人生の機微?思いもかけないことからはじまる アルマ・マーラー「グスタフ・マーラー」②
2006年 06月 30日
1901年、マーラーとアルマが初めて会ったのはある解剖学者夫妻の家でだった。21歳の美女にして作曲の才溢れんばかりのアルマ。マーラーのスキャンダラスな評判(デマ?)を聞いていたし”額の広い、小柄でせっかちな男”には会いたくなかったのだが成り行きで。
アルマはクリムト(あの有名な画家)とブルクハルトという”オーストリア一の自由な精神の持ち主”にして”アルマの子供の頃からの憧れの人”・劇場の監督・詩人の間に座っている。三人は陽気に盛り上がる。マーラーはテーブルの向かい側に座ってじっとその様子を見聞きしていたが、ついに「ひとつ冗談のお仲間に入れて」と自分の隣の女性をほったらかしてしまう。アルマは18歳も年上の、既に著名な音楽家に一歩もひけをとらない(生意気な)応酬をしてやがて人々は二人だけをほっておく。
マーラーが後を引く約束をしようとする。
しかし、運命の歯車は回りだす。アルマの愛と苦悩の日々が始まる。考えていることとチグハグナことをやってしまうことから転機が。人生とはそうしたものかもしれない。
アルマの自己犠牲的な愛・献身に支えられて死ぬまでの10年間のマーラーの作曲・演奏活動が成立する。
しかしアルマは”火の女”だ。
アルマが観察し、描写する当時のウイーン音楽界、社交界、リヒャルト・シュトラウス、ブルックナー、シエーンベルグ、デユカス、ドビユッシーなどの人物・行動・・。軽妙にして機知に富み寸鉄人を・・の趣がある。彼女の思い出・主観であるから誇張や思い違いもあるとは思うけれど、なんとも言えないリアリテイを感じる。直感の人だったんだ。
アルマはクリムト(あの有名な画家)とブルクハルトという”オーストリア一の自由な精神の持ち主”にして”アルマの子供の頃からの憧れの人”・劇場の監督・詩人の間に座っている。三人は陽気に盛り上がる。マーラーはテーブルの向かい側に座ってじっとその様子を見聞きしていたが、ついに「ひとつ冗談のお仲間に入れて」と自分の隣の女性をほったらかしてしまう。アルマは18歳も年上の、既に著名な音楽家に一歩もひけをとらない(生意気な)応酬をしてやがて人々は二人だけをほっておく。
マーラーが後を引く約束をしようとする。
私は自分が情けなかった。自分が、心とはうらはらに行動するのがよくわかっていた。生来ひどいはにかみ屋のために、大勢の前に出たり、初めての人に会ったりすると、自分で自分が思うようにならなかった。いつまでも押し黙っていては、突然場ちがいな返事をしてみたり、かと思うと、今夜のように妙に度胸が良くなって、手の内のすべてをさらけ出してしまう・・・。俺にはよく分かる。そういう気持ち。
しかし、運命の歯車は回りだす。アルマの愛と苦悩の日々が始まる。考えていることとチグハグナことをやってしまうことから転機が。人生とはそうしたものかもしれない。
アルマの自己犠牲的な愛・献身に支えられて死ぬまでの10年間のマーラーの作曲・演奏活動が成立する。
しかしアルマは”火の女”だ。
マーラーはドストエフスキーの信奉者であり、つねづね、「この地上に誰か一人でも苦しんでいる者がある限り、どうしてわれわれは仕合わせになれようか」と言っていた。しかし、多くの場合、このようなことを口にする人間は自己本位の人間であり、時に完全な利己主義者であることが多いものである。・・(略)・。マーラーも必ずしも自分の信条を実践したとは言えなかったが、彼にその気があったことは確かである。サラッと書いてのけるアルマ。
アルマが観察し、描写する当時のウイーン音楽界、社交界、リヒャルト・シュトラウス、ブルックナー、シエーンベルグ、デユカス、ドビユッシーなどの人物・行動・・。軽妙にして機知に富み寸鉄人を・・の趣がある。彼女の思い出・主観であるから誇張や思い違いもあるとは思うけれど、なんとも言えないリアリテイを感じる。直感の人だったんだ。
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porarisu
at 2006-06-30 02:25
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グスタフ・マーラーの書評は面白かったです。 豪華な登場人物、アルマの鋭い観察と描写が伝わりました。美貌にもおどろいています。
貧乏くらべみたいなこと、書いてごめんなさい。でも、こちらのほうも面白かったわ・・・
貧乏くらべみたいなこと、書いてごめんなさい。でも、こちらのほうも面白かったわ・・・
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antsuan at 2006-06-30 18:40
どうして外国の女性は年齢差を超えた絡み合いが若いうちから出来るのでしょうか。不思議だ! TB有り難う御座いました。
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saheizi-inokori at 2006-06-30 23:03
antsuanさん、アルマは格別でもあるようです。怖いくらい。
こんにちは。
クラシック音楽に全く造詣が無い私ですが、アルマ・マーラーについては画家のココシュカがらみで認識しました。アルマとの関係を描いた彼の代表作「風の花嫁」は、死ぬまでに一度見たい絵のひとつです。
ココシュカは彼女と別れた後、彼女に似せた等身大の人形を作らせた(・・・)らしいです。一体どれだけ魅力ある女性だったのでしょうね?
クラシック音楽に全く造詣が無い私ですが、アルマ・マーラーについては画家のココシュカがらみで認識しました。アルマとの関係を描いた彼の代表作「風の花嫁」は、死ぬまでに一度見たい絵のひとつです。
ココシュカは彼女と別れた後、彼女に似せた等身大の人形を作らせた(・・・)らしいです。一体どれだけ魅力ある女性だったのでしょうね?
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saheizi-inokori at 2006-07-03 08:06
marionさん、ココシュカ知りませんでした。この本は彼女の書いたものですから、しかもマーラーとのことばかりですから当時並行的に存在したラブアフエアについては暗示にとどまっています。80過ぎまで生きたようですね。
by saheizi-inokori
| 2006-06-30 00:15
| 今週の1冊、又は2・3冊
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