日本国憲法はドン・キホーテ? 太田光・中沢新一「憲法九条を世界遺産に」(集英社新書)
2006年 10月 11日
太田
そういう状況の中で”憲法改正”という重大な決断をくだしてはいけない、と中沢はいい、太田も20年先の日本人が、「なんであの時憲法を変えたのか、当時の日本人は何をやってたんだ」とならないようにする使命が〈僕たちには)ある、という。
何故「世界遺産」なのか?
太田
この憲章の精神の中には日本国憲法にそっくりなところが多い。
アメリカの建国精神にはイロコイというアジア系の先住民族の考え方があった。
それは環太平洋のいろんな民族が共有していた戦争と平和についての一万年規模の歴史性をもつ思想だった。
アメリカの歴史の中では実現できなかったその精神が日本国憲法に陽の目をみたと。
自己矛盾を内在させて超現実的な理想を宣言する”世界の珍品”ともいうべき日本国憲法。
”万物への愛””コミュニケーションの復活”を数々の童話で表現する宮沢賢治が田中智学の八紘一宇の思想につながり、人を殺すことにもつながっていったことを賢治の見てはならない過ちとして封印すべきべきではない。
そもそも人は愛や言葉で人を殺すこともある。賢治フアンからは負のイメージで葬られようとする部分も含めて賢治の全てが”真実”なのだ。
誤解なきコミュニケーションということもありえないと観念すべきだ。
むしろ誤解するところにその人の個性がきらめくと太田はいう。
そのような不完全な・矛盾に満ちた人間にとって日本国憲法は”愚かな人間だからこそ守っていかなければならない世界遺産”だ。
〈イラクの人質事件で、「自己責任」という言葉が吹き荒れて)人質の家族の、自分の子供の命を救ってほしいという願いですら、口に出せなくなってしまった。〈略〉あの空気は、ある一方向にワーッと流れていく戦前の雰囲気にすごく似ているんじゃないかと思いました。素直に自分が思っていることを表現すると、世の中から抹殺されることにもなりかねない。その意味ではかなり怖い状況になっていると思う。俺も太田君も戦前の雰囲気を体験しているわけではないが”怖い状況”になっているということは同感だ。
そういう状況の中で”憲法改正”という重大な決断をくだしてはいけない、と中沢はいい、太田も20年先の日本人が、「なんであの時憲法を変えたのか、当時の日本人は何をやってたんだ」とならないようにする使命が〈僕たちには)ある、という。
何故「世界遺産」なのか?
太田
戦争していた日本とアメリカが、戦争が終わったとたん、日米合作であの無垢な理想憲法を作った。時代の流れからして、日本もアメリカもあの無垢な理想に向かい合えたのは、あの瞬間しかなかったんじゃないか。日本人の、15年も続いた戦争に嫌気がさしているピークの感情と、この国を二度と戦争を起こさせない国にしようというアメリカの思惑が重なった瞬間に、ぽっとできた。これはもう誰が作ったとかとかいう次元を超えたものだし、国の境すら超越した合作だし、奇跡的な成立の仕方だなと感じたんです。中沢は、日本国憲法は、国家が作ったものではないんじゃないか、という。
アメリカの建国精神は、ヨーロッパ生まれの人権思想や立憲思想とは違うタイプのものです。アメリカの先住民族のイロコイ族は小さな部族の対立を克服するために「イロコイ連邦憲章」をつくってイロコイ長老会議で平和を維持していこうとした。
この憲章の精神の中には日本国憲法にそっくりなところが多い。
アメリカの建国精神にはイロコイというアジア系の先住民族の考え方があった。
それは環太平洋のいろんな民族が共有していた戦争と平和についての一万年規模の歴史性をもつ思想だった。
アメリカの歴史の中では実現できなかったその精神が日本国憲法に陽の目をみたと。
自己矛盾を内在させて超現実的な理想を宣言する”世界の珍品”ともいうべき日本国憲法。
”万物への愛””コミュニケーションの復活”を数々の童話で表現する宮沢賢治が田中智学の八紘一宇の思想につながり、人を殺すことにもつながっていったことを賢治の見てはならない過ちとして封印すべきべきではない。
そもそも人は愛や言葉で人を殺すこともある。賢治フアンからは負のイメージで葬られようとする部分も含めて賢治の全てが”真実”なのだ。
誤解なきコミュニケーションということもありえないと観念すべきだ。
むしろ誤解するところにその人の個性がきらめくと太田はいう。
そのような不完全な・矛盾に満ちた人間にとって日本国憲法は”愚かな人間だからこそ守っていかなければならない世界遺産”だ。
憲法九条を持ち続けている日本というのは、ドン・キホーテのように滑稽で、しっちゃかめっちゃかに見えるかもしれないけれど、やっぱり面白い。(太田)「対称性の世界観」、「芸術人類学」の中沢の持論〈網野史学もみすえつつ)と太田の直感がぶつかり合い共鳴しあい短いけれど刺激的な対談になった。
そのドン・キホーテのそばに、「旦那、旦那が言ってることは常軌を逸してますよ」と言い続けるサンチョ・パンサがいることが、また大事なことなんですね。だから二人組になってるわけでしょう。(中沢)
Tracked
from 墓の中からコンニチワ
at 2006-10-14 13:46
タイトル : 子持ちワカメ
今朝(10/14)の段階になっても、まだ、「北朝鮮が核実験を行った」という確認は取れていないようだ。米軍から怪しい物質検出の情報が提供されたが日本も韓国も「調査中」としている。だからBush以下関係者の表現は「北朝鮮の宣言」「北朝鮮の発表」に止まっている。「イラクに恐竜がいる」と断言して乗り込んだがネズミが走り回っていただけだったのに懲りたのか。 北朝鮮に指名手配されながら日本で大学教授をやっている「李 英和」氏が実験の二日後に旧知の北朝鮮軍人のケータイに電話したら「二日間停電なのでラジオも聞い...... more
今朝(10/14)の段階になっても、まだ、「北朝鮮が核実験を行った」という確認は取れていないようだ。米軍から怪しい物質検出の情報が提供されたが日本も韓国も「調査中」としている。だからBush以下関係者の表現は「北朝鮮の宣言」「北朝鮮の発表」に止まっている。「イラクに恐竜がいる」と断言して乗り込んだがネズミが走り回っていただけだったのに懲りたのか。 北朝鮮に指名手配されながら日本で大学教授をやっている「李 英和」氏が実験の二日後に旧知の北朝鮮軍人のケータイに電話したら「二日間停電なのでラジオも聞い...... more
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sakuraasako at 2006-10-11 23:55
> 誤解なきコミュニケーションということもありえないと観念すべきだ
はい、観念します。(笑)
はい、観念します。(笑)
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sakuraasako at 2006-10-11 23:56
(追伸)
ありがとう。
ありがとう。
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saheizi-inokori at 2006-10-12 00:05
どーいたまして。
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antsuan at 2006-10-12 04:30
・憲法を遺物にしちゃっていいのかとも思ってしまいますが、やっぱり日本はこういう事が云えるまだまだ自由が残されている。
交戦権の放棄とは侵略権の放棄だろう、自衛権は放棄していないと思っていたんですが、ダグラス・スミスによりますと、自衛権の放棄だそうです。ドン・キホーテ的憲法と言わざるを得ませんね。やはり、サンチョ君が要る。(笑)
もっとも、自衛以前に、守るべき主体の確立が大事だと思うのですが、国家のレベルでも、我々個人のレベルでも、まだまだですねぇ。
もっとも、自衛以前に、守るべき主体の確立が大事だと思うのですが、国家のレベルでも、我々個人のレベルでも、まだまだですねぇ。
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saheizi-inokori at 2006-10-12 10:12
antsuanさん、「国や民族をこえて、人類が共有すべき普遍的な価値をもつ」モノやこと。今、現に価値を持ち今後ももち続ける人類の築きあげてきた資産を世界遺産というのではないでしょうか。
追憶や回顧の対象としてではなくますます保護し生かしていべき価値。
そういう意味では普通の国の憲法とはかなり違った性格を持っているのが日本国憲法、世界の珍品とまで彼らは言ってます。現実にそのまま機能することの困難さを認めながら、だからこそ理想として掲げ続けるべきだと、9条があるからさまざまな議論が成り立ちうるのだ、と語っています。面白い見方だと思いました。
追憶や回顧の対象としてではなくますます保護し生かしていべき価値。
そういう意味では普通の国の憲法とはかなり違った性格を持っているのが日本国憲法、世界の珍品とまで彼らは言ってます。現実にそのまま機能することの困難さを認めながら、だからこそ理想として掲げ続けるべきだと、9条があるからさまざまな議論が成り立ちうるのだ、と語っています。面白い見方だと思いました。
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saheizi-inokori at 2006-10-12 10:17
きとらさん、国家のレベルというのが一番難物ですね。
美しい国家なんて、本来国家に美しいも汚いもないですよね。
ソンな概念でくくられた国家なんて守りようがない。
オリンピックで町を壊したら美しい景観は損なわれる。
美しい国家とはアンチ・オリンピック、土建国家の否定?
それならちったあ分からんでもないですが。
美しい国家なんて、本来国家に美しいも汚いもないですよね。
ソンな概念でくくられた国家なんて守りようがない。
オリンピックで町を壊したら美しい景観は損なわれる。
美しい国家とはアンチ・オリンピック、土建国家の否定?
それならちったあ分からんでもないですが。
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そら
at 2006-10-12 14:44
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イラクの人質事件のときね。。。。これって多分に「政府の意思」によるマスコミ操作があるんじゃないのとか、それにわーっと流されるこの感じ、恐いな~とか、そんなこと思っていたなぁ。なんか違うんじゃないかと思っても、そのときは1人で思ってるだけしかなくて、それが歯がゆかったし、どうすればいいのかも分からなかった。今、ブログみたいに自分の考えを自分なりに発信するツールを見つけてるけど、じゃあ何かヘンって思ったときに、それをそのまま素直に書けるかと言ったら、実際結構腰が引けてます。なんかね、顔のない人たちに振りまわされるのもイヤだなぁと、そんなずるいことも思ってしまいます。…こういうのって情けないなぁと思う今日この頃。…梟さんの記事にあんまり関係ないことでしたm(_ _)m
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saheizi-inokori at 2006-10-12 14:50
そらさん、大関係あり!ですよ。ブログは自由にものが言えると思うとむしろ匿名で簡単に誹謗中傷が出来る。
かえって怖いかもしれませんね。
だからって負けてはいられないと思うけど。小さな沈黙が大きな沈黙になって無言の否定が積極的な肯定にならんとも限らないから。
かえって怖いかもしれませんね。
だからって負けてはいられないと思うけど。小さな沈黙が大きな沈黙になって無言の否定が積極的な肯定にならんとも限らないから。
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suiryutei at 2006-10-12 16:12
こんにちは。
この本のことは10日に[桃太郎]で飲んだときも話題になりましたね。当日はありがとうございました。
この本のことは10日に[桃太郎]で飲んだときも話題になりましたね。当日はありがとうございました。
美しい国は、イメージとしてはありますよね。
田んぼがあって、遠くに山があって、村があって、鎮守様があって、お祭りをして、諸その上に一ノ宮があって、その上に伊勢神宮があって、皇居があって、日の丸があって、みんな分を守って、仲良く。
つまり、国家をゲマインシャフトの延長の、ウルトラゲマインシャフトとして描いてしまう。これが難物ですね。たいていの国家にあるのですが、特に日本では顕著ですね。
田んぼがあって、遠くに山があって、村があって、鎮守様があって、お祭りをして、諸その上に一ノ宮があって、その上に伊勢神宮があって、皇居があって、日の丸があって、みんな分を守って、仲良く。
つまり、国家をゲマインシャフトの延長の、ウルトラゲマインシャフトとして描いてしまう。これが難物ですね。たいていの国家にあるのですが、特に日本では顕著ですね。
自衛権を放棄した国は日本以外にもコスタリカという中南米の国がありまして、この国は隣国のニカラグアと、軍隊を持たないまま戦争をしています。
結果ですか?もちろんコスタリカの圧勝に決まってるじゃないですか。
結果ですか?もちろんコスタリカの圧勝に決まってるじゃないですか。
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みい
at 2006-10-12 21:16
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美しい国、って日本は本来美しい国だった(過去形)のですよね。景観はもちろん日本人の心も。
でもそれら両方壊していってるのは、一体誰?何?なんでしょう。
憲法改悪には、どこまでも反対!します。
辺見庸さんの「いまここに在ることの恥」この本を今読んでいます。・・・この国に生きる自分自身の根底の恥のため・・今ここに在る恥のため・・・う~ん、もう一度よんでみよう。
でもそれら両方壊していってるのは、一体誰?何?なんでしょう。
憲法改悪には、どこまでも反対!します。
辺見庸さんの「いまここに在ることの恥」この本を今読んでいます。・・・この国に生きる自分自身の根底の恥のため・・今ここに在る恥のため・・・う~ん、もう一度よんでみよう。
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散歩好き
at 2006-10-12 21:49
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小泉八雲を読むと日本人の感性に驚愕した初期の事実から晩年は功利的になっていく日本人の行く末を心配しています。戦後一気にその傾向が進駐軍政策により広まったのでしょう。美しい国は寺子屋で仏教を教わっていてそれが全智識だった事が戦前まで続いていたことを言うのでしょう。憲法は9条の議論でしょうが国防も徴兵となると考えます。
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saheizi-inokori at 2006-10-12 22:27
suiryuteiさん、この本を最初に教えてくれたのはnaoさんのブログです。
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saheizi-inokori at 2006-10-12 22:31
きとらさん、そういう操作を意識的にしている人たちを警戒しなければとおもいます。
美しい国土とか美しい建物はあっても国家そのものには美しいという要素が入り込まないと思うのです。
美しい国土とか美しい建物はあっても国家そのものには美しいという要素が入り込まないと思うのです。
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saheizi-inokori at 2006-10-12 22:31
mitsukiさん、不明でした。勉強します。
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saheizi-inokori at 2006-10-12 22:34
みいさん、確かに日本人の心性には美しいとも言える気高さがあったと思うのですが。
今余りそれを感じないのは残念です。
今余りそれを感じないのは残念です。
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saheizi-inokori at 2006-10-12 22:44
散歩好きさん、長い間続いた封建制=藩・郷土愛をバックボーンにしたまとまり、さらに腐敗しなかった政治権力と言ったものが日本人の気高さを保障してきたという面もあるのでは?
明治になり「国家」が前面に出てから、特に藩閥政治から腐敗が始まったようにも感じられます。
明治になり「国家」が前面に出てから、特に藩閥政治から腐敗が始まったようにも感じられます。
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散歩好き
at 2006-10-12 23:05
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内村鑑三が札幌農学校を卒業して農林省に入り汚職の酷さに直ぐに辞めた話があります。藩閥政治の弊害でしょう。明治初期の話です。
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そら
at 2006-10-13 15:27
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saheizi-inokori at 2006-10-13 15:31
そらさん、よかった。
by saheizi-inokori
| 2006-10-11 23:38
| 今週の1冊、又は2・3冊
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