いつ聴いてもいいね馴染みのギャグ 志ん橋「火焔太鼓」(上野鈴本)

志ん生の十八番、最初っからサゲまで殆ど志ん生の考えたギャグの連続のような噺。
ギャグの連続だから面白い。
誰がやっても受けそうに思うのだが案外やる人がいない。

ギャグってものはただしゃべれば面白いというわけでもない。
それらしき人物がそれらしく喋り受ける相方(といっても落語だからひとりで演じ分けているのだが)との息が合わなきゃどうにもならない。
息というか「間」、だ。
特に昔はそのまんまお客に面白みが伝わるようなギャグも今の客には何でそれが面白い?みたいな受け取られ方をされることも多い。
ますます、間で笑いを取る必要があるのだが、困ったことにはその間というものが今の世には分かって貰えない。

志ん生は骨董が好きでガラクタを買って来ては喜んでいたという。
そういう下地があって「清盛の尿瓶」とか「小野小町が鎮西八郎為朝に書いた手紙」だのあるわけがないから面白いってなものを売っている古道具屋を語るのだから、そして自分で練りに練ったギャグを喋るんだから、その噺は楽しくてしょうがない。

そんなこんなで、名人志ん生のそういう噺をやるのは、だから相当度胸のいることだろう。
息子の志ん朝などにして初めてできたことかもしれない。

いつ聴いてもいいね馴染みのギャグ 志ん橋「火焔太鼓」(上野鈴本)_e0016828_22252371.jpgというわけで志ん朝の弟子、志ん橋がトリでやったこの噺、大熱演、ガンバリました。
志ん生の噺の時に何べん聴いても可笑しなギャグも良かったが、志ん橋(もしかすると志ん朝?今晩確かめてみよう)考案のギャグも面白かった。

古道具屋の女房が亭主の甚兵衛が仕入れてきた火焔太鼓をくさしていう。
そんな汚い太鼓が売れるわけがないよ。あたしとオマイさんが死んじまってもこの店にその太鼓だけは残っているよ。
つまんない?
誰もいなくなった古道具屋に汚い大きな太鼓が座り込んでいる姿ってなんかSF的な不気味なユーモアありませんか?
殿様に太鼓を300両でお買い上げいただいて有頂天になって甚兵衛が帰る道々の独り言。
へ、カカアのやつあ、腹が減ってへそが背中に突き抜けるなんていいやがって、あン畜生、見やがれ、帰って腹いっぱい食わしてやって動けなくして、ほうぼうくすぐってやるから。
志ん生は「くすぐってやる」がなかったと思う。
今風では「動けなくしてやる」だけではインパクトが足りないと言う計算か。
カカアをののしっているようだが、言うことが優しいよね。
大体、現代のダメ男だったら300両も貰えば正直に家に持って帰らないかもしれないね。

志ん生もやったし志ん橋もやって大好きな三大ギャグ。
1・甚兵衛が売らなきゃいけない品物を売らずに家で使っている火鉢を売ってしまって、寒くなると買主の米屋に行ってあたっているので女房がいう。
向こうの米屋の旦那がそう言ってたよ、「なんだか火鉢と甚兵衛さんと一緒に買ったような心持ちがする」って
「う、、さぶ~、こんちは」とかいいながら米屋に上がりこんで火鉢の脇に座り込む甚兵衛さん、可笑しいなあ。
2・家に帰って300両で売れたというのが信じられない女房に金を見せるときのセリフ。
「早くお見せよ」「見せるよ。見せるからてめえ、これを見てぼんやりすンな、ええ?びっくりして座り小便(すわりしょんべん)して馬鹿になっちゃァ承知しねぞ」
3・そして50両づつ、懐から出していく時の夫婦の掛け合いがこの噺のクライマックスだ。
「どうだ、150両だ」
「あァ・・ら・・」
「おい、しっかりしろ、後ろの柱につかまんな、柱へ。ひっくり返(けえ)るから、柱へつかまんなよ」
「こうかい?」
「そうよ、な?ほうらほらほらほら、200両よ」
「あァ・・あァ・・」
「も少し我慢しなよ、え?・・250両だ」
「あァ、ちょいと、オマイさんは商売が上手・・」
要するにこの夫婦、名夫婦だよね。
Commented by 高麗山 at 2007-08-31 01:18 x
久し振りに聞きながら寝ます!

志ん生の「火焔太鼓」
円 生の「居残り佐平次」  お休みなさい。
Commented by saheizi-inokori at 2007-08-31 08:26
高麗山さん、おはようございます。
ゆうべ、志ん朝の火焔太鼓を探したけれど見つからないので志ん生を聴いて寝ました。何べん聴いてもいいですね。
Commented by sakura at 2007-08-31 21:46 x
居残り佐平次さんってブログに書かれた事
ギャグの連続のような噺。は
全部頭に入っているんですかァ~
コレだけの記事にするの大変ですのに・・
驚きますネェ~
好きこそ物の上手なれ。
Commented by saheizi-inokori at 2007-08-31 23:52
sakuraさん、好きな噺の好きなやりとりは結構覚えていますが、書くときは本で確かめたりもします。
本に載っていればの話ですが。
子供の誕生日を覚えないのにね。
自分の住所も怪しいです。数字って覚えられない。
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by saheizi-inokori | 2007-08-30 22:42 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori