俺も一緒に歩きたい 森まゆみ「円朝 ざんまい」(平凡社)

円朝は明治を代表する文学者だといい、円朝命みたいな著者が円朝の代表作、「名人長二」、「怪談牡丹灯籠」、「文七元結」、「怪談乳房榎」、「鰍沢」、「塩原太助一代記」・・を取り上げアラスジ(サワリは細かく後は一瀉千里に)を追いながらそこに使われている語り口、言い回しの素晴らしさ、おもしろさを語る。
「よみがえる江戸・明治のことば」が副題。

名人長二が「不器用にやるがいい」と言ったのにぞっこん。
「手際がいい」、「とんだ配合(うつり)がいい」(服装のあわせ方)。
デキテル、なんていわない。
「深い贔屓(ひいき)にしている」「子細(わけ)」「不行跡(ふしだら)」・・いろんな言い方がある。

俺も一緒に歩きたい 森まゆみ「円朝 ざんまい」(平凡社)_e0016828_23541618.jpg

物語をつくるにあたって現地を踏み細部を確かめたのが円朝。
谷中は元より本所、上野、浅草、神楽坂・・俺は都内地図を引っ張り出す。
逆に伊香保、古河、日光・・旅先で聞いた話から傑作が生まれたこともある。
円朝の噺に出てくる土地を相棒”ぽん太″と歩く。
円朝とそのお供・伝吉の旅日記が愉快、
それを紹介しながら追体験して行く著者とぽん太の旅日記も愉快で愉快の二重奏。
俺も又歩いてみたい道ばかりだ。
もし歩いたら三重奏?

俺も一緒に歩きたい 森まゆみ「円朝 ざんまい」(平凡社)_e0016828_23544764.jpg


大部な円朝全集をカイマ見た気になる。
大好きな落語の噺の誕生に立ち会っているようだ。
なんたってあの志ん生が常に身近においてぼろぼろになるまで読み込んだのが円朝全集だ。

写真下は円朝が旅に持ち歩いた硯。
Commented by 散歩好き at 2006-12-22 13:20 x
日暮里本行寺先の経王寺前の細い道を三崎坂に抜け左に坂をチョット下った所に山岡鉄舟が建てた全生庵 禅寺 があり墓地の中央に鉄舟の墓に寄り添うように円朝の墓があります。幕末の幕臣鉄舟は円朝を随分贔屓にしていました。
Commented by saheizi-inokori at 2006-12-22 13:43
散歩好きさん、この本はその辺りから話が始まります。
円朝は幕府贔屓(江戸落語はみんなそうですが)ですが現実には井上とか明治の顕官にも上手に可愛がってもらってそのことを高座で嬉しげにほのめかしているのを森さんが冷やかして書いてます。可愛いネ、くらいの感じですが。
三崎坂を下って根津の銭湯に入り、近くで一杯やるのが我がお気に入りのコースです。熱い湯です。
Commented by antsuan at 2006-12-22 14:34
昔は言葉にも重みがありましたね。
Commented by kazemachi-maigo at 2006-12-22 16:13
なんだかまた谷根千を歩きたくなりました。
全生庵の幽霊の掛け軸は見たくありませんが(^^;)
Commented by saheizi-inokori at 2006-12-22 20:48
kazemachi-maigoさん、谷根千、いいですね。銭湯グッズを忍ばせて歩くのです。幽霊は私も今はちょっと、妻が死んだときは暫く幽霊に逢いたかったけれど。
Commented by HOOP at 2009-02-06 23:39
トラックバックありがとうございます。
なんだか、森さんとは近しい感じがします。
いろいろバックグラウンドが共通していそうです。

高校時代、悪友たちは谷中の雀荘を根城に、
私はシャルマンに入り浸っていました。
Commented by saheizi-inokori at 2009-02-07 09:43
HOOPさん、シャルマン、一度行きました。
ミーハーとして。志ん朝を偲んでのことです。
彼も入り浸ったようです。
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by saheizi-inokori | 2006-12-21 23:57 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(7)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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