入れ替わり立ち替わり
2025年 11月 13日
散歩の帰りに長生き病院によって、サンチの缶詰を買うと、奥から院長が出てきて、渡してくれたのは、僕あての表彰状、サンチ17歳をめでて「愛犬家の範」と認めてくれた東京都獣医師会世田谷支部長からのもの。
居合わせたワンちゃん連れの夫妻が「すご~い」と歓声をあげる。
15歳のときは世田谷区長からもらって、16、17とお医者さんからだ。

そのサンチは、このところ朝の缶詰は半分残して、僕たちの朝飯のパンのお裾分けをむしゃむしゃ食って、そのあと残した半分を平らげて、こんどは僕の部屋で、リンゴの薄く切ったのを食う。
まえは、ぼくより先に行って待っていることもあったのに、さいきんは居間で催促しつづけているのを連れてこなければならなくなった。
それが、けさは珍しく、ひとりでやってきた。
アッチぶつかりコッチぶつかり、可哀そうになるが、痛くはなさそうだ。
表彰されたことを知って元気が出たみたい。

上巻を読んだあと、図書館の順番待ちだった「大使とその妻」(水村美苗)の下巻が届いた。
自分の本である「メルロ=ポンティ」は、棚上げにして、こっちを読む。
上巻を読み終えたのが9月、ふたつきしか経っていないのに、ずいぶん前のような気がする。
はじめの頁に「そのうちに、ふと振り返ると、なんとこの文章を書き始めてから半年以上も経ってしまっているのに気づいた」とあって、僕も半年以上待ち続けたような気がする。
その間、金子光晴、保阪正康、クララ・E・マッテイ、エマニュエル・トッド、多田富雄、安部公房、三島由紀夫、大江健三郎、岩尾俊兵、山田稔、メルロ=ポンティ、村上隆夫、バーナデット・マーフイー、鳥飼将雅、中村光夫、鷲田清一などという面々が入れ替わり立ち替わり、この茅屋に来臨遊ばして、僕の無聊を慰めてくれた。
それがたった二月なんかであっていいものか。

貴子の生立ち、ブラジルに12歳のときに孤児として送られた父親の思い出。
車の修理工だった父親に染みついていた油と汗の匂い、
父が月を見たり、故郷の出雲の写真が出ている週刊誌を飽かず眺めたり、童謡のレコードを繰り返し聞いては泣いている姿には、僕ももらい泣きをしてしまうのだ。
父が願って、おじいさんとおばあさんも引き継いだ、貴子を「ちゃんとした日本人」に育てる教育と躾が描かれる。
その日本という国がウソをついて送り出したブラジル移民の悲惨についても。




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居合わせたワンちゃん連れの夫妻が「すご~い」と歓声をあげる。
15歳のときは世田谷区長からもらって、16、17とお医者さんからだ。

そのサンチは、このところ朝の缶詰は半分残して、僕たちの朝飯のパンのお裾分けをむしゃむしゃ食って、そのあと残した半分を平らげて、こんどは僕の部屋で、リンゴの薄く切ったのを食う。
まえは、ぼくより先に行って待っていることもあったのに、さいきんは居間で催促しつづけているのを連れてこなければならなくなった。
それが、けさは珍しく、ひとりでやってきた。
アッチぶつかりコッチぶつかり、可哀そうになるが、痛くはなさそうだ。
表彰されたことを知って元気が出たみたい。

上巻を読んだあと、図書館の順番待ちだった「大使とその妻」(水村美苗)の下巻が届いた。
自分の本である「メルロ=ポンティ」は、棚上げにして、こっちを読む。
上巻を読み終えたのが9月、ふたつきしか経っていないのに、ずいぶん前のような気がする。
はじめの頁に「そのうちに、ふと振り返ると、なんとこの文章を書き始めてから半年以上も経ってしまっているのに気づいた」とあって、僕も半年以上待ち続けたような気がする。
その間、金子光晴、保阪正康、クララ・E・マッテイ、エマニュエル・トッド、多田富雄、安部公房、三島由紀夫、大江健三郎、岩尾俊兵、山田稔、メルロ=ポンティ、村上隆夫、バーナデット・マーフイー、鳥飼将雅、中村光夫、鷲田清一などという面々が入れ替わり立ち替わり、この茅屋に来臨遊ばして、僕の無聊を慰めてくれた。
それがたった二月なんかであっていいものか。

貴子の生立ち、ブラジルに12歳のときに孤児として送られた父親の思い出。
車の修理工だった父親に染みついていた油と汗の匂い、
陰気な父親ではなかったが、彼のまわりの空気にはいつも悲しみが漂っていたという。それは何十年も彼の心をひたひたにひたし続けている底のない深い海のような悲しみで、いい匂いのする陽気な母親がそばにいても、貴子は父親のそばにいるとその海に脚から引きずりこまれるような気がしたそうである。そして、その悲しみに一緒にひたひたとひたされるうちにそれは深いところで貴子の一部となってしまったのか、母親も好きだったが、父親とは切れることはありえない太い絆で結ばれているという気がしていた。しかし、母が妹か弟を出産するときに死んでしまうと、父は貴子を、山根書店の「おじいさん」と「おばあさん」の養子にして、消えてしまう。
父が月を見たり、故郷の出雲の写真が出ている週刊誌を飽かず眺めたり、童謡のレコードを繰り返し聞いては泣いている姿には、僕ももらい泣きをしてしまうのだ。
父が願って、おじいさんとおばあさんも引き継いだ、貴子を「ちゃんとした日本人」に育てる教育と躾が描かれる。
その日本という国がウソをついて送り出したブラジル移民の悲惨についても。

クウが逝って半年近くなって‥あの時より、今の方が後悔や寂しさが強くなっています。
あの時こうしておけば、あーしておけば、今ここにクウがいたら・・・何かをする気力が無くなってしまって。
クウにお願いしておきます、絶対クウの歳になるまでサンチを呼ばないで、と。
あの時こうしておけば、あーしておけば、今ここにクウがいたら・・・何かをする気力が無くなってしまって。
クウにお願いしておきます、絶対クウの歳になるまでサンチを呼ばないで、と。
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by saheizi-inokori
| 2025-11-13 11:34
| 今週の1冊、又は2・3冊
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