マンハッタン・摩天楼の物語 島田荘司「摩天楼の怪人」
2007年 03月 14日
安藤忠雄が1996年にニューヨークに創った「マンハッタンペントハウス」は奇想天外だ。
古い超高層アパートの最上階にガラスの直方体を突き刺した。
この小説ではアンドウは1969年に1910年製の「セントラル・パークタワー」なる高層アパートの34階にガラスの箱を突き刺したことになっている。
グリーク・リヴァイヴァルとエジプシャン・リヴァイヴァルの折衷という奇態にして素晴らしい摩天楼。
そのガラスの箱が入った部屋の持ち主はアメリカ屈指の舞台女優。
彼女は今や肝臓癌で死を目前にしている。
御手洗潔(コロンビア大学助教授にして名探偵)にこのアパートは謎の塊で幽霊ビルとも呼ばれていると語りそれらの謎解きに挑戦しないかという。
大女優の地歩を固める前の彼女の前に現れたライヴァルたちの相次ぐ自殺?邪魔をする男たちも殺される。
それらは「フアントム」なる彼女を守る謎の怪人の仕業だという。
中でも48年前台風で停電の夜に彼女は34階から1階に下りてある男を殺したと言う。
エレベーターが止まっているのに15分間で下まで降りて殺人を犯したのち再び34階に戻った事になるのだが、どうしてそんなことが出来たのか?彼女はフアントムの力添えによるというが、それは死を前にした幻覚妄想なのだろうか。実行不可能な犯罪だ。
謎解きよりもいくつかの犯罪自体が劇的でわくわくする。
気持ちが悪いはずだが劇中劇みたいで現実感が希薄だから不思議さや道具立てとか舞台装置の面白さを味わえるのだ。
マンハッタン島の摩天楼の歴史。
オーティスのエレベーターと鋼鉄が高層ビルを可能にした。
1908年ガウデイが設計しかかった幻のグランド・ホテル(クライスラービルよりも高いのに十数階しかない円筒形の、壁はみなどこも少しづつ傾いている)。
イクイタブル生命保険会社の36階建てのビルの出現で巨大な日陰ができたことから世界初の高層建築規制法が成立する。
セントラルパークはジャーナリストで詩人のウイリアム・カレン・ブライアントの提案により岩を削り、土を運び、植物を植えて”造られた”のだ。
その公園にドイツ(シラー、ベートーヴェン)、イギリス(シエイクスピア、不思議の国のアリス)、エジプト(クレオパトラの針)、デンマーク(アンデルセン)、、移民の坩堝らしくいろんな国を代表するモニュメントが並べられる。
建築家はいずれ市民たちは空を飛ぶ交通機関で摩天楼を上から見るだろうと上層部にもさまざまな彫刻をする。
ニューヨークの摩天楼の林立が思い出されて独特の都市の”臭い”までたちこめてくるかのようだ。
晴れた日には真っ青な空に抗議をしているかと思えば、雨の日は雲とも霞ともつかぬものに包まれて、なんだかそのまま天まで伸びているのかと思わせる摩天楼。
小説は摩天楼を仰ぎ見、俯瞰し、よじ登り、窓からの景色を楽しみ(その景色を我が物とするための戦い)、、
読む俺も時に尻の辺りがザワザワしたりもする。
本格ミステリとしての謎解きのところはやや不満があるが薀蓄や都市の詩情を楽しんで587ページも苦にならない。
古い超高層アパートの最上階にガラスの直方体を突き刺した。
この小説ではアンドウは1969年に1910年製の「セントラル・パークタワー」なる高層アパートの34階にガラスの箱を突き刺したことになっている。
グリーク・リヴァイヴァルとエジプシャン・リヴァイヴァルの折衷という奇態にして素晴らしい摩天楼。
そのガラスの箱が入った部屋の持ち主はアメリカ屈指の舞台女優。
彼女は今や肝臓癌で死を目前にしている。
御手洗潔(コロンビア大学助教授にして名探偵)にこのアパートは謎の塊で幽霊ビルとも呼ばれていると語りそれらの謎解きに挑戦しないかという。
大女優の地歩を固める前の彼女の前に現れたライヴァルたちの相次ぐ自殺?邪魔をする男たちも殺される。
それらは「フアントム」なる彼女を守る謎の怪人の仕業だという。
中でも48年前台風で停電の夜に彼女は34階から1階に下りてある男を殺したと言う。
エレベーターが止まっているのに15分間で下まで降りて殺人を犯したのち再び34階に戻った事になるのだが、どうしてそんなことが出来たのか?彼女はフアントムの力添えによるというが、それは死を前にした幻覚妄想なのだろうか。実行不可能な犯罪だ。
謎解きよりもいくつかの犯罪自体が劇的でわくわくする。
気持ちが悪いはずだが劇中劇みたいで現実感が希薄だから不思議さや道具立てとか舞台装置の面白さを味わえるのだ。
マンハッタン島の摩天楼の歴史。
オーティスのエレベーターと鋼鉄が高層ビルを可能にした。
1908年ガウデイが設計しかかった幻のグランド・ホテル(クライスラービルよりも高いのに十数階しかない円筒形の、壁はみなどこも少しづつ傾いている)。
イクイタブル生命保険会社の36階建てのビルの出現で巨大な日陰ができたことから世界初の高層建築規制法が成立する。
セントラルパークはジャーナリストで詩人のウイリアム・カレン・ブライアントの提案により岩を削り、土を運び、植物を植えて”造られた”のだ。
その公園にドイツ(シラー、ベートーヴェン)、イギリス(シエイクスピア、不思議の国のアリス)、エジプト(クレオパトラの針)、デンマーク(アンデルセン)、、移民の坩堝らしくいろんな国を代表するモニュメントが並べられる。
建築家はいずれ市民たちは空を飛ぶ交通機関で摩天楼を上から見るだろうと上層部にもさまざまな彫刻をする。
ニューヨークの摩天楼の林立が思い出されて独特の都市の”臭い”までたちこめてくるかのようだ。
晴れた日には真っ青な空に抗議をしているかと思えば、雨の日は雲とも霞ともつかぬものに包まれて、なんだかそのまま天まで伸びているのかと思わせる摩天楼。
小説は摩天楼を仰ぎ見、俯瞰し、よじ登り、窓からの景色を楽しみ(その景色を我が物とするための戦い)、、
読む俺も時に尻の辺りがザワザワしたりもする。
本格ミステリとしての謎解きのところはやや不満があるが薀蓄や都市の詩情を楽しんで587ページも苦にならない。
この本は御手洗ものなのですね。ずっと出ていなかったので油断しました。私は島田荘司では御手洗探偵のシリーズが1番好きなのです。
図書館にあるようなので借ります。ありがとうございました。
図書館にあるようなので借ります。ありがとうございました。
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saheizi-inokori at 2007-03-16 00:43
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kazemachi-maigo at 2007-03-16 13:30
島田荘司、昔のものはほとんど読んでいますが、最近ご無沙汰です。
吉敷シリーズのファンでして、いつか御手洗とのコラボを楽しみにしておりましたが(微妙なニアミスはありましたが)月日の流れを考えると、吉敷刑事が現役かどうかも危ぶまれ、御手洗ももはや日本に活躍の場を持たないようで、残念に思っています。
(最近は、石岡くんと里美ちゃんが活躍中のようですが)
うーん、迷うところです。
吉敷シリーズのファンでして、いつか御手洗とのコラボを楽しみにしておりましたが(微妙なニアミスはありましたが)月日の流れを考えると、吉敷刑事が現役かどうかも危ぶまれ、御手洗ももはや日本に活躍の場を持たないようで、残念に思っています。
(最近は、石岡くんと里美ちゃんが活躍中のようですが)
うーん、迷うところです。
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mmiizzz at 2007-03-16 22:35
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saheizi-inokori at 2007-03-16 23:02
kazemachi-maigosさん、私は島田作品は初めてなのですよ。他も読んで見ようかな。
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saheizi-inokori at 2007-03-16 23:03
mmiizzzさん、あなたも島田フアンのようですね。私は上に書いたとおり、これからです。
お勧めは何ですか?
お勧めは何ですか?
by saheizi-inokori
| 2007-03-14 22:39
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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Comments(6)