トッドと過ごした半日

僕の見方がまちがっていたのか、テレビで10月から医療費の2割負担がすべて３割に引き上げられるような話で、先月１割から２割になったばかりなのに、さらに３割かと打ちひしがれた気持で、病院のつきはじめの保険証確認をすると、今まで通りの２割にとどまっているのでほっとする。

時間より５分早く診察、とくに何の説明もなくプレドニンを３ミリから８ミリに増やそうという。
免疫抑制剤と免疫力向上の食事との、矛盾ともとれる関係について尋ねると「矛盾していない」とだけ答える。

納得できないので四の五のいうと、ようやく「身体の免疫力で抑え込めなかった、過剰な反応（湿疹）を抑えるのがステロイド（プレドニン）の作用。だからどんどん運動や栄養で身体の免疫力を高めることはいいことだ」という。
かんぺきに理解はできなかったが、このへんが潮時かとひきさがる、情けないね。
いままでに同じ質問をした３人の医師のなかでは、もっともマシな返答だったし。
ある医師のごときは、「免疫は難しいからな」だった。
彼にとって難しいのか、僕の理解力にとっての話なのか、わからんけど。
むかし、多田富雄の免疫についての本を読んだことがあるが、何も覚えていない。
再読してみようかな。

雨が強くなってきたので、歩くのはやめてランチをとることにする。
せんじつコーヒーだけ飲んだカフエで、孫のような女の子たちがうまそうに食っていたサンドイッチを食ってみよう。
コーヒーも飲むと２０００円を超えて、ほんとは慎むべきなのだが、このところ、いろんな出費があって、ややヤケ気味な気持ちと医療費が上がってなかったからという、気分もある。

厚切りのベーコンとゴマのベーグル、どちらも１０年は口にしていない代物。
歯医者が治療中の歯にもっとも忌むべきはパン、とくにサンドイッチがいけない（歯に圧力がかかる）と言ったが、もういいんだもん、今日の僕はイケナイ子なんだもん、の心持ち。
ナイフで細かく切り刻んで食ったベーコンもベーグルも、とてもうまい、禁断の味だ。
こんなものを人もなげに食っている若者たちに天罰がくだるように。

ゆっくり、完食したあとは、皿を下げにきた、かっこいい女性が「どうぞ、ごゆっくり」と言ったのを真に受けて読書の時間。

「西洋の没落」のエマニュエル・トッドが、文藝春秋に書いた何本かの記事を集めたもの。
１　米欧の分裂と日本の選択―米国は日本を守らない
２　トランプは「敗北の大統領」となる
３　日本は欧米とともに衰退するのか　（成田悠輔との対談）―「家族」を発明したホモサピエンス
４　ウクライナを”支援”して破壊した米国―欧州支配の装置としてのＮＡＴＯ
５　イスラエルは神を信じていない―戦争自体が自己の存在理由に
６　ロシア・ハンガリーより愛をこめて―ロシア恐怖症という「西洋の病」
７　危険なのはイランより米国とイスラエルだ―日本と同じくイランの核武装は平和に寄与する

日本をはじめ世界各国でよく売れていいる「西洋の没落」が英訳出版ができないのは、ある意味で勝利だ、というトッド。
ニヒリズム、虚無の産物が、イスラエルをはじめ米欧を支配しようとしている。
メルツ政権のドイツが、イデオロギーとしての「軍事主義」、外交政策としての「好戦論」とは無関係に、自らの「経済問題」を再軍備や軍需産業への転換によって技術的に解決しようとすることが、（アメリカとは異なって）公言したことを守るプーチンの核戦争へ結びつかないかが、非常に危惧される。

読みやすい文章だが、すべてを読み終わると、すでに４時ちかい。
「ごゆっくり」で４時間以上は、コーヒー込み２３００円のランチも割安となった。