玲瓏 近藤乾之助の仕舞い 「万作を観る会」(国立能楽堂)
2007年 10月 19日
いつもより能楽堂が華やいでいる。
若い女性の来場が多いのだ。
さては萬斎サマ(呼び捨てなんかとんでもない)。
狂言「昆布売り」
家来がいない大名・石田幸雄が通りがかりの昆布売り・野村遼太を脅して刀持ちにする。
威張り散らす大名に腹をたてた昆布売りが持った刀に物を言わせて大名をいびる。
昆布売りの売り声を浄瑠璃や踊りやいろいろやらせる。
文句をいいながらも結構器用な大名、踊りは手本を踊る昆布売りより弾んでいる。
野村万作の孫、高校二年生太いけれどよく通る声で男っぽい。
能の間狂言の部分だけを取り出し、能のキリの部分を仕舞いとして舞う。
珍しいこころみのようだ。
語り「姨捨」 野村万作
仕舞「姨捨」 近藤乾之助 地謡 當山孝道 亀井保道 大坪喜美雄
語りに続いて仕舞があった。
静かに万作さんが姨捨山のドラマを語り、中腹に哀しみをも吸い込んで照り映えているかのような田毎の月を彷彿とさせる。
近藤さんの舞が素晴らしかった。
玲瓏、すっかり忘れていた言葉を思い出す。
優れた舞の言葉の喚起力。
脇から観ているとシテが空を仰ぐ横顔に煌々と月光が映えているかのようだ。
最後にシテが
狂言「鐘の音」
太郎冠者・野村万作が主・野村万之助に鎌倉に行って「金の値」を調べて来いといわれて
ああ、勘違い!「鐘の音」を聞こうと諸寺を回る。
寿福寺は「じゃごごごごお~ん」、大抵の音。円覚寺は「ぱ~ん」、高い音。極楽寺は鐘を突くのは禁じられているのに強いて突くと「ジャガジャガジャガ、、」、なんと割れ鐘だ。
最後に古都随一の名刹・建長寺、「ご~んごお~んごごごごお~ん」、冴えたよい音だ。
お寺で実際に聞くところと帰って主に報告として真似して見せるところと4つの寺を2回やってみせる。
本物の音と口真似の音、当たり前といえばそうなんだが同じ、なんとなく面白い。
狂言「千切木」
みんなの嫌われ者太郎・野村萬斎は当屋・深田博治の主催する連歌の集まりに八分にされる。腹がおさまらない太郎が歌の会席に乗り込み散々嫌がらせをするものだから逆に太郎冠者・月崎晴夫 立衆・竹山悠樹 破石普照 時田光洋 岡聡史(これだけの人数が揃って歩いたり名乗ったり同じ動作をすることがみていて実に楽しい、滑稽なのだ。レビューダンスにも通じる)にコテンパンにやられてしまう。
だらしなく逃げ帰った夫から事の次第を聞いた妻・高野和憲は”わわしき女房”ナンバーワン。
ナントカして逃げようとする太郎を叱りつけ仕返しに行けと尻を叩く。
「殺されるかも知れない」「構わない」「代表だけやっつければいいと思う」「駄目だ。全部やれ」
最後は力づく。千切木(武器として使う棒)を押し付け背中をどやす。
妻が一緒に行ってくれるといった途端にホットして明るい笑顔になる太郎。
行った先々がいずれも留守と知り突然強そうに「留守じゃなければ手足をもいで腹の上に乗って、、」などとその振りをしてみせる。
やんややんやの妻。
高野の女房、後ろ姿を観ていると本当に夫のだらしなさを口惜しがる”いい女”のようで不思議な色気がある。
笑いながら観ていて落語を思い出した。
太郎が嫌われ者で仲間はずれにされるのは「百人坊主」、酒癖が悪いので長屋恒例の大山参りに外されそうになるが結局大人しくしていると誓って参加したのはいいけれど、、という噺。
弱いだらしのない夫がわわしい女房に叱られたり知恵をつけられていろいろやるというのは落語では常套だ。
特に「穴泥」がこの狂言に重なる。
稼ぎの悪い亭主が「三両の金を都合してくるまでは家にいれないよ」と師走の街に追い出される。
門の開いている屋敷を見つけて入ったら座敷はご馳走が並んで人はいない。
すきっ腹だから膳の刺身で残り酒を飲んでいると可愛い子供がハイハイしてくる。
根が子供好き、「あんよはこちら」なんて一緒に這って遊んでいるうちに非常用に掘ってある穴に落ちてしまう。
坊やの誕生日だから縄付きにしないで逃がしてやりたいからうまく引っ張り出してやってくれと頼んだのが親方、ところが親方不在で代理に登場した”平さん”なる男。
口先は滅法威勢がいいけれどいざとなるとからっきし意気地がない。
穴ん中の男に「入ってきやがれ!おめえの踵に食らいついてやる」だの「金タマァ拳骨で突き上げるぞ」「両足首を持ってぴ~っと股ァ裂いてやる」などと言われるともう駄目だ。
あれマア、落語に夢中になって狂言がお留守になっちゃった。
でも日本人の笑いの流れみたいなものをしっかり感じた。
その流れがしっかりした演者によって受け継がれ表現され今俺が笑ってる。
ほんわかするんだなあ、この笑い。
写真下は下北沢の骨董屋で「スペインの水差し」。
貴婦人の横顔?
若い女性の来場が多いのだ。
さては萬斎サマ(呼び捨てなんかとんでもない)。
狂言「昆布売り」
家来がいない大名・石田幸雄が通りがかりの昆布売り・野村遼太を脅して刀持ちにする。
威張り散らす大名に腹をたてた昆布売りが持った刀に物を言わせて大名をいびる。
昆布売りの売り声を浄瑠璃や踊りやいろいろやらせる。
文句をいいながらも結構器用な大名、踊りは手本を踊る昆布売りより弾んでいる。
野村万作の孫、高校二年生太いけれどよく通る声で男っぽい。
能の間狂言の部分だけを取り出し、能のキリの部分を仕舞いとして舞う。
珍しいこころみのようだ。
語り「姨捨」 野村万作
仕舞「姨捨」 近藤乾之助 地謡 當山孝道 亀井保道 大坪喜美雄
語りに続いて仕舞があった。
静かに万作さんが姨捨山のドラマを語り、中腹に哀しみをも吸い込んで照り映えているかのような田毎の月を彷彿とさせる。
近藤さんの舞が素晴らしかった。
玲瓏、すっかり忘れていた言葉を思い出す。
優れた舞の言葉の喚起力。
脇から観ているとシテが空を仰ぐ横顔に煌々と月光が映えているかのようだ。
最後にシテが
独り捨てられて老女が一瞬時が止まった感じがした。
狂言「鐘の音」
太郎冠者・野村万作が主・野村万之助に鎌倉に行って「金の値」を調べて来いといわれて
ああ、勘違い!「鐘の音」を聞こうと諸寺を回る。
寿福寺は「じゃごごごごお~ん」、大抵の音。円覚寺は「ぱ~ん」、高い音。極楽寺は鐘を突くのは禁じられているのに強いて突くと「ジャガジャガジャガ、、」、なんと割れ鐘だ。
最後に古都随一の名刹・建長寺、「ご~んごお~んごごごごお~ん」、冴えたよい音だ。
お寺で実際に聞くところと帰って主に報告として真似して見せるところと4つの寺を2回やってみせる。
本物の音と口真似の音、当たり前といえばそうなんだが同じ、なんとなく面白い。
狂言「千切木」
みんなの嫌われ者太郎・野村萬斎は当屋・深田博治の主催する連歌の集まりに八分にされる。腹がおさまらない太郎が歌の会席に乗り込み散々嫌がらせをするものだから逆に太郎冠者・月崎晴夫 立衆・竹山悠樹 破石普照 時田光洋 岡聡史(これだけの人数が揃って歩いたり名乗ったり同じ動作をすることがみていて実に楽しい、滑稽なのだ。レビューダンスにも通じる)にコテンパンにやられてしまう。
だらしなく逃げ帰った夫から事の次第を聞いた妻・高野和憲は”わわしき女房”ナンバーワン。
ナントカして逃げようとする太郎を叱りつけ仕返しに行けと尻を叩く。
「殺されるかも知れない」「構わない」「代表だけやっつければいいと思う」「駄目だ。全部やれ」
最後は力づく。千切木(武器として使う棒)を押し付け背中をどやす。
妻が一緒に行ってくれるといった途端にホットして明るい笑顔になる太郎。
行った先々がいずれも留守と知り突然強そうに「留守じゃなければ手足をもいで腹の上に乗って、、」などとその振りをしてみせる。
やんややんやの妻。
高野の女房、後ろ姿を観ていると本当に夫のだらしなさを口惜しがる”いい女”のようで不思議な色気がある。
笑いながら観ていて落語を思い出した。
太郎が嫌われ者で仲間はずれにされるのは「百人坊主」、酒癖が悪いので長屋恒例の大山参りに外されそうになるが結局大人しくしていると誓って参加したのはいいけれど、、という噺。
弱いだらしのない夫がわわしい女房に叱られたり知恵をつけられていろいろやるというのは落語では常套だ。
特に「穴泥」がこの狂言に重なる。
稼ぎの悪い亭主が「三両の金を都合してくるまでは家にいれないよ」と師走の街に追い出される。
門の開いている屋敷を見つけて入ったら座敷はご馳走が並んで人はいない。
すきっ腹だから膳の刺身で残り酒を飲んでいると可愛い子供がハイハイしてくる。
根が子供好き、「あんよはこちら」なんて一緒に這って遊んでいるうちに非常用に掘ってある穴に落ちてしまう。
坊やの誕生日だから縄付きにしないで逃がしてやりたいからうまく引っ張り出してやってくれと頼んだのが親方、ところが親方不在で代理に登場した”平さん”なる男。
口先は滅法威勢がいいけれどいざとなるとからっきし意気地がない。
穴ん中の男に「入ってきやがれ!おめえの踵に食らいついてやる」だの「金タマァ拳骨で突き上げるぞ」「両足首を持ってぴ~っと股ァ裂いてやる」などと言われるともう駄目だ。
あれマア、落語に夢中になって狂言がお留守になっちゃった。
でも日本人の笑いの流れみたいなものをしっかり感じた。
その流れがしっかりした演者によって受け継がれ表現され今俺が笑ってる。
ほんわかするんだなあ、この笑い。
写真下は下北沢の骨董屋で「スペインの水差し」。
貴婦人の横顔?
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ginsuisen
at 2007-10-20 00:27
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その落語・・・おもしろそうですねー。サザエさんにもありますね、確か。ドロボウがタラちゃんと遊ぶ話が。ところで、いつも見ながら思うのですが、あの千切り木。こらしめるとき、みんな本気なのではないかと。厳しそうでしょ、萬斎さんのお稽古。ここぞとばかりやっつけているように見えてしjまいます。これからも狂言と落語の共通話おねがいしまーす。ウン?このテーマ、一冊にまとまるかも。
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saheizi-inokori at 2007-10-20 09:56
ginsuisenさん、この泥棒を戸締りをしてやろうと注意する積りで入り込んでしまって成り行きで穴に落ちたとするのと切羽詰って泥棒をするつもりで入り込んだと噺家によって演出が違います。
落ちは旦那が平さんに3両やるから引っ張り揚げてくれと言うのを聞いて「待ってくれ、3両くれるならこっちからあがっていく」と男がいうのです。
その後どうなったか?想像するしかない。
千切り木はちょっと色っぽい成り行きを想像させました(夫婦の)が八分は続くのでしょうね。
落ちは旦那が平さんに3両やるから引っ張り揚げてくれと言うのを聞いて「待ってくれ、3両くれるならこっちからあがっていく」と男がいうのです。
その後どうなったか?想像するしかない。
千切り木はちょっと色っぽい成り行きを想像させました(夫婦の)が八分は続くのでしょうね。
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ふくよか
at 2007-10-20 10:24
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朝からsaheijさんの落語”穴泥”に可笑しくて笑ってしまいました。一席有り難うございます。 ところでこの水差しなんて優雅な姿をしているのでしょう。ガラス?陶器? ユニークな形、下北沢に見に行こうかなーー。
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saheizi-inokori at 2007-10-20 10:34
ふくよか さん、ガラスです。洗うの大変でしょう?観賞用だね、と言ったら若い主人が「ホント、洗うの苦労しました」ですって。先に買わないとふくよかさんにとられちゃうかな^^。
by saheizi-inokori
| 2007-10-19 23:24
| 能・芝居
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Comments(4)