ペルシア料理はいかが?生きていく希望の料理だよ マーシャ・メヘラーン「柘榴のスープ」(白水社)
2006年 12月 19日
ペルシア生まれの孤児三姉妹がイラン・イスラム革命の動乱のなかでひどい目に会い、アイルランドの小さな町にレストラン”バビロン・カフエ”を開業する。
大人の絵本(絵は可愛いカットしかないけれど)だ。スリルもあるし。
ちょっと映画「ショコラ」、「かもめ食堂」を思い出す。
”料理の力”だ。料理することによって、食べることによって与えられる力。
匂い(「かもめ食堂」!)や熱(あっちっち!)まで料理の力を総動員。
各章毎にまず料理レシピ(作ってみたくなる)があって、続く物語でその料理がテーマに絡んだり小道具になったりBGMのような役割を果たしたりー巧みな語り口が楽しい。
三人の姉妹それぞれに備わった不思議な力。
三人がそれぞれに個性的・魅力的だ。
作家は他の人々にも本当は素敵な力が備わっているんだと言いたいようだ。
美しい色と輝きに満ちたぺルシアが語られる。悪の枢軸、黒いチャドルという暗いイランのイメージが世界を覆っていることに対する抗議かもしれない。
ー花や空や星や、建物、インテリア、絨毯や家具、衣類、食器ー
それにもまして亡き母たちと暮らした生活のなんと美しくも喜びに満ちたものであったことか!
しかし人間は素晴らしい!偏見なく優しい手を差し延べる人たちもいる。
絶望の淵から救われる姉妹。
欲望に支配された人にも救いは訪れる。
ユーモアはいつだって貧しく弱いけれどもまともに生きていこうとする人たちの味方だ。
それ以上に最大・不可欠の味方は愛だ。
なによりも姉妹のお互いにたいする愛。
恋人たちの愛。
隣人の愛。
愛に守られて愛を返すことで生きていく姉妹、
自立していく姉妹は周りの人々をも幸せにしていく。
楽しく勇気の湧いてくる小説。
テヘラン生まれで今はアイルランド人の夫とアメリカに暮らす作家自身の経験が生きている。
中南米文学の香りもそこはかとなく漂っている。
tonaさんに教えていただいた本だ。
渡辺佐智江訳。
大人の絵本(絵は可愛いカットしかないけれど)だ。スリルもあるし。
ちょっと映画「ショコラ」、「かもめ食堂」を思い出す。
”料理の力”だ。料理することによって、食べることによって与えられる力。
匂い(「かもめ食堂」!)や熱(あっちっち!)まで料理の力を総動員。
各章毎にまず料理レシピ(作ってみたくなる)があって、続く物語でその料理がテーマに絡んだり小道具になったりBGMのような役割を果たしたりー巧みな語り口が楽しい。
三人の姉妹それぞれに備わった不思議な力。
三人がそれぞれに個性的・魅力的だ。
作家は他の人々にも本当は素敵な力が備わっているんだと言いたいようだ。
美しい色と輝きに満ちたぺルシアが語られる。悪の枢軸、黒いチャドルという暗いイランのイメージが世界を覆っていることに対する抗議かもしれない。
ー花や空や星や、建物、インテリア、絨毯や家具、衣類、食器ー
それにもまして亡き母たちと暮らした生活のなんと美しくも喜びに満ちたものであったことか!
マルジャーン(三姉妹の長女)は母の抱擁を思い出した。シーリーン・アミンプール(幼いときに死に別れた母)は、シエラザードの素晴らしい物語とこの妃が語った勇気ある話を聞かせて、娘たちを寝かしつけたものだった。暖かな宵には、イランの慣習で、家族全員が家の平屋根に集まった。石やがれきがすっかり取り除かれたくぼんだ屋根に両面使えるラグを敷き、凝った飾りをほどこした枕を置いて、そこで眠って蒸し暑い夜をやりすごし、金色のアーチや空飛ぶアラビアの馬の夢を見る。必ずだれかが楽器を手にしている。たいていは詩人たちが使うトンバクというひょうたん形の太鼓で、語りに合わせて、ポン、ポン、ポンと打つ。悲惨、理不尽な悪意、暴力、偏見、差別、ぎらつく欲望が姉妹を翻弄する。
しかし人間は素晴らしい!偏見なく優しい手を差し延べる人たちもいる。
絶望の淵から救われる姉妹。
欲望に支配された人にも救いは訪れる。
ユーモアはいつだって貧しく弱いけれどもまともに生きていこうとする人たちの味方だ。
それ以上に最大・不可欠の味方は愛だ。
なによりも姉妹のお互いにたいする愛。
恋人たちの愛。
隣人の愛。
愛に守られて愛を返すことで生きていく姉妹、
自立していく姉妹は周りの人々をも幸せにしていく。
楽しく勇気の湧いてくる小説。
テヘラン生まれで今はアイルランド人の夫とアメリカに暮らす作家自身の経験が生きている。
中南米文学の香りもそこはかとなく漂っている。
tonaさんに教えていただいた本だ。
渡辺佐智江訳。
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fuku(ginsuisen)
at 2006-12-20 00:48
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おもしろそうな本。同じ中南米・メキシコが舞台の
「赤い薔薇ソースの伝説」も、まずレシピと料理、次に物語が進展します。映画にもなっているのでご存知かも。
もしかして、その手法が流行っているのか同じ時期なのか。赤・薔薇は元は新聞小説でした。こんどはメキシコ料理はいかが?カカオ・モーレの入った牛肉料理もありますよ。
「赤い薔薇ソースの伝説」も、まずレシピと料理、次に物語が進展します。映画にもなっているのでご存知かも。
もしかして、その手法が流行っているのか同じ時期なのか。赤・薔薇は元は新聞小説でした。こんどはメキシコ料理はいかが?カカオ・モーレの入った牛肉料理もありますよ。
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saheizi-inokori at 2006-12-20 08:11
トルコ料理なんかもいいですね。
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knaito57 at 2006-12-20 16:17
たしかに“食は文化”ですね。『ショコラ』は味わいのある映画でした。『赤い薔薇ソースの伝説』や『白い国籍のスパイ』(ジンメル)などレシピが独特の雰囲気を醸し出す小説は、日本人には創り出せない世界のように感じます。若い作家は違ってきているのでしょうが、私などは池波正太郎の小説で「ついでのように描かれる田舎料理」を美味そうだなと思っても、あちら風のこてっとしたものはどうも……saheiziさんみたいに沖縄でも韓国でもオールカマー! でないと、とても国際人になれませんね。
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saheizi-inokori at 2006-12-20 23:14
knaito57さん、国際ジン!いやはや、です。純粋ドメステイックです。
by saheizi-inokori
| 2006-12-19 23:48
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(4)