ちょっと違うんだなあ 映画「父親たちの星条旗」

9月26日27日に硫黄島の栗林中将の本を紹介した。
これを読んだら今度は同じ硫黄島の戦いをアメリカ海兵隊の側から書いた本を見つけてそれを10月20日と28日に書いた。
「硫黄島の星条旗」を買うときに本屋でこの映画のことを知った。
クリント・イーストウッドがなんと、この二冊の本を原作として二部作の「硫黄島」映画を創ったのだ。(映画があるから本が平積みになっていたというのが実際のところだが)。

その上、映画を観たら最初の方に20日に書いたハーロンのお母さんのエピソードが登場して「オムツをあてたのは私だから(写真の子が)ハーロンだと直ぐ分る」というセリフを言う。

イーストウッドと俺がシンクロしているようで面白かった。

さて、映画の方だ。ここからはまだ観てない人は読まないほうがいいかな。

ちょっと違うんだなあ 映画「父親たちの星条旗」_e0016828_23484337.jpg

今日観たのは「硫黄島の星条旗」の映画化だが、本を読んで受けた感じとは大分違う。

太平洋戦争でももっとも酸鼻を極めた硫黄島の戦い(と思ったら、今読んでいる沖縄は住民を巻き込むという点で更に酷い)の描写、その中で”ヒーローたらざるを得なかった”若者たちのひたすらな前進と戦友を守るための献身。多くがボロボロになって死んでいく。
国旗掲揚の写真に載った6人の兵のうち生還できた3人を待ち受けた戦争国債募集キャンペーンの旅。
運良く生還できたものにも、戦いに行く前のような健やかな人生は保証されない。
戦う兵たちの健気さと、銃後の人々、とくに安全なところに身をおいたうえで”愛国的な”言動をほしいままにしている要路の人々の間の途轍もない、冗談だろうといいたくなるような感覚の隔たり。
戦場の凄惨とシャバの安逸は狂気という点で通底する。
地獄から生還した者が日常に復するのは至難の業だ。

このあたり、映画はキャンペーンツアーと戦場の回想という二つの狂気のシーンを行ったり来たりしながらたっぷり描いている。
大作だ。

しかし、どうも一本調子というか平板なのだ。冗長にすら感じた。
本を読んでいたから驚きがないせいか?
そうとばかりは言えないようだ。

本にあって映画にない部分、それは6人の生い立ちだ。
たとえばインデイアンのアイラ。
彼が貧しい居留地の生活の中でどんなに素晴らしい子供として育ったか!
ハーロン、良心的兵役拒否主義の母親と”友達のように”一緒に運送事業をやった父親の間で育つ。母親には夫は最愛の”いい子”ハーロンを奪った悪い男だ。
・・。

現代とは違う”古きよき”アメリカ社会のさまざまな家庭像、
そこから輩出した健やかな青年たち。
正常な、健全なアメリカ(人)
が硫黄島を経て変質していく。
それぞれの生い立ちを背負った子たちが戸惑い、苦しみ、克服するものがいて、立ち直れないままの子がいる。

映画化に当たって本ではかなり多くのページを割いている生い立ちの記録はほとんど割愛された。
だからかアイラがなんだか只弱い男のように見えてしまった。
ハーロンの母親の悲哀が通り一遍に見えてしまった。

まあ、俺の言うような映画にしようとしたら全く、それこそ本の原型は少しも残らないくらいにしないと映画にならないのだろうが。
せめて最初の国旗掲揚の場面はも少し感動的に歌い上げて欲しかった。映画なんだもの。
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Commented by suiryutei at 2006-11-03 16:16
こんにちは。
イーストウッドは凄い監督だと思うのですが、映画化はむずかしい作品だったのでしょうか。
Commented by saheizi-inokori at 2006-11-05 21:37
suiryuteiさん、こんばんは。
いい作品ではあると思います。原作の味とは違うのは映画化の常ですから文句を言うのはおかしいのですが、まあ、私の思いです。
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by saheizi-inokori | 2006-11-02 23:56 | 映画 | Trackback(3) | Comments(2)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori