁く直接関係ない方の訃報が届き、葬儀に足を向けていますので、私自身は夫の意志に共感しています。戒名もいらないと極端でもあります。
まあ、そういうものの、順序が逆ということもありますので、娘にも伝えておきました。
Commented by saheizi-inokori at 2007-10-31 10:44
shimamelonさん、落語といえばケチで一代を築いた旦那が三人の息子の誰に身代を譲ろうかと「俺が死んだらどういう弔いをやるか?」ということを聞く噺があります。
上のふたりがばかばかしく派手な葬式を言うのに対して末っ子が菜漬けの樽に入れて自分が担ぐ、でも後棒がいない、というので旦那が「息子や、心配するな、片棒は俺が担ぐ」というサゲ。
ナンたっけなあ、題名。
Commented by saheizi-inokori at 2007-10-31 10:46
みい さん、御祖父さんと坊やの誕生日、どんな会話があったのかなあ。親方心づくしの刺身をうまいうまいと食べたんだろうなあ、と思いながらもう一本呑みましたよ。
Commented by saheizi-inokori at 2007-10-31 10:50
tonaさん、娘さんがどう思うかということもあるんでしょうね。
葬儀は生き残った人のセレモニーですから。
わが豚児たちはどうするのか?希望だけは言っておきましょう。
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by saheizi-inokori | 2007-10-30 20:48 | よしなしごと | Trackback | Comments(10)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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