許せないなあ 開戦時のリーダーども 「あの戦争になぜ負けたのか」(文春新書)

半藤一利・保阪正康・中西輝政・戸高一成・福田和也・加藤陽子の座談会で「対米戦争の目的は何だったのか」「ヒトラーとの同盟は昭和史の謎」・・8っのテーマを語る。今日はその一部。

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真珠湾のあとミッドウエーに進むというのは元々海軍のシナリオにはなかったという。
いわば山本五十六連合艦隊長官の思いつき的”暴走”、陸軍との調整どころか海軍部内でも軍令部には反対が多かった。
「これが認められなければ長官は辞めるといっている」が殺し文句、論理より仲間内の情で天下分け目の決戦が行なわれることになる。

日米戦争開始に当たっての戦争目的・戦略、、いづれも国全体で十分な議論・分析・シミュレーションを行ったものではなかった。
陸海軍の不統一、政府部内の不統一、、希望的観測の積み重ねが全て、言ってみればバクチ。軍部と政府を束ねて全体を判断する機能がなかった。

半藤は云う。
軍令部総長の永野修身と、山本五十六連合艦隊司令長官は、開戦前からいちどもとっくり話たことがない。〈略〉理由はなにか。「お互いに嫌いだから」。感情論だけなんです。
そのミッドウエー作戦、機動部隊の長官に任命されたのは南雲、「魚雷屋」、飛行機のことは良く知らない。補佐すべき参謀長は草鹿、飛行船の専門家。兵学校卒業の成績順を基本に人事を行なうとこんなことがまかりとおった。
「敵艦見ゆ」と索敵機から知らせが入る。
が、南雲長官は、どうしたらいいか判断できず、草鹿参謀長の顔を見る。草鹿参謀長も困って、源田実〈この人が戦闘機屋)の顔を見る。〈略〉そこから一時間あまり、モタモタして何もしない。
さすがに業を煮やした第二航空戦隊の山口少将が「直ちに発進の要ありと認む」と信号を送りますが、南雲長官はまた「どうだ」、草鹿参謀長も「どうだ」と順送り、
結局敵機の襲撃を受けて、コテンパンにやられる。半藤の発言だ(脱線するが現代の大企業にも散見されますなあ、こういうこと)。

こういうやりとりもある。
中西「観念的には物量作戦を重視していたにもかかわらず、実際の戦争では補給を無視した。特に太平洋の島々で補給線が途絶えれば、部隊の大半は病死、餓死してしまう。
実際、昭和19年以降、百五十万から二百万近くの兵隊が補給線が絶たれたことで命を落としている。」
半藤「餓死は全死者の70パーセントを占めていました。ひどいものです」
戸高「アメリカだったら大統領が刑事告訴されますよ」
こういう話を読むとやりきれない。

戦争を防げなかった国民の罪というものがあるとして、ここに語られる”リーダー”や”エリート”のそれと比べたら?
「自らの手で憲法をつくる」に夢中な安倍さん、「戦争責任をきちんと自らの手で明らかにする」ことは無用なことなのでしょうか?
勝算なき・戦略なき戦争を始め、愚かな戦争指導をして負けた。その責任は全ての国民が等しく背負うものでしょうか。
アメリカによる押し付けを嫌うなら敗戦の始末も自らつけるべきだったのではないでしょうか?
やり直すというならこっちもやり直さないとね。

過去のことではない。今現在そういうことをやって若者を、庶民を無意味な死に追いやった人々とその関係者が大きな顔をして「働きの悪い人とそうでない人が所得格差があるのは当然だ」などとほざいている。
親の資産を受け継ぐということは働きのうちに入るのか?
Tracked from どうにも変な音楽家 at 2006-09-21 15:17
タイトル : 日本の未来は、Wow, Wow, Wow, Wow!
 「美しいニッポン」バンザイ! これ、私のイタズラではありません。娘が新聞に書いた落書きです。悪意は全くありません。... more
Commented by antsuan at 2006-09-20 23:55
戦前と変わっていないのが官僚体制。それが一番腐敗していたというのに温存されてしまった悲劇、これでは良くなりっこない。憲法を改正するなら首相を公選にして三権分立を明確にしなければ、やはり悪い道を進む事になりそうです。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-21 00:02
antsuanさん、憲法がこのままで良いとは私も思わないです。
ただし、信用できる、”覚悟”を持ったリーダーたちがいて改正に携わるのならです。
へなへなのお坊ちゃんたちにいじられるくらいなら今のままの方がよほど良いと思います。
Commented by mitsuki at 2006-09-21 06:45 x
怖いのは、戦争を知らない(忘れた)若い世代にまで「ハル・ノートを突きつけられたら戦争をするしかない」っていう与太話を信じてる奴らがいるって事。
知らないって本当に怖いです。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-21 07:59
mitsukiさん、本当に見てきたような・・・で知らない人には何とでも言えるからおそろしいですね。
プラス若者を中心に広がる世の中のナントモ言えない不安感・閉塞感。
何でも良いから勇ましくやっちまえ!見たいな空気が出来る可能性は高いのでは?
Commented by oscar_pittarison at 2006-09-21 15:28
初めまして。Count_Basie_Band様のブログから来ました。
私はこの本を買ってみようかな、と思ったんですが止めました。保坂という人の名前が見えたからです。4年ほど前、保坂氏が書いた『「昭和史七つの謎』(講談社文庫)という本を読みました。読み終わって「この人は何にも反省してないな」と放り出してしまいました。それ以来、この人が何か本を出すたびに立ち読みしましたが、相も変らぬヌエぶりには感心しております。
Commented by gakis-room at 2006-09-21 16:19
戦艦を座礁させて砲台として戦う,なぜこんな発想が戦術として成立しえたのか私には謎でした。今,分かりました。軍事の専門家はおらず,イケイケドンドンが幅を利かせていたのですね。映画をつくるのなら,ここをペースにしないで美談に仕立てたら,死んだ者も浮かばれません。
Commented by seilonbenkei at 2006-09-21 21:02
>庶民を無意味な死に追いやった
部分的に反応してしまってすみませんが、本当に無意味な死だったと思います。
mitsukiさんの言葉をお借りすれば、戦争をするしかない覚悟ができるなら、しない覚悟だってできそうなものだと思うのです。
Commented by 園長 at 2006-09-22 18:27 x
いつも思うのですけど・・・。
国を動かすほどのリーダーが実はリーダーシップなどとは程遠い、
たんなる独裁者であったり、わがままオヤジであったりするのが
たまらなく悲しいんですが・・・。
今の日本のリーダーの発言をこうして「どうよ!?」と
言える人がとても少ないことも悲しいです。
格差社会を容認している人に、国の政を預けているのは
国民ひとりひとりなんだよなぁ~~・・・とも思ったりして。

原爆を作った人が言った「戦争の責任はすべての日本人にある」
ということばが、どうにも納得できないままです。
総理大臣を決めるのに、国民投票があればいいのにな・・と
私が言ったら、うちのだんな様は
「そんなことしたら、単に有名だからという理由で投票してしまう
無責任な人たちが、とんでもない人を当選させちゃうよ」と。

んーーー・・・やっぱり、国のリーダーが変な方向に行くのを
止めなければならない責任の一端が自分にもあるのだろうか?
Commented by ちゃめ at 2006-09-23 00:14 x
>親の資産を受け継ぐということは働きのうちに入るのか?
 これは、運ですよね~。

>働きの悪い人とそうでない人が所得格差があるのは当然…
 働きが良いから所得が高いという訳では、決して無いですよね。
 働きの悪い人でも、所得が高い人は沢山居ますよね~。

 日本の近代史を振り返ると、明治時代と戦後の高度成長までの期間には、似通ったものを感じます。
 同様に、昭和初期から敗戦までの期間と同じようなものを、昨今の日本に感じます。
 歴史は繰り返すといいますが、こればっかりは繰り返して欲しくないですね。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-23 09:25
gakis-roomさん、戦時中だけでなく今もまかり通っているのかもしれません。学校秀才や二世が何も知らないのに幅をきかす。しかもそういう人たちが”相互援助同盟”をつくって実力派を排除しようとしているようにも感じます。実業のみならず芸術の世界ですら。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-23 09:28
保阪さんの発言はたしかに分かりにくかったです。戦争のことを語るとき妙に奥歯にものの挟まった物言いをする人がいますね。
戸高さんという人を今まで知りませんでしたが良い発言をしているので又記事に書きます。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-23 09:31
seilonbenkeiさん、イラクの、イランの、今戦っている人たち、特に”ヘイタイ!サンたちは覚悟も何もむりやり狩り出されているのではないでしょうか。
狩り出している人たちをまず最前線に送り出すべきですね。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-23 09:35
園長さん、不可解というか困った事にというべきか、今度の総裁選はまさに国民投票的様相を呈していました。
安倍さんのことなど何も知らないのになんとなく人気がある。その人気をてこに彼らは突っ走る。たしかに国民の責任も大きいのだと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-23 09:42
ちゃめさんのおっしゃりとおりだと思います。あの時代のこと私は生まれていたというくらいで何も知らないで育ったように思います。今きちんとマナバなければと思います。
Commented by 散歩好き at 2006-09-23 21:04 x
太平洋戦争に敗戦しころっとアメリカに忠実に従いそれ故経済発展をした。イラクはプライドをかけ抵抗し復興は見込みが立たない。長いものには巻かれろ・また田宮寅彦?の「落城」のように敵に攻め立てられているうちに攻め手を領民が供応することをする民族性がある。優柔不断が国民性のところに信長や純一郎が出、物珍しさで評価を受けたが結果は出ていない。純一郎にしても人気を良い事に任期を理由に投げ出したも同然で結着をつける責任を持ってもらいたい。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-23 22:13
散歩好きさん、ケジメがないということなんでしょうか?
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by saheizi-inokori | 2006-09-20 23:44 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback(1) | Comments(16)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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