割り箸こそ森の味方 田中淳夫「割り箸はもったいない?ー食卓から見た森林問題」(ちくま新書)

マイ箸運動というのがある。割り箸は資源の無駄使い、森林破壊、環境破壊につながるから自分で塗り箸を持って歩こうという。

恥ずかしながら俺もその主旨に賛成でタイに行った時に竹製で袋に入った箸をマイ箸用に買って帰ったこともある。使ってはいないが。

恥ずかしながら、と言うのはそれが無知に起因し、こと志と反し、むしろ森林破壊、資源の無駄遣いにつながっていると言う事をこの本と「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」で知ったからだ。
知ってみればなあんだ当たり前じやないか!と言うような事だ。
マスコミなどの無責任な感情的・情緒的な情報を自分の頭で考える事をしないで鵜呑みにしていた。

割り箸こそ森の味方 田中淳夫「割り箸はもったいない?ー食卓から見た森林問題」(ちくま新書)_e0016828_1104738.jpg
日本の森林問題はアジアのそれと違う。
日本の森林は枯れてはいない。十分過ぎるほど生い茂っている。人工植林が主体だ。「過ぎる」と言うのは適切に間伐などを施さないと日当たりが悪くなったり土壌が劣化して大水になると流されてしまう。

人工の森林は天然の森林よりも環境保護の見地からは優れていることが多い。
かつては林業は間伐によって得られる木材などを商品として利益を挙げ、それが森林の健全な成長に必要な事でもあった。
言ってみれば森林の保護育成過程で得られた”副産物”が一本の大杉を育てたのだ。
割り箸もその中のわずかな副産物だった。
ところがプラスティックなどの素材の開発や外材の進出が副産物の出番を奪った。

百年かかって見事な杉になってもそれだけの販売では林業は成り立たないのだ。
割り箸などは端材商品の最後の砦であり日本の林業のためには守らなければならない。

一方マイ箸にも問題は多い。
衛生的に、消毒などに使う費用を考えれば本当に割り箸の方が”もったいない”と言えるのか?など、、。

中国などの海外生産の割り箸にしても、木材の消費量全体からみたら誤差の範囲に収まるほどの量しか使っていない。

国内には割り箸を作ることで生計を立てている人もいて地域経済を支えていた。

環境問題を使い捨てはもったいない、というようなナイーブな視点だけで捉えると木を見て森を見ないことにもなりかねない。
”賢く”ならなければ。
Commented by tenjin95 at 2007-06-28 09:57 x
> 管理人様
本当に、御指摘の通りでありまして、拙僧の寺も宮城県栗原市という山間にありますが、マイ箸運動などという無知によって、林業への打撃が生まれてきます。御指摘のように、林業とはただ植えているだけではなく、新陳代謝を図らねばなりません。そのためにも、余計な木は間引きして、そして不要な木を受け入れる市場を形成しなくてはなりません。でないと、間引きしても燃やすくらいしか意味はなく、これこそまさに温暖化。そういうことで、箸一膳でガタガタいうよりも、山を守るために何をしなくてはならないのかを考える方がよほど大事だと思うんですね・・・
Commented by molamola-manbow at 2007-06-28 11:41
朝刊の話と一字一句違わないことを、吐き続けているコメンテーターが10chにいる。胸元から箸箱出して、嬉しそうに語っていたときから随分経つのに、いまだ新聞を読み続けてますね~。

tenjinの和尚さんのおっしゃる通り。目立っちゃいけない藤蔦が今春は山肌でやけに目立った。
蔦と雑草で荒れ放題の里山に、空き缶がポンポン放り込まれる。
どうかなっちゃてます。

Commented by kazemachi-maigo at 2007-06-28 14:39
母の里の山は、かつて緑いっぱいで、祖父が農業と兼ねて林業もやっていました。
祖父は、伐採したら、必ず植林もしなくてはならんと言って実行していました。
植えたばかりの木が、一人前になるのは祖父から見て孫の時代です。
そうやって、次の次の世代のために木を植える。
だから、山は一律の緑のように見えて、実は明日切り時の木、あと10年後の木、20年後の木というように、ばらばらに生育しているのです。
ゆえに、そのばらばらを保つことは、適度に間引かれた環境を保つことでもあります。
しかし、今、故郷の山は部分的な禿山状態です。
伐採してお金にしたあと、誰も植えないから。
そして、大雨の後がけ崩れが起きます。
クマなどの山の獣たちが、エサを求めて里まで下り、畑を荒らしたり、民家に押し入ったりします。

しかし、植林しない人にもそれぞれの切羽詰った事情もあり、その是非を外野が一律に語ることは難しいです。
若者のいない過疎の現状もあります。
自然を守ることは大切ですが、目先の割り箸だけにとらわれて欲しくないと思っています。
Commented by kazemachi-maigo at 2007-06-28 14:50
追加です。すみません。
私は、スーパーの袋が余るので、マイバッグを持ち歩いていますが、知人には、このスーパーの袋を作って生計を立てている人もいます。
これから、ますますマイバッグは盛んになり、環境に優しいものらがまつり上げられることになるでしょう。
私も温暖化や環境破壊はしてほしくないです。
でも、知人にも安定した生活をしてほしいです。
この矛盾とジレンマを抱えて、私は毎日マイバッグを使っているのです。
明らかに身体に有害なたばこ、騒音や治安に問題を残す米軍基地、けれどもそれらで生活の糧を得ている人をどうするのか。
そこに解決が見えぬまま、私たちはテレビや書籍の言葉に右往左往しているのです。
Commented by ume at 2007-06-28 19:46 x
上のコメントで言っているとおり、環境問題に限らず、何事も多面的に検証しないといろいろと弊害がでてくる場合がある。かといって、「懸案」をそのままにしておいては前進しない。どこかで見切らなければならい時が来る。
先日、安吾ゆかりの地、松之山(現十日町市)にあるブナ林を散策してきた。「美人林」と命名されているくらいだから、整備が行き届いた美しいブナ林です。ところが、このように整備された林は果たして本来の意味での「自然の再生能力」を発揮できるのか、と疑問をもった。特に、ブナの原生林は「朽ちては生まれ、朽ちては生まれ」の歴史を築いてきたはずだ。ブナは、元々植林する木ではない。「迷惑はかけない。けど、放っておく」が人間とブナが共存するためのルールだった。
Commented by ちゃめ at 2007-06-28 22:54 x
 ご無沙汰で~す。
「マイ箸」については、私も違和感がありますね~。
 間伐を含む森林の手入れはとても重要ですね。
 手入れしている山とそうでない山は、全く様相が異なります。
 山地の保全は、それが持つ経済的価値を考えても、水資源保全の価値を考えても、公的資金を注ぎ込んでも行う価値があると思います。
Commented by ちゃめ at 2007-06-28 22:57 x
 ご注進申し上げたい事がありますので、追記させていただきます。
「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」の作者のページを拝見しました。
http://www.toyokeizai.net/online/magazine/story02/index.php?kiji_no=34
 残念ながら彼も大衆イメージ操作を図る者の一人と判断せざるを得ません。
「地球が温暖化しても海水面はあまり上がらない」と先生は仰っていますが、IPCCの報告書を読むと、現時点で温室効果ガスの排出を止めても、地球の温暖化は止められないそうです。
 そして温暖化の結果として、海水面は上昇するそうです。
 ただし、それは2100年以降に顕著となるそうです。
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/index.html

 IPCCの報告書には「地球が温暖化しても海水面はあまり上がらない」とは、どこにも書いていません。
 それをこの先生は「IPCCの報告を忠実に転記しただけなのです」として、「目先の安心」を大衆にちらつかせています。
追記:
 縄文海進と呼ばれる地質学的イベントが存在しますが、この時の気温は今よりも1~2℃高く、海水準は3~5m高かったそうです。
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-28 23:01
tenjin95さん、どうしてこういう間違いが正されないのか、既得権益、マイ箸によって利する人たちがいるからかもしれません。
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-28 23:04
molamola-manbowさん、環境問題がフアッションになって、マイ箸運動はそのブランド化しているのかもしれません。
俺って環境問題にも理解があるいい奴なんだ、というシンボル。
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-28 23:07
kazemachi-maigoさん、見た目にきれいでも今の日本の森は「緑の砂漠」となっているところが多いのだそうです。
それとレジ袋も本当は大して意味が無いという話も聞きます。
どうせ使えない成分を使っているんだとか。
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-28 23:10
ume さん、そうなんですか。ブナはほっとく方がいいのですか。本書では森林は人手で植林し管理した方が優れたものになるというのですが、、。ブナは例外ですか?
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-28 23:15
ちゃめさん、有難うございます。
今私は温暖化とCO2の関係は本当に意味があるのか、とか温暖化したら海水面は上昇するのか、等についてももう一度きちんと勉強するべきだと思いはじめました。
IPCCの報告書自体が信じられないのかも知れない。
ちょっと一介の市民には手に負えないような気がします。
Commented by ちゃめ at 2007-06-29 02:36 x
 こんばんは~。
 ややこしいコメントを残してしまってスイマセン。
 私もかなり気になってしまったので、IPCCの報告書について、ちょっと投稿を書きました。
http://kamimura4401.blogspot.com/2007/06/ipcc-wg1-ar4-report.html
 参考にしてくだされば、嬉しいです。 :)
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-29 08:24
ちゃめさん、たびたび有難うございます。お示しの記事を拝見しました。池田清彦「環境問題のウソ」を読んでいます。武田氏の論に似ています。幅のある予測のどれを信用するのか、なんだか頭が痛くなります。”不都合な真実”は何なのか。もう少しゆっくり頭をクリアにして考えなくちゃ、それにしても理解力が無くなって来ました。
もともとない?^^。
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by saheizi-inokori | 2007-06-28 01:44 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(14)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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