「愚行権」「寛容」 イデオロギーの有効性 佐藤優「国家と神とマルクス」(2)
2007年 06月 17日
昨日紹介した「国家と神とマルクス」の中に次のような言葉がある。
白井との対談で。
白井が「戦後の日本は戦時中の経験から国家の暴力はきわめて危険だと言う健全な感覚を持っていたはずなのに(今それが無くなっているようだ)」という発言を受けて
しかし、やはり問題は残るのだ。
その”範囲”をどのように共通の合意としていくか?
総理の靖国参拝は愚行権の範囲と見ていいのか。
直ぐに具体的な危害は生じないけれど、当該行為を認めているといずれ大きな危害の発生に結びつくと思われるような行為はどうなのか?
特に環境問題、個々人のレベルでは誰にも危害を加えている自覚も知識もないのにそれが集合・集積することが地球破壊につながる。
危害があるか否かの判定は誰がするのか?
悩ましいことだ。
しかし佐藤が言うようなスタンスでコミュニケーションを深めていくことが大事だと思うのだ。
さらに、人々がもっとつつましく生きていくことを”主義”としてもたないと欲望には際限がないから環境問題に見られるように結果的に他人や社会に危害を加えることになってしまう。
他人の行為に寛容であると同時に自分の行為には厳しく自制を加えていくこと。
佐藤がいうように、そういう自制を行うのにはイデオロギーが無ければならないのかもしれない。
死者をも含む”見えない者”との連帯が有効なのだろうか。
ひとりでは闘っていけない、自分を抑えることが出来ないのであるならば。
白井との対談で。
白井が「戦後の日本は戦時中の経験から国家の暴力はきわめて危険だと言う健全な感覚を持っていたはずなのに(今それが無くなっているようだ)」という発言を受けて
健全かどうかはともかく、戦前も異常で、戦後も異常で異常なもののなかでどっちがより少なく害がないかということだと私は考えます。国家の暴力性に対して、効果的に対処できるのは人間のコミュニケーション的行為、それも発話主体の性格について相互に認識できるような小規模のコミュニケーション空間だと思う。顔が見える範囲が限度だと思う。それを超えると、対抗運動にも国家に類似した暴力性が出てくると思います。議論の大枠には共感する。
私は新自由主義に対する違和感がとても強いのですけれど、伝統的自由主義(オールドリベラリズム)の愚行権はとても重要と考えます。各人は、他者や社会全体から見て、愚かな行動をする自由をもちます。愚行権の唯一の例外は他者危害排除の原則です。愚かなことをしてもいい。ただし他人の愚かなことも認めると。多少、迷惑をかけられてもそれは甘受する。ただ、唯一駄目なのは他者に危害を加えることです。この他者危害の範囲をできるだけ狭めることが、国家の暴力性を暴発させない担保になる。
しかし、やはり問題は残るのだ。
その”範囲”をどのように共通の合意としていくか?
総理の靖国参拝は愚行権の範囲と見ていいのか。
直ぐに具体的な危害は生じないけれど、当該行為を認めているといずれ大きな危害の発生に結びつくと思われるような行為はどうなのか?
特に環境問題、個々人のレベルでは誰にも危害を加えている自覚も知識もないのにそれが集合・集積することが地球破壊につながる。
危害があるか否かの判定は誰がするのか?
悩ましいことだ。
しかし佐藤が言うようなスタンスでコミュニケーションを深めていくことが大事だと思うのだ。
さらに、人々がもっとつつましく生きていくことを”主義”としてもたないと欲望には際限がないから環境問題に見られるように結果的に他人や社会に危害を加えることになってしまう。
他人の行為に寛容であると同時に自分の行為には厳しく自制を加えていくこと。
佐藤がいうように、そういう自制を行うのにはイデオロギーが無ければならないのかもしれない。
死者をも含む”見えない者”との連帯が有効なのだろうか。
ひとりでは闘っていけない、自分を抑えることが出来ないのであるならば。
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suiryutei at 2007-06-17 18:06
こんばんは。
佐藤優氏の書いたものでは『自壊する帝国』と、それに去年どこかの雑誌で高橋哲哉『靖国問題』を批判した文章を読みました。
彼の「靖国」論には賛成できませんが、議論の仕方には好感を持ちました。面白い人物ですね。
佐藤優氏の書いたものでは『自壊する帝国』と、それに去年どこかの雑誌で高橋哲哉『靖国問題』を批判した文章を読みました。
彼の「靖国」論には賛成できませんが、議論の仕方には好感を持ちました。面白い人物ですね。
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saheizi-inokori at 2007-06-17 19:26
suiryuteiさん、このほんでも高橋氏の批判があります。敬意を払いつつ。佐藤は靖国を三一独記念館や南京虐殺記念館、ひめゆり記念館などと権利同格的に受け止める多元主義を主張するのですね。きわめて知的な訓練が必要だと思います。そういうイデオロギーを持たないと難しいのかもしれません。
難しくても有効な筋道なのかもしれないと思い始めました。
難しくても有効な筋道なのかもしれないと思い始めました。
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mitsuki
at 2007-06-17 20:26
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この間読んだ雑誌に再生紙は製造の際にCO2を排出するからCO2の削減には効果がないという記事が書いてありまして、驚いてしまいました。
イデオロギーもエコロジーも簡単な答えはなく、柔軟な思考を持つ事が大切なのでしょうか。
イデオロギーもエコロジーも簡単な答えはなく、柔軟な思考を持つ事が大切なのでしょうか。
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saheizi-inokori at 2007-06-17 21:12
mitsuki さん、そうらしいですね。環境問題についての常識にはかなり眉唾な話が多い。しかしだからといって環境問題そのものは存在している。
確かな知識が欲しいですね。
党派的になると物事を固定的に考えて間違いを訂正したり検討しなおしたり出来なくなる恐れがあります。
柔軟な思考、しかも断固とした実行力、自制心、なかなか難しいことですね。
確かな知識が欲しいですね。
党派的になると物事を固定的に考えて間違いを訂正したり検討しなおしたり出来なくなる恐れがあります。
柔軟な思考、しかも断固とした実行力、自制心、なかなか難しいことですね。
exblogまだヘンだ。記事を読み切らないうちに「表示できません」状態になってしまう。
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saheizi-inokori at 2007-06-18 07:57
umeさん、アクセス数も相変わらず無茶苦茶です。早くよくなればいいのですが。
by saheizi-inokori
| 2007-06-17 14:25
| 今週の1冊、又は2・3冊
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