白と黒、見事な反転 現代を描く？渋谷・コクーン歌舞伎「三人吉三」

コクーン歌舞伎ー名前は聞いていたが観るのは初めて。
プラチナチケットだろうに回して頂いてアリガタヤアリガタヤ。

「三人吉三」、有名な芝居だが俺は初めて。
幕が挙がると暗い江戸の下町を白い犬が横切る。かわいい本物の犬に観客が沸く。
若い女性が圧倒的。

複雑に入り組んだ因果、一本の刀と百両の金を奪い、無くし、それを又奪われー繰り返すたびに親と子が兄弟妹の仲間が自らは意図せずして傷つけ殺しあう。
因果のシガラミに押し潰されるように勘三郎・和尚吉三は愛する弟と妹の生首を切り取り両手に下げて鬼気迫る大見得を切る。


余りの凄まじさに息を呑んだがー
考えてみれば今の世界・日本でも同じ事がしょっちゅう行われている。
今の人たちにも知らぬ因果が巡っているのか？
そうとでも考えなければ鬼畜の世界だぜ。

能とはあまりにも違う舞台に魅入られつつもイササカ引けてしまったのも現代をストレートに感じたからかもしれない。

二つ目の休憩の後の大詰めーどうやってこの気持ちを収めてくれるのかと思ったらー
真っ白な雪世界。真ん中に太鼓櫓をおいて捕り手たちと三人吉三（お坊吉三・中村橋之助、お嬢吉三・中村福助）の大立ち回り。
アクションとビジュアルで収めてくれた。
最後は客席にもかかる雪の中に三人が真っ白な世界に埋もれる。
はじめ黒い世界に白いちっぽけな犬が一本の線を引いて
最後は悪の三兄弟も全てが真っ白になったのだ。

土左衛門伝吉（笹野高史）が孕み犬を殺した祟りが戌歳生まれのおとせ（中村七之助・休憩時間のロビーで女性客たちが挨拶代わりに、「七之助、きれいねえ」）と十三郎（中村勘太郎）の畜生道につながり二人の生首になったのさ。

そしてカーテンコール、二度三度と洒落た演出で、白犬も登場して、最後は笑いで生首の陰惨を消してくれた。
串田和美演出・美術。