誰が悪いのか? 田中慎一「ライブドア監査人の告白 私はなぜ粉飾を止められなかったのか」

2004年7月、港陽監査法人に入社。5年9月期からライブドアの監査責任者となる。著者の言によればその時までに既にライブドアは今回堀江氏らが逮捕・起訴された「風説の流布および偽計取引」と「有価証券の虚偽記載、いわゆる粉飾決算」については実行済みであった。著者はそのふたつの事件について不正の疑いを持ち問題提起を行い、特に粉飾決算についてはそのスキームを解体した。
しかし”遅すぎた”。

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そのとき彼として出来るだけの戦いはしたものの、やはり港陽監査法人の一員としてもっと強く会社にあたるべきだったと後悔・反省もしている。検察にも全面的に協力し自らの公認会計士としての資格も返上している。

事件のスキーム、経緯など分かりやすく説明する。確かにこれも”国策捜査”ではあった。だからといって堀江・宮内らの罪がないと言うことにはならないが。ナゼこの事件は起きたか?「株主資本至上主義の罠にはまった」というのが著者のみたてだ。
トップの堀江氏が株主利益に報いるため経営陣に発破をかける。しかしながら、ミッションを与えられた宮内氏らは、現在のライブドアのビジネスモデルでは早急に結果を出すことが厳しい、と感じていた・・・(略)(メインのポータルサイト事業などに悲観していたから)手っ取り早くカネになるところに目を付けざるを得なかった。・・(略)そういうプレッシャーの中で行き着いたのが”粉飾”だった。
さらに凄まじいスピードで変化し続ける実体経済・企業行動に対して法律・システム・行政・・すべてが後手に回っていることが堀江たちの跳梁跋扈を許したと言う見方もある。そういう人たちは又もや後追いで法律改正を・規制強化を考える。

俺は、この時代がこの犯罪を生んだと思う。既に飽和状態にある”需要”、その中で資本主義が成長を続けていく為には無理矢理需要を創り出さなければならない。新たな欲望、それが実体を伴わない虚ろなものであっても、人間性を歪めるようなものであっても、を喚起し続けなければ市場はないのだ。六本木ヒルズ族なるものが既にそういうものの象徴ではないか。
そういう意味でも今さら堀江や村上を悪者にしているのはズルイ。彼らこそ現代が待ち望んできた英雄だったのじゃないですか?だからマスコミも小泉も若者たちも拍手喝采して迎えたんだろう?
そのことを考え直さずして世直しが聞いてあきれる。検察の権力に何が出来よう。
俺は、今の世の中は、全体がもう少し小さくなることを我慢しあってやり直す、しかないのだと思う。後追いで法律やシステムを変えていってもいたちごっこ。村上を縛る法律ひとつちゃんとしてない。頭のよいハシッコイ人たちがもっと”ヨキコト”をする気になる世の中を作らなければ、と思う。福井などという人が偉くなっていて、それをかばうような偉い人がいる世の中であることが一番の問題じゃないですか。

著者は監査法人が果たすべき役割についても書いている。彼はライブドアの責任者になってから「これを直さないと私は監査法人を降ります」という”脅し文句”を多用して会社のありようを変えてきたことについても「いつまでも同じことばかり言っていてもいつか効き目はなくなる」から早晩監査法人をやめようと思った。しかしつまるところは制度や仕組みではなく”人”の問題でいかに誠実に自らの任務を完遂するかだと言う。

俺も今までの会社人生で三度、会社のあるべき姿に対して現実が間違っていることに抗議してその職を辞めた。だけど辞めたら少しはよくなるかと思ったらまったく逆で尚更ひどいことになってしまった。

辛いねえ。この世の中に生きていくのは!でも結局は自分の心だ。自分の心に背いて生き続けていくことはもっとも辛いことだと思う。
(ダイヤモンド社刊)
Commented by antsuan at 2006-06-26 12:38
松下幸之助のように会社のあるべき姿を追い求める経営者もまだいると思いますが、そう言う経営者を馬鹿にするような今の資本主義社会には付いて行けません。
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-26 14:52
お客様のために何かのサービスをする。そのために会社がある。あたり前のことなのですがその順番が逆だったりお客様不在があたり前の会社が多いように思います。
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by saheizi-inokori | 2006-06-25 22:17 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(2)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori