当今「押売り」のいない訳 佐藤愛子「今は昔のこんなこと」(文春新書)

盥ー若い人、この字が読めますか?
書くとなると、俺も最初から覚えていない。
タライ、産湯に使い、洗濯をし、行水に欠かせず、西瓜やラムネを冷やした。
あれだけ不可欠の道具だったのに「カアサン僕のあの水浴びしたタライどうしたでしょうね?」。
「タライ回し」の語源、これも分からなくなってきた。

「居候」「腰巻」「アッパッパ」「人絹」「弊衣破帽」「良妻賢母」「乳当て」「腎虚」、、36の言葉を選んでその言葉が生活の中に生きていた様を懐かしむ。意味どころか言葉そのものすら無くなりつつある当世のアリヨウを冷やかし嘆く。

当今「押売り」のいない訳 佐藤愛子「今は昔のこんなこと」(文春新書)_e0016828_21532184.jpg「親孝行」がしっかり勉強して良い大学に進み大会社に就職することになっている社会もあると慨嘆しきり。
「あーらいやだ、オホホホホ」も選ばれている。
口もとの締まりのなさはたしなみのなさ、つつしみのなさを計るバロメーターのようになっていて、それゆえにこそ笑う時は大口を開けずにホホホと笑ったのである。(略)
敗戦後六十年かけて日本女性は女らしさ、女意識をかなぐり捨てたのだなアと改めて感慨に浸る。大口開けて笑うばかりか、街なかでヘソを開示して得意顔で歩いても、今はもう誰も咎めはしないのである。女として隠すべきところを次々に捨てていくのは女性解放の証左だとしたら、その行先はどうなる?
いつもの毒舌、ユーモア、いささか”お品のない″下ネタも連発。
懐かしい言葉で喚起されるセピア色の思い出を楽しんだと言いたいところだが、ちょっと今回はおおらかな笑いが少ないような気もする。
愛子さんは居酒屋独り酒の時の”好き友”だから望むところも多いのだ。

「褌」の項の越中褌などのお噂はsakuraasakoさんの「カマトト日記」のコメント欄でasakoフアンが延々と繰り広げた褌談義を思い出した。あまり長いのでコメント欄をフンドシと命名したのは俺だった。
「褌を紡ぐ」と、これは確かasakoさん。
お会いしたこともない連中で勝手にフアンクラブを作って、これは今もオフ会で盛り上がっているのに肝心のブログが休止状態なのは淋しい限り。
元気でいるんだろうなasakoさん。
そういえばカマトトも今や死語だなあ。

表題の「押売り」滅亡の訳。
押売りってのはガラガラッと玄関を開けて入ってくる。
昔は玄関の鍵は開いていたんです。
「ピンポ~ン、押売りですが」と言われて解錠するわけがないもんね。
Commented by 高麗山 at 2007-06-24 23:11 x
在りし日の、三島由紀夫は”産湯を遣った時、盥の内側が朱塗り”であったとことを憶えていると断言したことを思い出す。
普通の人間でいれば今頃は、ひょっとすれば”好好爺”であったかも?。
これも遠い過去、今は国文学者の名誉教授が、朝の茶飲み話時、同僚に今日は「腎虚でね!」と言われて「キョトン」としていたことを思い出す。その時、高麗山彼等より十歳年下の美青年、ませてたのかな?
Commented by shimamelon at 2007-06-25 07:58
私も先日職場で「丁々発止」が伝わらなくて驚きました。相手は30代後半なんですが、ナニ?チョーチョー?みたいな反応でした。別に語彙が特別多いわけではないと思うんですけど、最近はいかに平易な言葉を使うか考えます。エラソーなコメントだな、我ながら。すみませんなぁ。
さて、褌。私の祖父もしていてそれなりに思い入れはありますが、米原万理さんも相当な思い入れがありましたよね。父が海外出張するのに、褌をどうするか?ホテルの人に怪しまれないか?と家人が心配する。しかし、すでに小学生だった万理さんの同級生もなんだかわからなかったのに・・・というくだりで、だめだめ、わらっちゃう。
佐藤愛子さんは、昔昔「娘と・・」シリーズを読んでいました。佐藤愛子さんが「何もないところを好み」、九州だかの大きい橋をふらふら歩くだけの正月を送ったり、襟裳岬だかに別荘買って馬に暴走されたりしてるところが、とても好きだった。これも読んでみたいなぁ。
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-25 08:27
高麗山さん、三島の話も書いてあります。きらきら水面が光っていたなんて。腎虚も死語、でしょうね。あぶらぎった爺さんが多い。
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-25 08:31
shimamelonさん、そうです。彼女の北海道生活を書いた随筆とか小説?いいですね。
若者に分からない言葉使うまいと思ったり逆にワザと使いたくなったり、、一応日本語、それも伝えたい日本語ですものね。
侃々諤々、喧々囂々^^。
Commented by molamola-manbow at 2007-06-25 10:13
杉の正目などという由緒正しいものじゃなく、あちこちが凹んだり、曲がったりした金属製のヤツもあった。
いつも夏にお邪魔する下田・田牛海岸の民宿では、凹み、曲がったそいつが、現役で頑張ってる。
水をあける時のジャリッ、あれだけは馴染めません。
Commented by otayori at 2007-06-25 11:30 x
15年前に娘が産湯をつかった盥は、4人のお子さんが使ったもののお下がりでした。
今は私の実家の庭先で、洗濯物の下洗い用に使われています。ちなみに父は洗濯板も使用。(もちろん洗濯機も使っていますよ)

居候、、、今ではそんなものを受け入れる余裕が、心にも空間にもないかもですね。
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-25 12:05
otayori さん、大事に取っておけば値打ちが出るかもしれませんよ^^。
Commented by そら at 2007-06-25 12:18 x
知らない日本語、結構あるんでしょうね~。
下の記事のこんにゃくを「たづな」っていうの、私知らなかったもの(^^;梟さんのお料理、手間がかかっている分、余計においしそう♪)
「たがが外れた」の「たが」って何?という話になったことがあります。
たがって言ったら、おけを止める丸い輪っかでしょう…と、みんな、本気で聞いてるのか、冗談なのか、分かんなかった(^^;)知ってると当然だけど、知らないとホント、分かんないんだよね。
あさこさん、お元気でいらっしゃるといいねっ☆
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-25 13:03
manbowさん、水をあける時のジャリッ、ってわかりませんよ。砂が入っていたって事?
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-25 13:06
そらさん、そうか、タガがね。落語に「たがや」ってのがあるんだけど、それも分からないか。もっとも古典落語は死語、懐メロならぬ懐言葉の宝庫ですね。
この本の中にも懐メロの歌詞が沢山出てきますよ。
歌は世につれ、世は歌につれですものね。
Commented by Fou at 2007-06-25 19:45 x
お久しぶりにお邪魔します。
褌を紡ぐ、ね。
でーて来い、でーて来い、asachan.
盥、金盥、たがの外れた桶、手桶、わが家にはありますよ。たがが外れたのは使わないから、使いたいときには辛抱強くしばらく水を張っておーけ。
金盥は犬のシャンプーなどに役立ちます。もっとも、うちの娘犬は水浴び大嫌いなのでなかなか出番が来ませんが。
Commented by Fou at 2007-06-25 19:55 x
かなだらい、というのは普通は真鍮の洗面器のことでしたね。うちのは真鍮の小さめの盥です。でこぼこしてます。30年ほど前に粗大ゴミの山から拾ってきたものです。
manbowさんの「ジャリッ」という音は風呂場のたたきや庭の土の上で水をあけるときに引くと底がジャリッ、でしょう?
Commented by fumiyoo at 2007-06-25 20:13 x
そんなに、死後になってるんですか?私は旦那と話す時間が長いせいか、そんなに感じませんでした。ふんどしは舅がしていました。生きてれば101歳。明治の男です。私の母も大正4年でしたから、やはり私達の語彙は若い子と違うのでしょうね。アメリカナイズが我々から始まり、今やアメリカナイズと言う言葉も死後になるくらい「日本語」はどうなるんでしょう?想像力のいらない言葉ばかりが大手を振ってはいけません。通じなくても、使って生きたい言葉達・・我々が生きている限り、言い続けましょう。ダメ?
Commented by rinrin at 2007-06-25 20:56 x
なんとなく解っても使わない言葉はたくさんありますね。
盥なんて、私も、頭に浮かぶのはポリの盥です。
佐藤愛子さん、私大好きです。
北上市に、サトウハチロウ記念館があります。
どうしてかというと、文京区のゴタゴタに嫌気がさして、佐藤愛子さんたち遺族が、お父様が、青森(弘前だったかな?)お母様が仙台の出身で、真ん中をとって、岩手の北上にお願いしたそうです。ですから、文京区には1枚の原稿用紙も残らなかったそうです。
楽しいでしょ!佐藤一族らしいですよね。
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-26 00:19
Fou さん、お久しぶりです。褌が呼ぶ懐かしの歌ですね。
かなダライというと私は病気の記憶です。枕元にお湯を張っておいてお医者様の手を洗うのとか気持ち悪くなったときに使う。なんだか胸が痛くなります。
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-26 00:22
fumiyoo さん、言葉が気持ち・心を伝えるものでしたら語彙が減ると言うことはそれだけ伝えるものも減ると言うことだと思いますよ。古典落語や能を観て昔の言葉を聴いた時になんともいえない懐かしさとか世界の広がりを感じる。年上の者は言葉を伝える義務があるように思います。
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-26 00:25
rinrin さん、「血脈」は愛子さんの一大傑作だと思います。佐藤一族はホントに凄いですよ。逆立ちしても真似できない!
Commented by Count_Basie_Band at 2007-06-26 03:55
先日、衣類箱に防虫剤を入れていて「提灯袖」のシャツを数枚発見!
「提灯袖」、ご存じかな?

昨晩の報道番組、「ジキ・バイタイカ」という。システム屋のなれの果てとしては「次期媒体化」は聞き捨てならぬ。
字幕を見たら「磁気媒体化」。
だったら「ジキバイタイ・カ」だろうが。

同じく「ヒ・ホケンシャキロク」は「非保険者記録」に聞こえたが「被保険者記録」だった。
「ヒホケンシャ・キロク」と読め、バカヤロー!
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-26 07:46
提灯袖?多分提灯の形になった袖かと思うのですが、、。
衣類箱といえば茶箱も今はどうなっているのかなあ。引越しをするうちに結局無くなったかもしれない。納戸の中にしまわれているのかも。
Commented by suiryutei at 2007-06-26 08:48
おはようございます。
盛り上がってますね! asakoさんコメント欄のご常連さんたちも。なつかしいです。
Commented by molamola-manbow at 2007-06-26 08:56
Fouさん、その通りです。
コンクリートむき出しの流し台などだとなおさらですけど、砂の上でも土の上でも、水を捨てるときに底がすれる。その時のジャリッ、ジャリジャリ、この音に弱い。
行水に使える大きさ。枕元に持ち込める大きさのヤツなら、底などすらないでしょうが、持ち上がりませんからどうしてもジャリッ。
考えただけだゾクゾク。
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-26 09:46
manbowさん、不思議な”弱点”ですね。私はガラスをこする音や歯医者のドリルの音には弱いのですが、ジャリッねえ。
Commented by saheizi-inokori at 2007-06-26 09:47
suiryuteiさん、おはよう。あのフンドシはどうしたんでしょうね。
すっかり跡形もないから昔を忍ぶよすがもない。
Commented by Fou at 2007-06-26 17:37 x
Hei, manbow!
お久しぶりですね。
音に関して、どうやらご同類のようです。manbowさんのコメントを読みながら総身が毛羽立って、寒くなりました。一息入れるために居間に行って一服。やっと素肌にもどりました。
金属が擦れ合う音が苦手。包丁が研げません。夫に研いでもらうのですが、私の居るところでは研がないで、と頼みます。2年間、夫の不在の間、切れない包丁で我慢しました。今は「えー、砥ぎ屋にござい。包丁の砥ぎはございませんか」と詠いながら回ってくるおじいさんも消えました。
大工さんの鋸、鉋、鑿、etc. 今はみなステンレスの使い捨ての替刃だとご存知ですか。家の修理をしたので近頃知りました。砥ぎ職人がいなくなったそうです。

Commented by saheizi-inokori at 2007-06-26 21:29
なるほど、同類にシテ直ぐに意味が分かったんですね。
寄席の彦六ノコギリ音楽も風前のともし火?あれはステンレスでも鳴るのかな。
Commented by Fou at 2007-06-26 21:42 x
<彦六ノコギリ音楽>?
請、ご教示。
Commented by molamola-manbow at 2007-06-27 06:24
saheiziさん曰くのガラスのこすれる音、あれも嫌いだけど、どうにか我慢できる。
Fouさん、よかった~、ひとりだけなら、どうしようと思ってました。
Commented by Fou at 2007-06-27 10:09 x
manbowさん、
私も、よかった~
「これなら大丈夫でしょう」と息子が新式の包丁シャープナーと言うのを買ってきてくれました。2枚の壁の中に包丁を入れて往復させるだけのもの。1度使ってみましたが、手に伝わってくる感触が頭の中で音に変換されてしまう、ネギが髪の毛くらいに薄く切れるようになったけど、卒倒寸前でした。
包丁研げない女はいっぱいいると思うけど、こういう事情で研げないなんていう人周りにいないので、引け目でした。
何事につけ、同類、仲間がいるのは心強いですものね。
ガラスのこすれる音と普通言われる音は平気ですが、ガラスを切る音はだめ。ガラス切りはやってみたい仕事ですが、手が出ない。
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by saheizi-inokori | 2007-06-24 22:04 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(28)

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