世界一長い小説

昼前に降り出した牡丹雪は、すぐにやんでしまつた。
もういらないかと思ったダウンと手袋、ついでにマフラーも巻いて散歩に出た。
前をはだけていたら、風が冷たい。

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図書館に本を返して、ちょっと大回りして五千歩にする。
帰ると寝ていると思ったサンチが起きている、起きたばっかり?
オムツを外しておしっこさせたが、でましえん。
もう一度抱っこして寝かしつける。

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図書館に返したのは「失われた時を求めて」のⅠとⅡ。
お世話になりました。

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入院見舞いに子供たちから貰ったお金で贅沢をさせてもらった、「失われた時を求めて」(鈴木道彦訳)の全巻13冊セットが届いたのだ。
やはり新しい、自分の本で読むのはヒトアジ違うような気がする。

僕が今までに読んだ長い小説。
「火山島」(金石範)が、二段組細かい活字で全7巻、「神聖喜劇」(大西巨人)細かい活字で全5巻、「天皇の世紀」(大佛次郎)全12巻、「戦争と平和」(トルストイ)全6巻、「チボー家の人々」(マルタン・デュ・ガール)は読んだか途中でやめたかはつきりしない、、。
ドストイェフスキーは「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」、ショーロホフ「静かなドン」やロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」、マーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」などは、中学から高校にかけて、とうじブームになった世界文学全集を母がやりくりして買ってくれたので、毎月の配本をおっかけて読んだ。
自然描写や心理描写の細部などを味合うこともなく、ひたすらストーリーを追う読み方だったが、それでも小説を読む楽しさを教えられたような気がする。
無理しても買ってくれた母が、老いたる僕の楽しみの種をまいてくれたのだ。
「太閤記」は、吉川英治のものだったか、中学か小学校のときに夢中になって読んだなあ。

このうち、「神聖喜劇」と「戦争と平和」は二度読んだ。
長さで云うと、「火山島」が一番長いが、「失われた時を求めて」は世界一長い小説としてギネスに認定されているという。
さあ、ちゃんと読めるだろうか。

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スワンは久しぶりに、社交界―サン-トゥ―ヴェルト侯爵夫人の夜会に出かける。
社交界から離脱した今、スワンの目には社交生活全体がまるで一連の油絵のように見える。
今まで気にも留めなかったたくさんの召使たちも、いつものくせでマンテーニャやデュ―ラーの絵のモデルに見えて、男の招待客たちの顏が醜いと思う。
それまでは、相手がだれか、どういう付き合い方をすべきかを見分ける実用的なしるしだった顔立ちが、ただ美的関係のみで調整されたのだ。
ちょっと違うかもしれないけれど、親しく付き合っている人を予期しない場所でふと見かけて、あ、こんな(おかしな)顔だったっけか、と感じることってあるね。

さまざまな人間の標本博物館、その特徴・人格を、辛辣かつ滑稽に描くプルーストの筆は、この夜会に登場する夫人たちに対して冴えわたる。
「いつ聴いても魅力的だこと(chrmant)」とつぶやきながら、品のよさのしるしに、この「魅力的(シャルマン)」という言葉の始まりのchを引っ張って二重に発音したが、そのために彼女は自分の唇がまるで美しい花のようにロマネスクにすぼまるのを感じたので、本能的にその瞬間に目を唇に調和させ、自分の視線に一種感傷的でぼんやりした雰囲気を与えたのであった。

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人間博物館にいたスワンを不意打ちが襲う。
それは、オデットと彼の恋のしるしであった、ヴァントウィエのソナタの小音節が演奏されたことで、オデットとの失恋を抽象的な悲しみに止めていたものが、あたかもパンドラの箱を開けたように、つぎつぎに具体的な幸福だった時の思い出が噴出してきて、スワンを打ちのめすのだ。
映画のおしまいに亡くなった人の生前の笑顔や生き生きと活動する姿を流して、観客の涙を誘うのも、そういうことだ。

プルーストは、ここで優れた音楽家が、人間の内心に潜む「別のもう一つの神聖にして超自然の世界」にアクセスし、それをこちらの世界に現実(レアリテ)に存在するものとして表現して見せる力があることを、克明に描いてみせる。
スワンはこの夜会以来、オデットとの恋が終わったことを理解する。

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by saheizi-inokori | 2026-03-11 10:16 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(0)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori