如来が教えてくれた 映画「ニキフォル 知られざる天才画家の肖像」
2006年 12月 24日
いつも行く定食屋に飾ってあった円空の薬師如来の写真が変わっていた。
厨房のお父さんに聞いたら「ニキュニキュ・・」の絵だって。「百年くらい前のフインランドかどっかのホームレスみたいな男で最近評価されてきたようです」。
よく聞こえないので「えっ?」、お父さん料理の手を休めて引き出しをゴソゴソやって無造作に折り畳んだ紙を差し出す。
「ニキフォル」映画のチラシだ。
都立写真美術館ホールで、あれ、24日までじゃん。
早速出かけた。
1895年~1968年、確かに生まれたのは百年前だ。
フインランドじゃなくてポーランドの保養地・クリニツアの生まれ。
家がないという意味ではホームレスだが、画家・マリアン・ヴォシンスキ一家のところに勝手に住み込んでマリアンのアトリエを使って毎日3枚くらいの描く。絵筆をなめなめ。
生涯に4万点もの作品を残す。
描いては観光客に売っていた。
言語障害もあり両親のことも明らかではない。
観光客の中に彼の絵を評価する画家たちがいて徐々に国際的にも有名になっていく。
59年にはパリで個展、67年にはワルシャワ・ザヘンタ美術館で回顧展が開かれる。
有名になっても彼は愛するクリニツアの観光客に浮浪者のように絵を売ろうとする。
重症の肺結核であるが入院加療を拒み続ける。
町民たちは感染を恐れ下宿屋を追い出される。
ニキフォルは恩人マリアンの画才の無さを容赦なく指摘する。「お前は絵を描くな」。
その指摘の当たっていることを誰よりもよくわかっていたのはマリアン本人だ。
家族、特に幼い子供たち(なんとも可愛い姉妹)への感染の恐れもあるのに自分の仕事を犠牲にしてニキフォルを保護し、面倒をみる。
映画はマリアンの気持ちについて説明をほとんどしない。
倣岸、威張り散らし、わがままなニキフォル。
しかし心底からマリアンに頼っていることが良く分かる。
名声や金銭を得た晩年にも態度を変えることなくひたすら美しい絵を描き続けることにのみ執念を燃やす天才に魅せられ、仕えることを義務と感じたのだろうか?
不条理としか言いようの無い苦労をみずから引き受けるマリアンはニキフォルの生き方を羨やましく思うのだ。
クリニツアの四季が美しい、天国のように美しい。
そこに生まれた天国のような美しい絵を描く天才ニキフォル。
いまや彼の博物館ができ此処かしこに銅像が出来ているという。
ニキフォルを演じているのはクリスティーナ・フエルドマン、86歳の女優だ。素晴らしい。
起伏の少ない淡々とした静かな映画、美しい映像と音楽が無ければ退屈していたかも知れない。
それが昨日の今日、今パンフレットを見ているとほのぼのとシミジミとあの二人の世界の暖かさが甦ってくる。
輝く林の中を二人が手をつないで歩いていく後ろ姿。
ラジオで軽音楽を聴くのが大好きでいつもトランジスタラジオを持ち歩くニキフォルがマリアンに聞く。
「天国にはラジオがあるか?」
マリアン「よりどりみどりだろう」
ニキフォル「そうこなくっちゃ」
セリフはうろ覚えだがあのシーンが今俺をあったかくしている。
写真中はホール・ロビーに展示してあったニキフォルの絵。自画像が何枚かあった。
厨房のお父さんに聞いたら「ニキュニキュ・・」の絵だって。「百年くらい前のフインランドかどっかのホームレスみたいな男で最近評価されてきたようです」。
よく聞こえないので「えっ?」、お父さん料理の手を休めて引き出しをゴソゴソやって無造作に折り畳んだ紙を差し出す。
「ニキフォル」映画のチラシだ。
都立写真美術館ホールで、あれ、24日までじゃん。
早速出かけた。
1895年~1968年、確かに生まれたのは百年前だ。
フインランドじゃなくてポーランドの保養地・クリニツアの生まれ。
家がないという意味ではホームレスだが、画家・マリアン・ヴォシンスキ一家のところに勝手に住み込んでマリアンのアトリエを使って毎日3枚くらいの描く。絵筆をなめなめ。
生涯に4万点もの作品を残す。
描いては観光客に売っていた。
言語障害もあり両親のことも明らかではない。
観光客の中に彼の絵を評価する画家たちがいて徐々に国際的にも有名になっていく。
59年にはパリで個展、67年にはワルシャワ・ザヘンタ美術館で回顧展が開かれる。
有名になっても彼は愛するクリニツアの観光客に浮浪者のように絵を売ろうとする。
重症の肺結核であるが入院加療を拒み続ける。
町民たちは感染を恐れ下宿屋を追い出される。
ニキフォルは恩人マリアンの画才の無さを容赦なく指摘する。「お前は絵を描くな」。
その指摘の当たっていることを誰よりもよくわかっていたのはマリアン本人だ。
家族、特に幼い子供たち(なんとも可愛い姉妹)への感染の恐れもあるのに自分の仕事を犠牲にしてニキフォルを保護し、面倒をみる。
映画はマリアンの気持ちについて説明をほとんどしない。
倣岸、威張り散らし、わがままなニキフォル。
しかし心底からマリアンに頼っていることが良く分かる。
名声や金銭を得た晩年にも態度を変えることなくひたすら美しい絵を描き続けることにのみ執念を燃やす天才に魅せられ、仕えることを義務と感じたのだろうか?
不条理としか言いようの無い苦労をみずから引き受けるマリアンはニキフォルの生き方を羨やましく思うのだ。
クリニツアの四季が美しい、天国のように美しい。
そこに生まれた天国のような美しい絵を描く天才ニキフォル。
いまや彼の博物館ができ此処かしこに銅像が出来ているという。
ニキフォルを演じているのはクリスティーナ・フエルドマン、86歳の女優だ。素晴らしい。
起伏の少ない淡々とした静かな映画、美しい映像と音楽が無ければ退屈していたかも知れない。
それが昨日の今日、今パンフレットを見ているとほのぼのとシミジミとあの二人の世界の暖かさが甦ってくる。
輝く林の中を二人が手をつないで歩いていく後ろ姿。
ラジオで軽音楽を聴くのが大好きでいつもトランジスタラジオを持ち歩くニキフォルがマリアンに聞く。
「天国にはラジオがあるか?」
マリアン「よりどりみどりだろう」
ニキフォル「そうこなくっちゃ」
セリフはうろ覚えだがあのシーンが今俺をあったかくしている。
写真中はホール・ロビーに展示してあったニキフォルの絵。自画像が何枚かあった。
Tracked
from カラシニッキ
at 2006-12-28 13:29
タイトル : アール ブリュット
午前中と夜の仕事の合間に「ミニ☆バカンス」 友人と、東京都写真美術館に 「ニキフォル」という映画を観にいきました。 この映画は、ポーランドの実在の画家ニキフォルのお話です。 ニキフォルは「アール ブリュットの聖人」と呼ばれているそうで しかし、私は恥ずかしながら「アール ブリュット」というのを知りませんでした。 調べてみるとフランス語で「生のまま」という意味だそうで 美術教育を受けていない作家、というジャンルみたいです。 うーーん。私もだ。「アール ブリュット」だ。ちょっとカッコイ...... more
午前中と夜の仕事の合間に「ミニ☆バカンス」 友人と、東京都写真美術館に 「ニキフォル」という映画を観にいきました。 この映画は、ポーランドの実在の画家ニキフォルのお話です。 ニキフォルは「アール ブリュットの聖人」と呼ばれているそうで しかし、私は恥ずかしながら「アール ブリュット」というのを知りませんでした。 調べてみるとフランス語で「生のまま」という意味だそうで 美術教育を受けていない作家、というジャンルみたいです。 うーーん。私もだ。「アール ブリュット」だ。ちょっとカッコイ...... more
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fuku(ginsuisen)
at 2006-12-25 11:54
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素敵な二人、素敵な映画みたいですね、わー、見たかった。どこかでやってないかしら。それにしても、なかなかの粋人ですね、定食屋さん。
1
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nao
at 2006-12-25 14:01
x
佐平次さんの文章読んだら、またまた見に行けなかった事に悔しい思いです〜ぅむ〜DVD発売しないかしらん?
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saheizi-inokori at 2006-12-25 14:02
fukuさん、この店どこかの情報誌で定食屋ベスト10に入ってました。やばいなあ。行きにくくなる。
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saheizi-inokori at 2006-12-25 14:03
naoさん、口惜しがらせるように書いたんです^^。
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mmiizzz at 2006-12-27 14:15
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saheizi-inokori at 2006-12-27 15:13
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mmiizzz at 2006-12-27 16:17
トラックバック、ありがとうございます。
ちょっと間違えて、変なTBをしてしまったので
お手数ですが削除してください…。すみません…。
あとで落ち着いてやり直します。
ニキフォルは天才で好きなように生きたとして
マリアンの心情は、切ないですね…。
ちょっと間違えて、変なTBをしてしまったので
お手数ですが削除してください…。すみません…。
あとで落ち着いてやり直します。
ニキフォルは天才で好きなように生きたとして
マリアンの心情は、切ないですね…。
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saheizi-inokori at 2006-12-28 10:50
mmiizzzさん、この映画を教えてくれた定食屋のお父さんは「マリアンは絵描きだからニキフォルの絵の素晴らしさが良く分かって支援したのでしょう」と、真っ当な感想でした。
by saheizi-inokori
| 2006-12-24 15:34
| 映画
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