たまにはミステリもいいもんだ ドナルド・E・ウエストレイク「聖なる怪物」(文春文庫)

コミック・ミステリーをいろいろ書いていて俺も何か読んだ気がするが覚えていない。
1933年生まれで60年に作家デビューだから若い頃に読んだのだと思う。
筆名もいくつか使い分けていてリチャード・スターク名義の「悪党パーカー」シリーズも有名、これは非情な悪党が主人公の犯罪小説だ。

たまにはミステリもいいもんだ ドナルド・E・ウエストレイク「聖なる怪物」(文春文庫)_e0016828_20371492.jpg
本書は1989年発表のコミックでも犯罪小説でもないユニークなミステリだ。

スーパースター、ジャックはいまや演技すら必要としない。
売り物となった笑顔と存在感を一年に一度問題作で披露すれば8000万ドルが稼げる。
彼自身がひとつの産業と化している。
弁護士、エイジエント、マネージャー、秘書、会計士、売春婦、麻薬デイーラー,形成外科医、元妻、親類、友人、庭師、プール屋、ジム・インストラクターたちの住む村全体を支える産業だ。

ジャックは雑誌記者のインタビューを受けている。
躁状態のように正気半分と夢半分を語るがごとくにジャックは半生を語りだす。
ひとりのスーパースターの誕生の物語。
作家はアメリカ映画・TV界で多くの作品の原作や脚本を書いて成功している。
ショウビジネス界の裏事情には通暁しているから、その物語は迫真の面白さがある。
門外漢にはこういうディティルを書けないだろうな。

たまにはミステリもいいもんだ ドナルド・E・ウエストレイク「聖なる怪物」(文春文庫)_e0016828_21135650.jpg

よく伝えられる実在のスターたちの真偽のほどが明らかでなかったスキャンダルが、やっぱりホントなんだと思えてくる。
そう、これはアメリカ映画界の風刺小説でもある。

読み始めると直ぐに暗い闇の部分があることに気がつく仕掛けだ。
ネタ割れかと思っても先へ先へ読ませる筆力が立派。
そして最後に・・。

アットいうまに読んでアット、いうかどうか?それはあなた次第だ。

写真は会津坂下「立木観音」、この間行ったばかりのなつかしの地、テレビに偶然映っていてびっくり。8・5メートル、立木に弘法大師が彫ったとされる。
あまりテレビを見ないのに、昨日の大曲といい、今日の坂下といい、マスコミの悪口いってるのが聞こえたかな。
Commented by ちゃめ at 2006-08-29 21:07 x
>聞こえたかな。
 聞こえてるかも知れませんね(笑)。
 面白そうな本ですね。
 saheizi さんの読書量には、驚嘆です。
Commented by saheizi-inokori at 2006-08-30 09:39
ちゃめさん、おはようございます。
結構気の利いたせりふがあちらこちらにあって楽しめますよ。
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by saheizi-inokori | 2006-08-28 20:48 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(2)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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