生き続ける言葉 落語に生きる”死語”たち

風屋さんが「時代と言葉」と題して”死語”がはやっている会社内の様子を面白く書いている。岩手に住む風屋さんはときどき「正しい岩手弁講座」も開講してくれる。俺は方言とか”活きている言葉”に興味があるから”死んでいる言葉”にも興味があって「シミチョロ」という懐かしのセクハラ語?のことをコメントした。

死語といえば落語は言うところの死語の宝庫だ。現在日常生活ではまずもって使われないような言葉ばかり。言葉ばかりではなく、落語世界そのものがいまや見当たらない。
長屋、大家さんと店子、髪結い、大店、吉原、江戸っ子と火事とけんか、・・。

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若い子に落語を楽しんでもらおうと思ったら、「落語世界の歩き方」でも用意しないとね。
新作落語とか楽屋落ちを面白く語る漫談が受けるのはそのせいかもしれない。

しかし、”落語ブーム”で満員になった寄席は古典落語にも沸いている。
湧いているのは中年のお客様が多いけれど若者も結構ウケテいる。
時代背景や言葉が違うのに受けて、人情噺では泣いている人もいるのは不思議なようにも感じられる。

それが古典落語の強みだと思う。
ナンセンスな非日常的な世界・やり取りそのもののおかしさもさることながら
そういう世界であればこそくっきりと描かれる人間の優しさ、アホさ、イヤラシサ、哀れ・・
縁がないような世界の住人に俺たちは自分の中にある何かと共通するものを見つけて
笑ったり泣いたりため息をつく。

死んだようでいてドッコイ新しい命を得ていく言葉もある。甦る世界もあるんだ。

「粗忽長屋」、題名自体が死語。
浅草で行き倒れ死体をみた八つあんは「この死体は熊さんの死体だ。その証拠に今当人を連れてくる」と叫び長屋にとって帰す。
寝起きでことの次第がつかめない熊さんに「おめえ、死んじゃったのによくもそうやってのうのうとネテラルナ。」「死んだ気がしねーだと?じゃア、おめえ、死んだことがあるのか?ねーだろう。」とたたみかけ二人は浅草に戻る。

残っていた人が、辟易しながらも「ジャア、本人だという人。ここに来て良く見て下さい」というところがナントモ!

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熊は死体を抱き起こし「情けねえ、浅ましい姿になりにけり、こんなことならもっとうまいものをくっておくんだった」と嘆く。
そしてつぶやく言葉が落語史に燦然と輝く名せりふ
抱かれてるのは確かに俺だが、
抱いてる俺はいってえ、誰なんだろう?
始めっから終いまで”アリエナーイ!”の世界だ。快調に飛ばすギャグの連続、スピーデイな展開、ほんのイットキでも客がしらけたらオワ、お終いだ。
噺家の力量が問われる。八の凄まじい思い込みがギャグであってしかも納得できる、八の思いに客は乗っていかなければならない。半分は笑って半分は熊を思って。
サゲで客は突然熊と同化する。
そうして

こうして笑っている俺はいってえ、誰なんだろう?

秋の酒は・・の時いたる、秋葉原「赤津加」、つとに聞く店、初めて行った。なるほどなるほど。
蕎麦は三軒茶屋のエート駅のそばの店、「安曇野」たっけ。おいしかった。
Tracked from 男と女の・・・ at 2006-09-20 11:36
タイトル : 男と女の・・・
男と女の出会い、恋愛、結婚、離婚etc・・・男と女の悩みの解決に... more
Tracked from どうにも変な音楽家 at 2006-09-21 15:03
タイトル : 自分と自分自身?
 私がよく引用する『脳と人間』の著者である精神科医の計見一雄氏が新たな本を出していることを最近知った。『統合失調症あるいは精神分裂病』(講談社・選書・メチエ、2004)である。  前者は10年かかったという力作だが、今度のは1年に渡った講義録だから案外気楽に読める。テーマは「精神病も単に病気の一つに過ぎない」という認識を深めてもらいたい、ということ。  そのなかの一節に「主体」(自分)、「自己」(自分自身)という言い方に焦点を当てているのがあって、「オヤ!」と思って寝ころんで読んでたのに起きて...... more
Tracked from どうにも変な音楽家 at 2006-09-21 15:09
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 夏になると良く演じられる落語がある。「番町皿屋敷」「酢豆腐」「傘碁」「須磨の裏風」「鰻の幇間」など。  ここ最近、殺伐たる話題が多いせいか、落語を聴いていないので久しぶりに古今亭志ん朝、三遊亭金馬、桂文楽の「酢豆腐」を聞いてみた。ブルーな時には落語が一番。  町の職人たちが「馬鹿っぱなし」をしていて「どうでぇ、暑気払いにいっぺぇやろうじゃぁねぇか」っていうことになる。  酒はあるが肴がない。ぬか漬けの古いのを見つけてそれを肴にしようというんで、一騒ぎ。「江戸っ子」の職人たちの会話が面白...... more
Tracked from どうにも変な音楽家 at 2006-09-21 15:57
タイトル : 日本では何でも「道(どお)」になる?
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Commented by きとら at 2006-09-19 23:03 x
 私はラジオ世代ですから、小学生の頃、落語・浪曲をよく聴きました。
 古典は勿論ですが、柳亭痴楽や三亀松まで。
 
 今夜のおかずは何だろう~
 ジャガイモかコロッケか
 それとも魚のアラかしら~♪♪
 
 あんまり、いいもん、食ってねえな。(ここで笑い)
 
 浪曲は虎造の「灰神楽三太郎」を子供ながら唸ってました。あの頃、娯楽が少なかったせいもあるでしょうが、大人の文化を子供も楽しんでましたね。
 多少は耳が肥えてます。いまの落語家は駄目ですねぇ。
Commented by 風屋 at 2006-09-19 23:25 x
お恥ずかしい限りです(^^;
リンクまでしていただき、情けないやら恥ずかしいやら(笑)

ところで日曜夜に明石家さんまが出ている
「からくりTV」をご存じですか?
最後の三択クイズで「1は○○さん、2が会場、3がお茶の間」
とさんまが毎回言っています。
今どき「お茶の間」って言うタレントは他には知りません。
(そんなにTVを見ている訳ではないのですが・・・)
いつもそれを聞いていて「いいなぁ」と感じている次第です。

生落語、見て(聞いて)みたいなぁ。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-19 23:45
きとらさん、私は落中、毎晩落語テープを聴かないと眠れないのです。夜目が覚めたら又きくのです。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-19 23:47
風屋さん、勝手にすみませんでした。
理髪店に行くのを「頭を刈りにいく」という世代です。
ヒマを作ってちょっと寄席を覗いてみて下さい。楽しいですよ。
Commented by mitsuki at 2006-09-20 06:03 x
死語といえば、お気楽もりっぱな死語ですね。
Commented by knaito57 at 2006-09-20 08:19
志ん生、文楽、円生、金馬……一度も高座を見たことがないのに、その表情から口吻まで蘇ってくるのはなぜか。真空管ラジオにかじりついて聞いたあの時間がそれだけ濃密だったということか──恵まれすぎた“映像の時代”に、ふとそう思います。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-20 11:16
mitsukiさん、気楽はつかわれているけれど「お」がつくと、たしかに”休語”ですか(笑。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-20 11:18
knaito57さん、今でも私はテレビの落語がどうも苦手です。ライブかテープです。臨場感が何かテレビは違ってしまうように思えます。不思議といえば不思議です。
Commented by hanabi_cyu at 2006-09-20 14:08
ご無沙汰してました。コメントをありがとうございましたm(__)m

「粗忽長屋」・・笑ってしまいました☆
知り合いの息子さんが、落語家をやってます。
二つ目ですが、自分で仕事を取らないと生きていけないと言ってました。
親御さんは、落語家になった時に「 もううちの子じゃない」と言ってましたが・・・やっぱり自分の子供ですよね、今では、一生懸命に応援しています^^
Commented by seilonbenkei at 2006-09-20 18:06
今や落研は私語の世界でございます。
Commented by hanamaki3 at 2006-09-20 20:06
私も小さい頃、きとらさんと同じようにラジオで落語や浪曲聴きました。
父親と一緒に。
でも、内容はあんまり憶えてないんですよねぇ。
それでも広沢寅蔵の名だけはしっかりと。
Commented by olivia_becky at 2006-09-20 21:50
今、英語で書いてある落語の本を読んでいます。
言い回しがなかなか面白く、とても勉強になています。やっぱり辞書がないときついところが、また良いです~
そういえば、6月だったか、末廣亭に行こうと思ったら、受付(?)のおじさんに満席で入れないよ!と簡単に断られた記憶があります。
リベンジしたいのにまだいけてない。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-20 23:05
hanabi_cyuさん、ごきげんよう。知り合いさんによろしく、といっても何の役にも立たないかな。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-20 23:07
seilonbenkeiさん、死語でなくて私語ですね。なるほど、なんとなく。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-20 23:08
hanamakiさん、もう一度聞きなおしてください。小さい頃の何かが生き返りますよ。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-20 23:11
ベッキーさん、英語で!枝雀という名人?がアメリカでやったという話がもう相当前です。人間の真理を語るのだから通じるのかもしれないなあ。
Commented by Fou at 2006-09-21 04:03 x
こんばんは、
眠れずに起きているなどということはないかしら?

デカルトの第一歩;Je pense, donc je suis.
の対極にあるような熊さんの問いは深く哲学的ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-21 08:01
Fouさん、お帰りなさい。
落語というのはシュールレアリズムであり仏教であり哲学である、ま、人間観察の粋みたいなものですから。
Commented by oscar_pittarison at 2006-09-21 15:14
初めまして。Count_Basie_Band様のブログから飛んできました。
古典落語か好きな人が好きな人が多いんですねぇ! 心強い限りです。
失礼ながら2つトラバを送らせていただきました。
Commented by oscar_pittarison at 2006-09-21 16:00
も一つ、トラバを送らせて頂きました。少々不躾ですがお許しを。何せ落語は私の心の古里なもんで。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-23 09:16
oscar_pittarisonさん、いらっしゃいませ。TBもありがとうございます。自己と主体、いささか二日酔いの私(それを苦々しく見つめている俺もいるのですが)には難しいような気もしますが。
>落語は心の古里
してみればoscarさんと手前は同郷の士、ひとつよろしくお引き回しのほどお願いします。
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by saheizi-inokori | 2006-09-19 22:15 | 落語・寄席 | Trackback(4) | Comments(21)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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