与太郎は高貴の血筋? 池袋演芸場(1)

小三治が出るから前座の時からほぼ満席、やりがいがあるだろうな。
小ぞうが「子褒め」。
「牛褒め」もそうだが、日常生活のなかで慣例化した"褒め言葉""世辞”の決まり文句を薄暗い頭の持ち主がうろ覚えのままに意味も分からず頓珍漢にしゃべって、そのクダクダしさとか約束事の”うそ”を引っ剥がしてみせる。
そんなふうに難しく考えなくても頓珍漢ぶりだけを笑って聴いていればいいのかもしれない。
噺自体が面白くて滑舌の訓練にもなるから前座がよくやる。
同じような薄ぼんやり君が「牛褒め」では与太郎、「子褒め」では熊さんになっている。
そそっかしい間違いをする噺には八五郎もよく出てくる。
三人の性格の違いはどこにあるのだろう?

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与太郎はウスノロというより超越しているんだというようなことを書いていたのは平岡正明だったか?
アンツル(安藤鶴夫)は露伴の「当流人名辞書」によれば与太郎とは「虚言家をいう。遊民の語。江戸語」とあるとか、高野山の古文書に「与太職」という言葉があることを紹介している(「落語国・紳士録」)。
与太職とは何か祈祷のようなことを職としたものらしい。
沖縄で「ユタ」とは女の祈祷師で、喜界島ではこれを「ヨタ」という。
そして「ユタ」とはおしゃべりという意味のユンタ、神がかりの時に体がユタメクというところからきているようだ。
と、これもアンツルの受け売り。
そういえば「ゆんたくの会」という俺と沖縄好きの美女たちでうまいものを食っておしゃべりをする(残念ながら最近あまり開いていない)会があるけど、それが与太郎とつながっていたとはネ。
落語に登場する与太郎はそんな畏れ多い面影はなく単に薄ら薄らした頭のお人好しになっているし、「おい、ヨタ!」などと邪険に扱われることも多い。
しかし、「錦の袈裟」の与太郎は町内の若者たちと吉原に行くときに趣向で錦の褌をして行こうとなったときに坊さんから錦の袈裟を借りてきて快く送り出すようなしっかり者のカミサンがいる。
そればかりか、吉原では殿様と思われて一人でもてまくる。
”ちんわ"なるものの存在があったとはいえ与太郎その人に然るべき風格があったと言わざるを得ない。
町内の間男の噂話を「ワキにいってしゃべっちゃいけねえ」といわれながら噂の当人・豆腐屋の主人(コキュ)の前で「ワキにいってしゃべらない」と約束させた上で「豆腐屋のカミサンが畳屋の半公と浮気している」としゃべるのは単に薄いからとも思えない何かを感じさせる。
アホのふりして、、?

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熊さんは噺によっていろんな性格だ。「百人坊主」では暴れん坊であるばかりか長屋の女房を欺いて丸刈りの坊主にしてしまったり、「粗忽長屋」では行き倒れ死体を抱いて「抱かれているのは確かに俺だけど、抱いている俺はいってえ誰だろう?」とサルトルも真っ青なセリフを吐くし、「子別れ」では酒飲みだが腕のいい大工だ。
ハッつあんも熊さんも大工(でえく)で、子どもの名前をつけてくれと頼まれた裏の坊主がめんどくさがって「八五郎にしとけ」といったら頼みに行った親父が八五郎、それじゃ間違いやすくって困るときいて「じゃあ、熊五郎にでもしとけ」と言ったもんだ。
ナニ、間違いやすいも何も落語国・長屋には八五郎と熊五郎だらけ、糊屋の婆さんが必ずいるってのも不思議だ。
八五郎は「八五郎出世」(「妾馬」)という噺があるようにサムレエ・リャンコになっちゃうんだからテーシタもんだ。

それにしても落語の時代には上に立つものがも少しちゃんとしていたんだろうな。
だから安心して馬鹿にしていられたのだろう。
今じゃ総理、横綱といえども熊さんハッつあんの存在感に及ばない。
噺なら面白いのだけれど現実の方が落語異常(以上の誤植)になっていてシャレにならない。

前座の噺からヨタ話が長くなってしまった。
俺のブログ、つまらんことを長く書きすぎると評判が悪い。
肝心の小三治や扇橋、喜多八などの話は又明日。

写真は谷中・「初の湯」、46度と熱い湯。熊さん、ハッつあんの曾孫のヌード。
下は与太郎、じゃない鬼太郎。
ところで「コキュ」ってフランス語、寝取られ男の意味。
今の若い女性にはパンプスのブランドなんだろうな。
Commented by fuku(ginsuisen) at 2007-08-04 07:46 x
おはようございまーす。ヨタ話、どんどん長く続けてくださいな。
ご自分のブログ、評判なんてどうぞ気になさらないで。楽しみに読書させてもらっていまーす。小三治さんは、どんなお話したのでしょう。
Commented by hanabi_cyu at 2007-08-04 08:14
saheiziさんのテンポのよく小気味よい書き方が、好きです☆色んなことを教えてもらってるし、勉強させてもらってます^^
Commented by saheizi-inokori at 2007-08-04 09:07
fukuさん、hanabi_cyuさん、ではお言葉に甘えて今日もまた書かせていただきます^^。
Commented by mitsuki at 2007-08-04 11:47 x
サムレエ・リャンコって二本差しの事なんですね。
てっきりフランス語だと思ってしまいました。
Commented by molamola-manbow at 2007-08-04 19:19
台湾の博物館もたしか「コキュ」。
ア~ア、saheiziさんに乗せられちまった。
Commented by saheizi-inokori at 2007-08-04 21:13
mitsukiさん、リャンコって二本、二つ、二本差し、侍ですよ。
いー、りゃん、さん、すう、。
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by saheizi-inokori | 2007-08-03 22:55 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(6)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori