初秋の気配に怪談の後日談を聴く 落語研究会(国立劇場・小劇場)

少し早く着いたので外のベンチで水を飲んで開場を待っていると吹き抜ける風が涼しいを通り越して寒いくらいだ。
地下鉄”永田町”ってのは”階段長た町”の間違いじゃないかと思うほど長い階段があってそれを一生懸命歩いて登って来たから汗をかいたが直ぐにひいてしまった。

初秋の気配に怪談の後日談を聴く 落語研究会(国立劇場・小劇場)_e0016828_2391664.jpg五街道弥助「うなぎ屋」
真面目で手堅い人だ。どこと言って文句をつけることもないのだがイカンセンわっと来る楽しさがないように思った。
落語協会のプロフィルを見ると趣味欄に「酒をのむこと」とある。
多分本人が書いたと思うが、ちょっと噺家としてはつまらない書き方だ。

春風亭柳朝「大どこの犬」
登場すると「待ってました、6代目」の声がかかる。
今年の3月に真打になって6代目柳朝を襲名したばかり。
一朝に弟子入りしてかばん持ちで来たのがこの落語研究会。
その後前座で何回か来たそうだが
この会の雰囲気は厳しかったです。咳払いなんて許されないようなピーンと張り詰めた空気がありました。
ちょうど咳払いをする客がいたのにかぶせてしれっと言う。

5代目柳朝のことは吉川潮「江戸前の男 春風亭柳朝一代記」(面白い!)で読んだしテープも持っている。
きっぷのいい話しっぷり、江戸っ子の啖呵を聴いていると胸がすく。
6代目は5代目に会ってはいないそうだが、なかなか切れ味のいい爽やかな話し方は先代に通じる。
物怖じしないやんちゃぶりも。
この噺は初めて聴いた犬が主人公の噺。
大阪では小児に小便をさせるときに「シーこいこい」と言うのだそうで、それを知らないとこの噺のサゲが分からない。

柳家花緑「厩火事」
この研究会は20年も来ているが独特の厳しい空気にはなかなか慣れない。そういう意味ではずっと同じお客さんが来ているような気がする。
彼は池袋で小さんが近くに住んでいることもあってときどき池袋の客席にいた、という話をした。
どうもこういう大きなホールでやるのは好きじゃないのかも。
今日も又お祖父さん(先代小さん)ネタをふる。
開き直っているにしてももういい加減にしたらと思う。
まあ、師匠の噂はどの噺家もよくやるけれどね。
22歳で真打になったときにこの落語研究会でやはり「厩火事」をやったという。
花緑はマクラでこの噺のテーマは「縁」だということを先ず言い切る。
志ん生もこの噺のテーマを縁と考えてマクラで出雲の神様が縁結びの作業をするなんとも可笑しな一幕を話している。
髪結いが年下のグータラ亭主の自分に対する心情を試すという深刻な話なのに明るくてお人よしでかなり脳みそのスープが薄い女をシテに据えたから抱腹の噺、俺は大好き。
花緑、最初はモタモタしていたが中盤以降のってきて可愛い女房・お咲の造型に成功していた。
やはり力のある人なんだ。

柳家喬太郎「お菊の皿」
異色の芸です。
マクラから漫画を読んでいるような、吉本かい?と言いそうになるのを危ないところで落語に戻していく。
番町皿屋敷のお菊が毎晩「一枚、二枚、、九枚」とやるのを近所の若い連中が見物に行って、お菊が余りにきれいなので噂になって見物が増えて大変な騒ぎ。
皿の勘定を九枚まで聞くと祟りがあるので六枚くらいで帰ってこなきゃならないと言うのに或る晩十八枚まで勘定する。
「おいおい、皿は九枚しかなかったンじゃないのか」
「いや、明日休むから」
怪談を笑い話にしてしまった円生の十八番。
これを喬太郎は実演入りで青山の殿様がお菊を折檻するところをSM仕立て。
幽霊お菊の実演ショーは落語家喬太郎の司会で前座にフランケンやら世界中の妖怪・お化けをつとめさせ、スポットライトを浴びてアイドルお菊が登場する。
「みんな元気~?」「・・」「声がきこえな~い」。
大笑いだ。

春風亭一朝「抜け雀」
5代目柳朝の一番弟子、6代目柳朝の師匠。
どの宿の客引きも敬遠するような落ちぶれた姿の男を泊めてしまう人のいい宿の亭主。
毎日、朝昼晩に一升づつ飲んでは寝ているばかりの客を怪しんで女房に酒代を貰って来いと言われて恐る恐る催促をすると、果たして一文無し。
前にも一文無しで泊めた職人がかたに置いていった衝立に雀の絵を描いていく。
その雀が朝になると絵から抜け出して外に飛び立ち餌を食べて又絵の中に戻る。
噺は面白いしギャグも多く楽しい噺だ。

人のいい旅館の亭主としっかり者の女房、名人でありながらなぜか貧乏でそれを苦にする風もない絵師。
それぞれの人物がどう造れるかだ。
一朝はどれもうまく描いたが中では亭主が一番ニンに合っているような気がした。
Commented by polarisu at 2007-09-02 19:34 x
2,3日涼しくてほっとしてます。
厩火事と抜け雀は何度か聞いています。噺家さんはどなたでしたか?いつでしたか「ラジオ名人寄席が無くなった」とコメント入れた
ことがありましたが、日曜の午後4時から放送しているのに
きずきました。
時間帯が悪くて聞きそこなってしまいます。
Commented by saheizi-inokori at 2007-09-02 21:04
polarisu さん、名人寄席は故人ばかりでしょう?
もう志ん朝も聴けるのかな。
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by saheizi-inokori | 2007-09-01 23:23 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(2)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori