立て シューセイ! 田中秀征「判断力と決断力 リーダーの資質を問う」(ダイヤモンド社)
2006年 08月 19日
著者は「カバン(金)」「カンバン(肩書き)」「ジバン(地盤・既得権益層)」の3バンとの潔癖すぎるほどの訣別を貫徹して落選4回の末に代議士になった。
新党さきがけを結成、細川政権で首相特別補佐をつとめる。
小選挙区制の下、小坂・現文部大臣に負ける。
新自由クラブの理論的出発点でもあった「自民党解体論」は俺が一番好きな本だ。
小泉とは前から近い。なんで?シューセイフアンとしては言いたくもなった。
この本でシューセイはいう。
自ら退路を絶って「郵政民営化」に政治生命をかけた小泉は”決断力”において卓越した政治家である。
自分の物差しでしかものを考えられず願望と事実を混同する人々は、首相の思いの強さと性格を理解できなかった。
しかし「国際協調」と「日米協調」の両立が難しい局面で外務官僚の描いた「日米優先」のシナリオに乗ってしまったことは、甘すぎて失敗だ。
外交についての原則を持っていなかった。ヒラメキの限界だ。
”判断力”においては問題な政治家である。
「官」から「民」への改革もその中間に「公」とでも呼ぶべきグレーゾーンを残して公務員数だけを減らしたのでは真の財政再建に繋がるとはいえない。
これからの実行される改革を見定めなければならない。
何よりも省益を優先(国益優先の美名のもと)し情報量が限られている官僚には判断力、決断力の双方に限界があり、彼らの提言には落とし穴がある。
たとえば国連で常任理事国になることを最大の目的とした外務省の行動はナンセンスであるばかりか国連改革に向けて日本が果たすべき重要な役割を放棄したことになる。
そういう外務官僚の与えた限られた情報と建言に乗ったことがイラク戦争において決定的なミスにつながった。
田中が主役となって(なろうとはまったく思っていなかったのに)誕生した細川政権の舞台裏を読むと憂国の士の息吹を感じて爽やかな・しかも熱い共感を覚える。
あまりにも急激に準備もなく牛耳を取らなければならないところに押し出されたた田中・細川の悲劇、歴史の悲劇だ。
歴史の悲劇といえば石橋湛山政権が石橋の病気と彼自身の出処進退の見事さのゆえに2ヶ月で終わったこと。
政権を譲るに際し石井光次郎でなく岸信介を後継にしたこと。
田中はもし石井であれば日米安保改定はなされず、
ドイツのズデーデン占領を認めることによってヒトラーのなすがままになって第二次大戦への道を用意した仏・ダラデイエ首相、英、チエンバレン首相の判断力・決断力の無さを容赦ない事実で簡潔に処断する(ダラデイエは判断力に優れていたが決断力がなかった)田中は二人の名前に日本の誰を重ねているのだろう。
二人を糾弾した筆でドゴールとチャーチルによって世界が救われていく経緯を書く田中は今の日本に誰を待望しているのだろう?
田中の核心を突く無駄の無い、気迫に満ちた文章は、鋭く田中の想いを伝えている。
ドゴール、チャーチル、高杉、いずれも権力から遠ざかった失意のときを過ごした後歴史の要請に応える形で大きな仕事をしている。
昭和25年訪日したダレス国務長官と会談した席上、追放解除の直前だった石橋は
湛山の言葉に重ねて田中は言う。
チャーチルが瀬戸際のイギリス・ヨーロッパ・世界を救うべく歴史の表舞台に登場したとき、彼は63歳、10年の雌伏の後だった。
新党さきがけを結成、細川政権で首相特別補佐をつとめる。
小選挙区制の下、小坂・現文部大臣に負ける。
新自由クラブの理論的出発点でもあった「自民党解体論」は俺が一番好きな本だ。
小泉とは前から近い。なんで?シューセイフアンとしては言いたくもなった。
この本でシューセイはいう。
自ら退路を絶って「郵政民営化」に政治生命をかけた小泉は”決断力”において卓越した政治家である。
自分の物差しでしかものを考えられず願望と事実を混同する人々は、首相の思いの強さと性格を理解できなかった。
しかし「国際協調」と「日米協調」の両立が難しい局面で外務官僚の描いた「日米優先」のシナリオに乗ってしまったことは、甘すぎて失敗だ。
外交についての原則を持っていなかった。ヒラメキの限界だ。
”判断力”においては問題な政治家である。
「官」から「民」への改革もその中間に「公」とでも呼ぶべきグレーゾーンを残して公務員数だけを減らしたのでは真の財政再建に繋がるとはいえない。
これからの実行される改革を見定めなければならない。
何よりも省益を優先(国益優先の美名のもと)し情報量が限られている官僚には判断力、決断力の双方に限界があり、彼らの提言には落とし穴がある。
たとえば国連で常任理事国になることを最大の目的とした外務省の行動はナンセンスであるばかりか国連改革に向けて日本が果たすべき重要な役割を放棄したことになる。
そういう外務官僚の与えた限られた情報と建言に乗ったことがイラク戦争において決定的なミスにつながった。
田中が主役となって(なろうとはまったく思っていなかったのに)誕生した細川政権の舞台裏を読むと憂国の士の息吹を感じて爽やかな・しかも熱い共感を覚える。
あまりにも急激に準備もなく牛耳を取らなければならないところに押し出されたた田中・細川の悲劇、歴史の悲劇だ。
歴史の悲劇といえば石橋湛山政権が石橋の病気と彼自身の出処進退の見事さのゆえに2ヶ月で終わったこと。
政権を譲るに際し石井光次郎でなく岸信介を後継にしたこと。
田中はもし石井であれば日米安保改定はなされず、
わが国が現在、日米同盟によって釘付けにされていることはなく、”国際協調”の方向に一層進んでいたに違いない。と断言する。
ドイツのズデーデン占領を認めることによってヒトラーのなすがままになって第二次大戦への道を用意した仏・ダラデイエ首相、英、チエンバレン首相の判断力・決断力の無さを容赦ない事実で簡潔に処断する(ダラデイエは判断力に優れていたが決断力がなかった)田中は二人の名前に日本の誰を重ねているのだろう。
二人を糾弾した筆でドゴールとチャーチルによって世界が救われていく経緯を書く田中は今の日本に誰を待望しているのだろう?
田中の核心を突く無駄の無い、気迫に満ちた文章は、鋭く田中の想いを伝えている。
ドゴール、チャーチル、高杉、いずれも権力から遠ざかった失意のときを過ごした後歴史の要請に応える形で大きな仕事をしている。
悪しき流れを変える仕事は、その流れに関与したり、その流れに乗って登場した指導者にはできない。占領軍当局に毅然としていうべきことを言ったために公職追放の憂き目にあった石橋は政界、財界、さらには”進歩的”な学者、、すべての人の理解を得られなくても先を見た自らの正しいと思うことを主張した。その所論の正しさはその後の歴史が証明していると田中はいう。
組織に歓迎され、あるいは許容される判断は、組織の今まで通りの存続を大前提としている。組織の改廃や基本方針の変更をもたらすような判断は、組織は決して受け容れない。
昭和25年訪日したダレス国務長官と会談した席上、追放解除の直前だった石橋は
ダレスに軍備全廃論を説き、アメリカが世界政府の創立に向けて動き出すように進言した。このとき現実主義者のダレスはどんな顔をしただろうか。全く予期せぬ進言に目を白黒させただろう。湛山は、いつ、いかなるときも臆面もなく理想主義の旗を振り続けた。さきがけの代表代行のころ、田中を評して「原理主義者」といったヤカラがいるそうだ。その子たちには「無原理者」(主義すらない)の名前を進呈しよう。
湛山の言葉に重ねて田中は言う。
「自分」が欠けていれば独自の判断ができるはずがない。湛山が「自分」というのは、「志」と置き換えてもよい。志がなければ判断の基準を持たないも同然。判断、少なくとも一貫した判断は一貫した志からのみうまれるものだ。
チャーチルが瀬戸際のイギリス・ヨーロッパ・世界を救うべく歴史の表舞台に登場したとき、彼は63歳、10年の雌伏の後だった。
Tracked
from 堀田信弘のリーダー養成塾..
at 2006-11-17 09:59
タイトル : 出処進退
出処と進退。私は、部下に「こんな仕事をやってほしいのだが」と告げて、ある役職に就いてもらう時、「私はそのような器ではありません」と固辞されるケースは、100人中一人いるかいないかである。... more
出処と進退。私は、部下に「こんな仕事をやってほしいのだが」と告げて、ある役職に就いてもらう時、「私はそのような器ではありません」と固辞されるケースは、100人中一人いるかいないかである。... more
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antsuan at 2006-08-19 16:55
チャーチルが日本に助けを求めていたら大英帝国の没落はなかったでしょう。英国の歴史家はチャーチルの英断を評価していないようです。立場は違って東條英機の英断に不純な志があったとも思えません。参謀の判断力と司令官の決断力、これが揃わない事には何事にもうまくいかないと云う事でしょうね。
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saheizi-inokori at 2006-08-19 17:02
antsuanさん、チャーチルのフランス艦隊爆撃と、ナチを叩く為にはソ連とさえ組むという決断は学校秀才の集まる官僚が判断、決断もできないことです。
まさに指導者には両方の資質が求められます。一人で両方が備わっていることはまれです。おっしゃるように優れた補佐役が(官僚以外の)必要だということ、そのことを自身が理解していることが必要です。
よくは知らないでものを言っているのかもしれませんが東条はその意味で石原を切るべきではなかったとおもいます。
もっとも石原の方が切ったということかも知れませんが。
まさに指導者には両方の資質が求められます。一人で両方が備わっていることはまれです。おっしゃるように優れた補佐役が(官僚以外の)必要だということ、そのことを自身が理解していることが必要です。
よくは知らないでものを言っているのかもしれませんが東条はその意味で石原を切るべきではなかったとおもいます。
もっとも石原の方が切ったということかも知れませんが。
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sakuraasako at 2006-08-19 20:34
田中秀征さん、大好きです。
あまのじゃくな私は、テレビの画面上でわかった顔してしゃべるコメンテーターというものがほとんど嫌いで、そのごもっともな意見に、いちいち反発したくなるのですが、日曜の朝の関口さんの番組の田中秀征さんにだけは、デレデレと頷いてしまいます。
あまのじゃくな私は、テレビの画面上でわかった顔してしゃべるコメンテーターというものがほとんど嫌いで、そのごもっともな意見に、いちいち反発したくなるのですが、日曜の朝の関口さんの番組の田中秀征さんにだけは、デレデレと頷いてしまいます。
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saheizi-inokori at 2006-08-19 21:07
asakoさん、秀征は人間的に優しい。だからコテンパンにやっつけるということをしません。
しかし、いうべきことやるべきことは必ず言い、実行します。
文学の道に進んでも必ず秀でた作品を書いただろうと思います。
しかし、いうべきことやるべきことは必ず言い、実行します。
文学の道に進んでも必ず秀でた作品を書いただろうと思います。
田中秀征という人を実はあまり良くは理解していなかった私。
つい最近、長野県の県知事選の結果を踏まえた意見が
朝日新聞に掲載されて、いたく感心し、うなずきました。
そのときに、この人って実はすごい人かも・・・とも思いました。
私の、いや、田中派の県民の思っていることを代弁してくれた!
という感じでした。
さて、これを読んだか読まないかしりませんが、
村井さんはどう改革を進めていくつもりでしょうか・・・。
次期自民党総裁は・・・?
つい最近、長野県の県知事選の結果を踏まえた意見が
朝日新聞に掲載されて、いたく感心し、うなずきました。
そのときに、この人って実はすごい人かも・・・とも思いました。
私の、いや、田中派の県民の思っていることを代弁してくれた!
という感じでした。
さて、これを読んだか読まないかしりませんが、
村井さんはどう改革を進めていくつもりでしょうか・・・。
次期自民党総裁は・・・?
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saheizi-inokori at 2006-08-21 21:39
園長さん、その記事を私は読んでいません。長野にいる友が田中さんが出れば文句なしに知事に当選するのになあ、と悔しがっていました。彼がこのままで終わるとは思いたくないです。
by saheizi-inokori
| 2006-08-19 13:42
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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