♪日曜日は市場に出かけボルシチをつくり♪ 檀一雄「檀流クッキング」(中公文庫)

俺は料理は食うばかりではなく前に書いたように作るのも好きで得意だった。
過去形にしたのは最近はあまり作らなくなったからだ。

♪日曜日は市場に出かけボルシチをつくり♪ 檀一雄「檀流クッキング」(中公文庫)_e0016828_2355947.jpg
その教科書のひとつがこの本だ。
同じ先生役の「暮らしの手帖」が懇切丁寧に「大匙一杯」とか「5分ほど強火で加熱」「1センチ角に切って」などと書いてあるのに対してこちらはその辺は大雑把、いわば料理の心とでもいうべきものを書く。
「この地上で買い出しほど好きなことはない」といい、世界中を包丁と鍋を持って歩いたという作家のことだから取り上げられた90種を超える料理も洋の東西を問わない。
季節ごとに”春から夏へ”では、「カツオのたたき」「イカのスペイン風・中華風」「東坡肉」「ツユク(韓国の豚の水煮)」・・”夏から秋へ”では「ソーメン」「カレーライス(西欧式とインド式)」「ヒヤッ汁」・・といった具合だ。
「からしレンコン」「大根もち」などおせち料理は作って楽しかった特別の思い出がある。

料理のことを書いて作家の人生を描いてる。
読んでいるだけでも面白いが実際に作ってみて殆ど失敗することがなかったのは、料理の勘所を押さえた文章の妙、というべきだが生徒の才能にもいささかのものがあったのかもね。

今頃から美味しくなる「ボルシチ」も何度か作った。
私の知っているロシア人は、ボルシチをつくるのに実に鷹揚なものであって、台所のカマドの上にデカいアルミのバケツを載せ、そのバケツの中でボルシチを煮込むわけである。
これが書き出し、どうです?
たった2行で、すっかりロシアの・ボルシチの空気が掴めたでしょう?
ビーツの酢漬けを作っておいて(塩茹でにしたビーツに酢をかけておくと真っ赤に染まるのが美しかった)、肉は
牛のイチボとか、もも肉とか、バラ肉とかが良いに決まっているが、まあ、長時間の煮込みだから牛スネで結構だ。
途中12行省略して(一日煮込んで溶けるほどやわらかくなった肉を取り出した後を澄ませたスープに月桂樹、パセリの芯、セイジなどのブーケを投げ入れ)
さて、そのスープの中に煮えにくい野菜から順番に投げ入れていくわけだが、なるべく大ぶりに仕立て上げたいものだ。たとえばバレイショは皮をむいて丸ごと、タマネギは分厚く輪切りにしてほうり込み、トマトも表面を焼いて皮をむき、大胆な輪切りにして一緒に煮込む。ボルシチぜんたいの色どりを、トマトとビーツの赤で、ほんのりとモミジの色に染めるのがよい。このころ、一にぎりの白米を投げ入れておこう。多少のとろみをつけ、米のうまみをそえるためだ。・・
こんな感じで2ページ強の文章を読みながらつくって見事なボルシチが出来上がったときは、つい「テュリャテュリャテュリャ・・」と歌っていましたよ。

先日、久しぶりに読み直したくなって探したが見つからない。料理をしながらめくったので折ってあったり醤油や脂のシミだらけ紙もふわふわになっている懐かしい本なのに。
本屋さんでも見つからなかったので取り寄せ注文をした。
そうしたら今日、例の定食屋の帰り、これも定番のお立ち寄りコース、古本屋で見つけたのだ。
とても状態が良くて(前の持ち主は実作をしなかったかな)150円、どうもあの定食屋はゲンがいいようだ。
まあ、その後本屋からトリオキの本が届きました、という留守電も入ったのではあるが。
Commented by fuku at 2006-11-22 01:35 x
懐かしい!
ボルシチ、それから塩辛も壇流で作りました。
カレーも懲りましたよー。先日のサライ特集も購入。なつかしくて、ゆでレバーも作りました。
料理を作っていたがために、壇さんは、心が落ち着いたという説にも納得。料理は、心を癒す元。美味しいものは家族が喜ぶもの。これぞ、食育。文科省や学校が唱えるものではありません!
saheiziさんのボルシチ食べたい!

ps)エキサイトのブログから書き込みすると、ネームがブログ名で出てしまうんですね。またもやハンドル名を変えないとだめなのか、検討中です。フラフラとして、すみませんデス。
Commented by saheizi-inokori at 2006-11-22 08:44
でも案外料理教育がイジメを減らしたりするかもしれませんよ。知能指数が高ければ好いってモンじゃないし、腕力でどうこうなることもない。
Commented by fuku at 2006-11-22 11:24 x
食育をがんばりすぎて、料理が教育なってしまうのがねー、気になるんです。食育はまずは、家庭からと思うのです。フランスでは、1年に一度か二度、ほんもののシェフが学校に来て、ちゃんと作るから見せて、食べる機会があるとか。これは国の味を大事にするためのものだそう。それぞれ、故郷に帰ってするそうですよ。
お母さんたちも一緒に食べるとか。うらやましいです。
Commented by yoco at 2006-11-22 13:04 x
こんにちわ。
私は、「前に書いたように」のあがり症の記事を読んでいませんでした。
あがり症にも驚きましたが、そんなにもお料理をなさっていたなんて、驚きました。(お料理をされるのは知っていました^^)

実は、私は、料理は嫌いで苦手です。(ちょっと表現がきついですが、本当、嫌いなんです・・・・・・・・・・。)
専業主婦だから、頑張って作っているのです。

でも、今日、気づきました。
私も料理で失敗することを恐れているのです。
主人には、失敗したお料理を出すわけにはいかない!と勝手に気負っていたみたいです。

もっと、気楽にやればいいんだな・・・とわかりますが、これまた、あがり症の人と一緒でそう簡単には変われないのですが。

お料理は、気楽に、気楽に。ですね(^^)
Commented by fuku at 2006-11-22 13:15 x
saheiziさん、yocoさん、「上がり性」のお話、今読みました。私も、こう見えて(アー見えて、どう見えて?)実は、上がり性であり、緊張性です。入社試験では5分に一回トイレに駆け込みました。仕事が間に合わないときは、夢でうなされました。今もときどき、ドキドキします。初めて会う方には特に。そうかー、料理は人を変える・・いいですね。できればね、壇流のようなレシピ、材料表など細かく書いてないレシピが好きです。レミさんのあの天真爛漫なレシピもいいですね。
Commented by yoco at 2006-11-22 13:16 x
すみません。
追伸です。

お料理が苦手でたまらないので、その解決策として「素敵な~」のブログを作ったのでした。
テーブルコーディネイトに楽しみを見つけ出しながら、ブログで発信することで自分の楽しみにしようと思ったのです。
だいぶ、成功してきていますが、まだ、あまり・・・。です。

すみません。
変なお話で。
Commented by 高麗山 at 2006-11-22 16:06 x
初めまして、gakiss-roomから来ました。何時も洒脱なコメント拝見しております。
開けてみてビックリ、檀一雄さんの゛檀流クッキングに”遭遇しようとは! 私も、昭和40年代から愛読し、料理教本にしています。『美味放浪記』、『檀流クッキング』、『わが百味真髄』、内容の70%位は、今までに挑戦してみました。杓子定規なレシピではなく、失敗していても、失敗と感じさせない導入に恐れいっています。”羊肉のシャブシャブ”などは少しアレンジして、韓国から来た友人達に食べさせると、牛肉を、殆ど残して羊肉を、全部平らげました。
Commented by molamola-manbow at 2006-11-22 16:17
鯛をまるごと一匹塩焼きにして、その上から割り下と素麺をドサドサっとかけて鯛をほぐしながら食らう。
実に簡単で旨そうなので作ってみたいのですが肝心の鯛がなかなか掛からない。
『魚料理指南』(本山賢司著)に載っかってる料理でして、養殖でも可とありますが、釣人としては天然にこだわりたい。何時になるやら・・・・・。
Commented by tona at 2006-11-22 18:44 x
以前お料理をたくさんなさっていたということで、どんなのを作られたのか知りたかったのですが、なるほどsaheiziさんらしい。料理の才能があるのですね。
私も大変懐かしい本で、男の方らしいダイナミックな料理で気に入っていました。ラフというかおおまかなところがいいですね。
肝心の檀さんの小説は読んでいません。
小説に料理の片鱗でも出てくるのでしょうか。
Commented by saheizi-inokori at 2006-11-22 20:44
fukuさん、学校で食育ってそんなにやってるのですか?知りませんでした。食に限らず、教えることは喜びを教えることだと思いますよ。家庭でも学校でも。
Commented by saheizi-inokori at 2006-11-22 20:47
yocoさんの料理写真で見る限りはおいしそうですよ。
ほんとに料理は楽しんで作ったほうがうまく行くと思います。失敗と成功はよほどの場合以外は食べる側の問題です。
うまいといって食べればうまいのです。^^。
Commented by saheizi-inokori at 2006-11-22 20:50
高麗山さん、いつもお隣で拝見していました。檀流仲間とは嬉しいですね。又gakisさんを見習って料理を始めようかと思っています。
ちょくちょくおいでください。
Commented by saheizi-inokori at 2006-11-22 20:51
manbowさん、それはうまそうですね。やはり鯛は王様です。滅多に本物にはお目にかかれません。
Commented by saheizi-inokori at 2006-11-22 20:53
tonaさん、私も彼の小説は「太宰治」とか「火宅の人」、、あまり読んでいませんが、食のことはどうだったろう?あまり記憶にないです。料理のエッセイは「美味放浪記」などもありました。
Commented by pompu at 2006-11-22 21:12 x
家庭の料理が、世の中をまっとうにすると思う。料理は美味しくても、苦手なお母さんの料理でも、お父さん料理でも、何でもいい(美味しいにこしたことはないが)。母が用事で遅くなる時は、今では考えられないが、隣の家で食事していた。昔はマックもないし、コンビニもないので、家で食べるしかなかったから、皆、絶対帰ってくるし、会話もあった。今は他で食べられる時代なので、なおさら家庭の食事の回数が重要になる。お手伝いもしないとつまらない。キャベツの青虫捕り、自家製マヨネーズつくり、とろろ作り、お膳立て(茶碗箸など食卓の用意)は毎日の当番。なぜか思い出すのは食事や料理に関することが多い。でも、今の子供は塾で大忙し。
Commented by saheizi-inokori at 2006-11-22 22:00
pompuさん、わが家も休日の食事はみんな揃って食べるもの(平日は私だけが外で酔っ払って帰る)、豚児たちも食後の茶碗洗いは毎日やっていました。
逆立ちしても戻らない”栄光の日々”ですよ。
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by saheizi-inokori | 2006-11-22 00:00 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(16)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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