南極でも想定外の事態が進行している アル・ゴア「不都合な真実」（３）

ホッキョククマが登場したなら南極代表は皇帝ペンギンだ。
コロニーで調査している科学者は、１９６０年代以降、コウテイペンギンの数が７０パーセントも減少していることを見出した。
その原因もおそらく地球温暖化だろう。

ペンギンは海氷の上に巣をつくる。
気温が上がって、強い風が吹くと海氷は薄くなってすぐに割れる。
そして海に流れ出す。ペンギンの卵や雛を乗せたまま。

最近、ＮＡＳＡが行った研究によると南極は毎年水量にして３１０億トンの速度で陸氷を失いつつあることがわかった。
南極半島の両岸にラーセンＢ棚氷と呼ばれる縦２４０キロ、横５０キロという巨大な氷の台地がある。
科学者たちは温暖化によって棚氷の表面が溶けても棚氷は１００年は安定していると考えていた。
表面で溶けた水は再び氷の中に入って凍ると言う前提で考えていたのだ。
ところがそれが２００２年１月３１日からの３５日間でこっぱみじんに崩壊してしまった。
溶けた水は真っ直ぐに下へと流れ続け、氷の塊をチーズのように空洞化してしまったのだ。

海上の棚氷がなくなると、その後ろにあった陸上の氷の押さえが無くなってじりじりと移動して海に砕け落ちる。
これも想定外だった。
南極やグリーンランドの陸地の上にある氷が溶けたり海に砕け落ちると海面が上昇する。

左の写真、まるでステーキを焼いたように見えるのはグリーンランド。赤い部分が氷が溶けているところだ。
左から１９９２年、２００２年、２００５年。コンロの火を消さないと真っ黒けになっちゃう！
もし、グリーンランドまたはグリーンランドの半分と南極の半分が溶けたり割れたりして海中に滑り落ちると、世界中の海水面は５．５～６メートル上昇する。
それは世界地図を、描き直さなくてはならなくなることなのだ。

北京とその周辺では２０００万人以上が、上海とその周辺では４０００万人以上が避難しなければならなくなり、カルカッタとバングラデシュでは６０００万人が家を失う。
マンハッタンの世界貿易センター跡地のメモリアル施設は水没する。
それは何を意味するのか？
私たちはテロだけではなく、温暖化という脅威に対して備えるべきだ。