空が映るまで
2025年 12月 09日
ひさしぶりに靴を磨いた。
買ったばかりの靴なのに、ほこりだらけ、まず襤褸切れでそれを落とす。
クリニーングフォームを吹き付けて、また布で拭きとり、こんどは磨きクリームを塗って、ブラシでこする。
布で拭いて艶を出す。

子どもの頃に、母の靴を磨いてあげたことを思い出す。
二足か三足か、そんなに多くは持っていない。
その頃読んだ本に、靴磨きの少年の話があった。
「シュッシュッシューッと靴を磨きます。
空が映るまできれいに磨きます」
そんな意味のことをいって、客を集めるのだ。
僕も、母の靴に空が映るまで、とシュッシュッシューッと一生けん命に磨いた。

東京駅の丸の内北口を出たところに国鉄本社と東京北鉄道管理局があって、そこで働いた。
人前に出ると上がってしまう、緊張すると乾杯の盃を持ち上げられない。
殺気立った何百人もの労働組合員を相手に当局側の代表として団体交渉をする、そのことを考えただけでも逃げ出したくなった。
そんなときに、本社ビルの下で、靴磨きをしているSさんという人をみた。
国鉄常務理事をしていたQさんは、自分の靴を秘書に持っていかせてSさんに磨いてもらっていた。
Sさんに磨かれた靴は、森の奥深いところにある池の水面のように落ち着いた光沢をしのばせて、何かの拍子に光があたると、ピカリとひかるのだった。

僕は、国鉄を辞めてSさんに弟子入りして靴磨きになろうかと思ったのだ。
毎朝、遠くから電車にゆられてやってきて、一日中、無心になって靴を磨き、夕方になると家に帰って、風呂に入って、冷奴か何かで、焼酎を一杯やって寝る。
そんな暮らしをしたかったのだ。
それほど、たかが団体交渉や大会議の挨拶とかにおびえていたのだ。
そんなことも思い出しながら、靴を磨いた。




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買ったばかりの靴なのに、ほこりだらけ、まず襤褸切れでそれを落とす。
クリニーングフォームを吹き付けて、また布で拭きとり、こんどは磨きクリームを塗って、ブラシでこする。
布で拭いて艶を出す。

子どもの頃に、母の靴を磨いてあげたことを思い出す。
二足か三足か、そんなに多くは持っていない。
その頃読んだ本に、靴磨きの少年の話があった。
「シュッシュッシューッと靴を磨きます。
空が映るまできれいに磨きます」
そんな意味のことをいって、客を集めるのだ。
僕も、母の靴に空が映るまで、とシュッシュッシューッと一生けん命に磨いた。

東京駅の丸の内北口を出たところに国鉄本社と東京北鉄道管理局があって、そこで働いた。
人前に出ると上がってしまう、緊張すると乾杯の盃を持ち上げられない。
殺気立った何百人もの労働組合員を相手に当局側の代表として団体交渉をする、そのことを考えただけでも逃げ出したくなった。
そんなときに、本社ビルの下で、靴磨きをしているSさんという人をみた。
国鉄常務理事をしていたQさんは、自分の靴を秘書に持っていかせてSさんに磨いてもらっていた。
Sさんに磨かれた靴は、森の奥深いところにある池の水面のように落ち着いた光沢をしのばせて、何かの拍子に光があたると、ピカリとひかるのだった。

僕は、国鉄を辞めてSさんに弟子入りして靴磨きになろうかと思ったのだ。
毎朝、遠くから電車にゆられてやってきて、一日中、無心になって靴を磨き、夕方になると家に帰って、風呂に入って、冷奴か何かで、焼酎を一杯やって寝る。
そんな暮らしをしたかったのだ。
それほど、たかが団体交渉や大会議の挨拶とかにおびえていたのだ。
そんなことも思い出しながら、靴を磨いた。

子供の頃の生活、会社人生、その頃考えた事、いろいろの出来事が、自分を見ているようです。
ただ、私の場合、Saheiziさんのスケールとは比較にならないほど小さいものですが・・、
「そして、今を生きている」。あと残された時間も、「あるがまま、自分らしく」ですね。
ただ、私の場合、Saheiziさんのスケールとは比較にならないほど小さいものですが・・、
「そして、今を生きている」。あと残された時間も、「あるがまま、自分らしく」ですね。
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saheijiさん こんばんは。
私の父は、とにかく頑固で口より手の早い人でしたが、
自分の靴は必ず自分で磨いていました。
理由はよくわからない、というより下手に口を開けば、とんでもない
声で怒鳴られることがわかっていましたので、黙ってみていました。
自分で使う道具類も、いつも整然と決まった場所にかたずけられていました。
なのに私は超アバウトで、適当いい加減な娘に育ちました。
父が生きていたらと考えると恐ろしくなります。
私の父は、とにかく頑固で口より手の早い人でしたが、
自分の靴は必ず自分で磨いていました。
理由はよくわからない、というより下手に口を開けば、とんでもない
声で怒鳴られることがわかっていましたので、黙ってみていました。
自分で使う道具類も、いつも整然と決まった場所にかたずけられていました。
なのに私は超アバウトで、適当いい加減な娘に育ちました。
父が生きていたらと考えると恐ろしくなります。
> unjakuさん、親子でもずいぶん違いますね。
私はホントは整理整頓が大の苦手です。
小学校のときに、教室の私の机の引き出しがクラスで一番乱雑で先生にいつも注意されていました。
今も机やタンスの引き出しのなかはごっちゃごっちゃです。
世の中には履いたらすくに靴を磨く人もいるのでしょうね。
現役のころは、履いたズボンや背広には必ずブラシをかけて、ズボンは寝押し、後にはプレッサーにかけました。でも靴はそんなに磨かなかったな。
私はホントは整理整頓が大の苦手です。
小学校のときに、教室の私の机の引き出しがクラスで一番乱雑で先生にいつも注意されていました。
今も机やタンスの引き出しのなかはごっちゃごっちゃです。
世の中には履いたらすくに靴を磨く人もいるのでしょうね。
現役のころは、履いたズボンや背広には必ずブラシをかけて、ズボンは寝押し、後にはプレッサーにかけました。でも靴はそんなに磨かなかったな。
by saheizi-inokori
| 2025-12-09 08:04
| よしなしごと
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