世界恐慌とふんどしの関係とは? 米原万里「パンツの面目 ふんどしの沽券」(筑摩書房)

万里さん、ミッション系の幼稚園に行ってたんだって。先生がテンチソーゾー物語を紙芝居で話してくれた。「禁じられた果物を食べたら裸でいるのが恥ずかしくなって、イチジクの葉っぱを・・」。わたし(万里さん)は質問した。
先生、その葉っぱ、どうして落っこちないんですか?
セメダイン?でもオシッコするときに、引っぺがえすの痛いよ。糊かもしんないね。セロテープだよ。がやがや。コバヤシ先生、絶句。当たり前だよね。

みんなはイチジクがあるマリちゃんちに集合。イチジクの葉っぱを貰って帰る。万里ちゃんは、夜、お風呂に入るときにいろいろ試してみる。セロテープが一番具合がよかった。
疑問がとけて晴れやかな気分で翌朝幼稚園に着くと、とんでもない事態になっていた。タケウチ君と相似形の、角刈りのお父さんが幼稚園に怒鳴り込んできたのだ。わたしの家からイチジクの葉を持ち帰ったタケウチ君は局部に直接セメダインを塗り込んでしまったらしい。

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万里さんの多分最後の随筆集。父上がフンドシの愛好者だった彼女は「日本固有の価値や拠り所を見直してやろう」くらいの軽い気持ちで「ちくま」にフンドシとパンツについて連載を始める。
ところが事はそれほど簡単ではないことに気づく。
人間の下半身を被う肌着に関する考察をするという試みは、進めば進むほど途轍もなく奥深く途方もなく広大な世界であることを思い知らされるのだった。

単行本化するに際し、連載時に盛り込めなかった面白さ、深さ、複雑さを何とか反映させたいと思った。
ああ、しかし!
わたしの体内に卵巣癌が発覚し・・(略)人生そのものの時間がカウントダウンに入ってしまったのだ。
わたし、は観念する。今現在到達し得たものを世に出し・・フンドシ担ぎになってやろう、と。

ご謙遜だ。参考資料リストにあげられた142冊の図書。語り口はいつもの米原節でシモネッタ満載だが、下着の歴史の中に窺われる人間の本性、まさに素っ裸の真実を語るその心は真面目そのもの。とくに下着すらもてなかった貧しいロシアの民衆などについてくどいくらいに調べ・報告する。今度誰かと酒を飲んだら話してやろう、というような意外・びっくり仰天エピソードがギッシリ。

昭和2年に「褌」という本が出て好評らしく瞬く間に一年で9版までが出る。この本について、まさに玉石混淆の羅列、といい、たとえば、
いろはのほの字とかけて、褌の結び瘤ととく→心は へ(屁)の上にある
と引く、わざわざ引いてみせる。真面目だけど”スキダネー”という彼女の面目がまざまざと伝わってくるよ。
ちなみに冒頭のイチジクの葉っぱの謎もちゃんと聖書を調べて答えを出しているのです。
Commented by sakuraasako at 2006-06-17 22:03
これは、すばらしい本かもしれません。
特に私にとっては。
なんとタイムリーなご紹介を。
さっそく手に入れなければ。
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-17 23:11
ふんどし学の権威を目指そう!
Commented by molamola-manbow at 2006-06-18 01:16
東南アジアの山岳民族、フィリピンの島部、アフリカの東西海岸部、ミクロネシアにアボリジニ・・・・・。みんな布を越に巻きつけるフンドシ文化圏。
ウルルン滞在記でフンドシの巻き方を教わるニッポン男児を観た記憶が・・・・・。
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-18 09:06
manbowさん、そうなんです。日本男児は「南方文化たるふんどしを取り入れている温帯文化が日本だ!」と変な威張り方もしているそうです。記事中の「褌」という本の中にあるそうです。
Commented by sakuraasako at 2006-06-18 10:58
manbow さん、佐平次さん、おはようございます。
昨日気づいたのですが、藤原新也さんの著書 『メメント・モリ』 中で
「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」 という文章とともに掲載されている
二匹の野良犬に食べられている人間の写真。
そのヒトが身につけているのが一枚の赤いふんどし(のようなもの)なんですよね。
Commented by 髭彦 at 2006-06-18 11:12 x
数年前に若いアメリカ人の写真家の個展で、ガンジス河のほとりとベトナムの街角の2枚の写真につけられたキャプションを思い出します。

dog eat man
man eat dog

ガンジスの写真は藤原新也と同様の光景。
ベトナムのは、自転車に乗った中年の男が四足を縛った犬を肩に背負っている情景、でした。
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-18 12:09
おお、なんだか今度は一転どういう話になるのでしょう?鮫をよけても犬はよけられなかった?虎は死して・・人は褌を?
Commented by Fou at 2006-06-18 12:10 x
asakoさん、
「バナラシの光景については、40年ほど前に写真家の藤原新也がガンジスの河畔で人の足をくわえる野犬の写真が衝撃を与えたことを思い出し、それが当然のようにあることも自然に受け入れられる今の心境」(一昨夜、夫からのメールの中に)
夫が先般のインド旅行でガンジス河に漕ぎ出したのはこのVaranasiでした。河畔の寺院前では死者が火葬に。 夫の居るネパールでも火葬場は河畔の寺院の川岸です。先春、バクタプル(世界遺産の古王都)で友人(ドイツ人)が街の散歩のガイドをしてくれた時、城壁の外、どぶのような川沿いの、古い寺院がぽつぽつとあるだけのコース。彼の案内はいつも予告なし、解説なし、「これは?」と訊けば教えてくれる。対岸に煙が見える、一団の人が居る、「あっ」と私は小さな声を上げ、彼を見上げた。優しく微笑んで軽くうなづいた。雨もよいの昼前。こんな風にさりげなくネパールの弔いを見せてくれたかったのだろう、と納得しました。20年来そこを研究の拠点にしている南アジアの民族音楽学者、ピアノ、タブラ(鼓のような太鼓)の名手でもあり、Everestの麓、5,000mの高地でネパール、インドの伝統音楽をCD録音したりする名トレッカーでもある。
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-18 12:23
ネパールというと金子みすゞ。「ネパールみすゞ基金」で設立された小学校の子供たちが「見えぬけれどもあるんだよ 見えぬものでもあるんだよ」とキレイな声で歌っているテープを聴いたこと。http://pinhukuro.exblog.jp/1426067/
Commented by Fou at 2006-06-18 15:38 x
同じ名のもう一人の現代詩人・金子美鈴さんも10年来ネパールに魅了され、カトマンドゥでネパール詩人とジョイント朗読会をなさったり...
「みすず基金」については知りませんでしたが、ネパールでは日本は二国間援助のトップ国。政府はそういうことを私たち国民にあまり知らせてくれませんが、JICAの青年・シニアヴォランティアだけでも80-100人常駐して各分野でネパール人と共に働いています(私の夫もその一員)。JICA Nepal Office はUN office と道路を挟んでお向かい同士の位置にあります。日本のNGOもいっぱい。学校の校舎を贈った日本人は多数です。
Commented by Fou at 2006-06-18 16:16 x
また間違えた。
詩人は金子美鈴じゃない、福田美鈴。金子は婚姓のはず。夫君も詩人なので、宛名を書く時によく間違えたので。
実はDataオンチ、でございます。
Commented by shimamelon at 2006-06-19 16:02
どの本か忘れましたけど、彼女の褌への愛が切々と書かれたエッセイがあったように思います。「他人の褌をかりて」をやくそうとして「プロレスのパンツ」と置き換えて、あーなんか不潔ったらしいか、と思いなおしたり、「褌をひきしめて」という言葉の訳しにくさなど。
わたしの祖父もふんどしをしていて、子供のころ、「だるまさんがころんだ」のかわりに「おじいちゃんのふんどし」と数えていました。(ただし、モトネタとして「インディアンのふんどし」があるんですけどね)
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-19 20:03
そうそう、他人の褌で相撲を、を「他人のパンツでプロレスを」と訳したんだそうですね。なんともいえないおかしさがある話ですね。モサクさんて、あったことないけれどこういう話を聞いて「それのどこがおかしい?」とマジにききかえしそうですね。
Commented by そら at 2006-06-19 22:10 x
>先生、その葉っぱ、どうして落っこちないんですか?
あはは!ぢつはこれ、私も、長年の疑問だったりします(^^;)
ふ~ん、ちゃんと答えがあるのね。読んでみたい♪
あさこさん、ふんどし談義、ついていけるように、ぐわんばれ\(^o^)/
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-19 23:20
そらさんも、ふんどし談義にひきこまれつつありますね。シーサイドさんもなんだか似たムードだし。みんな好きなんだなあ。お世話になってるもんね、下着には。
Commented by sakuraasako at 2006-06-19 23:35 x
そらさん
ひさしぶり~。鼻水、どぉ?
この本、もうすぐ手に入ります。
だから、葉っぱが落っこちない訳ももうすぐわかるのです。キャッ!
Commented by Fou at 2006-06-20 01:17 x
そうね。お世話になってますね。
越中は祖父、父ともに使っていたので、小さい頃には毎日のように物干し竿にあるのを見てましたから親しいものです。
30年余り前にはお産の時に大学病院でも「出産入院時に用意するもの」の中に「T字帯」というのがありました。越中褌の半分の幅のものです。もちろん晒布製。かつては女の生理帯だったことはすでに忘れられているのでしょうね。「T字帯」と言う呼び名はいつ頃からは知りませんが、察するに外来語の翻訳のようですから、古今東西共通の「下着」だったのでしょうね。
ちなみに男のYシャツ(ヨーロッパ起源)はまさに「下着」(オール・イン・ワン)です。
褌文化は女にやさしい?こころは:洗濯がやさしい。

Commented by saheizi-inokori at 2006-06-20 09:56
なんだか見目麗しきオミナゴたちがきゃっキャッ騒いでいるからなんだと思うと・・皆様おすきですね。
Commented by そら at 2006-06-20 10:07 x
梟さん、あさこさん、おはよっ♪
私もふんどし談義に?…いえいえ、私は止まり木に止まって眺めている派(笑)これはこれで結構楽しい(キャッ!)
あさこさん、遊びに来てくださったのね!ありがと~♪鼻水はもう大丈夫♪薬を飲んだから早く治ったのか、飲むまでもない軽い風邪だったのか、判断に迷うところです(^^;)
葉っぱが落っこちない訳…それだけ教えて!って、米原さんに失礼だわね。でも、とっても知りた~い♪
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-20 10:37
そらさん、油断大敵。わたしももう3週間くらい咳が出ます。先週からお医者さんの薬もらって飲んでますが。ひどくならないけれど。気候不順と冷房の関係かもね。
Commented by naomu-cyo at 2006-06-20 18:21
 つい最近知ったのですが、米原さんは抗がん剤や手術を拒否したんだそうですね。すごい忍耐力・・・彼女とともに暮らしていた犬猫たちはさぞかし寂しがっているだろうと、本を読みつつうるうるしてしまいました。
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-20 22:47
naomu-cyoさん、それは知らなかった。いかにも万里さんらしいようなきがしますね。又彼女の本を買ってきました。
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by saheizi-inokori | 2006-06-17 19:22 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(22)

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