買ってしまった

きのうも病院、呼吸器内科の3月おきの検診、皮膚科でブレドニンを飲んでいるからCOPDの発作は抑えられている。
薬局に行ったら、処方されたシムビコート(粉末吸入薬)の在庫がない、販売元にもないかもしれないので、後刻郵送する、とのこと。
たまたま、僕は多めに薬をもらってあるし、ブレドニンもあるからなんとかなるけれど、症状のきつい人は困るだろうな。

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薬局を終えて10時前、いつものぶら歩きをしようかと思ったが、あまりにも天気が良すぎて暑すぎる。
それでもとりあえず成城学園まで行って、そこで考えようとバスに乗る。
西口のバス乗り場に一台も発車待ちがないので、駅の三省堂に入る。
涼しい!

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つぎつぎに読みたくなる、買いたくなる本が目に入る。
図書館の本もあるのだから、と必死に衝動を抑えるが、店内滞留時間に比例してヨミタイカイタイが強くなる。
このところ、映画も見ていないのだから、一冊や二冊の新刊本を買っても罰はあたるまい。
僕にとっては本は映画よりはるかにコストパフォーマンスが良いじゃないか。

遠慮会釈なしに、傍線を引いたり!記号を書き入れたりして読む快感と「読みたい!」と思った瞬間に読む快感が図書館本にはないのだ。
それに、これは加藤陽子「となりの史学」に載ってた本なのに、図書館になかった本だ、と「ロシア革命 破局の8カ月」(池田嘉郎)、これもなにかで必読書とされていて、学生時代に読まなかった、しかもこれも図書館になかった本「歴史とは何か」(E・Hカー)と二冊の岩波新書を買うことにする。

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かつて本屋に入ると、辛抱ができなくて一冊買えば、そのまま4冊も5冊も買い込んだときは、今よりも懐具合に余裕があった。
だが、そうやって買い込んだ本は積読になることも多く、読んでもそれほどの感銘を受けなかった。
原則図書館としてから、こうしてときどき衝動や欲望に負けて買った本は完読するし、買って良かった、読んでよかった、という気持になることが、とくに昨年秋あたりから続いている。
そもそも、「となりの史学」もそうして本屋で買ったのだ。

ほかにも、井筒俊彦からみ、池田嘉郎、、いればいるほど見れば見るほど、欲しくなる本が増えてくる。
たぶん、これらも図書館にはないかもしれない、今買わないとなくなるかもしれない、と強迫観念が襲って来て、さすがに恐ろしくなって、炎熱燃える外に出る。

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調布行きのバスがまもなく来るらしいが、どうも今日はあの調布を歩く気になれない。
成城学園前駅の近くを歩いて、昼飯によさそうな店を探す。

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どの店もちょっと高いし、なんとなく気どってやがる。
するとブックオフにぶつかって、ふらふらと入る。
見るだけ、触るだけ、、それがまた敗北、敵は、町田康「告白」。
帯の「これが我々の時代の代表作です―又吉直樹」や、谷崎潤一郎賞受賞とか、「人はなぜ人を殺すのか。実在の大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフに」とか、解説を石牟礼道子が書いていることとか、842頁の厚さとか、よってたかって攻めてこられて全面降伏、税込み830円ほどを差し出す、1ページ一円。

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こうなったら、今日はもう、これを読む、そう決めて、いつもの居酒屋で、いつもの『サバの塩焼き定食、ご飯は少なめ』(1000円・現金のみ)を食う。

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テレビでは大谷がヒットを打って、両手をあげて左右に振っているのが、僕に対するエールのように見える。

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駅前のカフエで読みだしたのは、町田康「告白」。
極度に思弁的、思索的で、思いと言葉と行動が一致しない。
思いが言葉になっていかないから、俺の思っていること考えていることは村の人らには絶対に伝わらない。
恐怖に追いつめられると、むしろ清明な心境になって、殺すんやったら殺せという落ち着きが生まれる。
心臓は早鐘を撞くようであり、時間間隔もおかしくなって時が実体化して皮膚の近くを渦巻いているようだった。

河内の赤坂、大楠公の故郷にうまれた百姓・熊太郎が、明治20年、30歳を過ぎる頃には、飲酒、賭博、婦女に身を持ち崩す、完全な無頼になってしまった。
その過程を河内弁満載で描く前半300頁ほどを一気読みした。
程度の差はあるが、熊太郎の性格はちょっと僕に似ている。

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16日のブログのコメントで、Solar18さんが、ヨーロッパがアメリカに頼らないと考えたまでは良かったが、それが軍備拡充に結びつくことに、人間が嫌になる、と書かれたのにたいして、せっかく言葉というものがあるのに、それを使わない人間は退化している、と答えた。
そうしたら、この小説に一言主という言離(ことさか)の神のことがでてくる。
そもそも一言主という神様からして不気味な神様で、顔が醜くて、悪事も一言、善事も一言で言い放つ言離の神である。この世のすべてのことを一言で言い放つ。善いことも一言で言う。悪いことも一言で言う。言葉というのはなんのことか分からぬが言葉で物事を離つ、世の中のすべてのことをばらばらで単純な言葉に分解してしまうようなイメージがある。突如現れてすべての問題を一言で解決してしまう。
これは救いに似てけっして救いではない。
雄略天皇が始めは尊崇し、やがて喧嘩になって土佐に流したという話もあるようだ。
国際紛争は、やっぱり神頼みではなく、一言ではなく(トランプのように)、条理を尽くした自らの言葉で解決すべきだな。

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Commented by nanamin_3 at 2025-06-18 09:30
臨場感あふれる本屋の逡巡。激しく同意です‼︎笑
Commented by saheizi-inokori at 2025-06-18 09:46
> nanamin_3さん、食べ物やコーヒーなんかに使うお金を考えればそんなに悩まなくてもとも思うのですが、そうすると食べ物を切り詰めなければならない。
花より団子なのかなあ。
Commented by tsunojirushi at 2025-06-18 10:05
町田康、こんな作品を! これは気になります。あ、鯖も美味しそうです。
Commented by rinrin1345 at 2025-06-18 11:23
私も本屋さんに行くとあれこれ買いたくなって、最近は本好き仲間と話題の本はシェアして読んだり出来るのは年間暮らしの良いところかな
Commented by byogakudo at 2025-06-18 11:40
『アリス』で、「私を飲め」と書かれた小瓶を飲むとアリスは異界に落っこち、
さまざまな冒険を経巡ります、たしか。
あれは、本屋さんの棚の本が「私を読め」と語りかけて人に買わせ、読む人を
さまざまな思考冒険に誘い込むことのメタファーだったのでしょうか?
Commented by saheizi-inokori at 2025-06-18 16:04
> tsunojirushiさん、町田が好きならお勧めです。くっすん大黒とか、
Commented by saheizi-inokori at 2025-06-18 16:07
> rinrin1345さん、あんまり大き過ぎる本屋だとかえつて食欲が減退します、ちょうど良いくらいの本屋が少なくなりました。
Commented by saheizi-inokori at 2025-06-18 16:10
> byogakudoさん、なるほどね。
たしかにちよつと酔ったような感じになりますね。書名や装丁がヤバい!
Commented by higashinuma at 2025-06-18 16:14
本屋での攻防分かります!
造り付け本棚は奥があるので、二重に入れてますが、やっぱり家の収納を考え、諦め。
大事な薬は地震などの対策で3か月分は切れないようにしています。
成城学園は老舗の和菓子屋さんが何軒かしっかり営業されて助かってます。
居酒屋「こじま」は知らないが、鯖焼美味しそう。昔は「藤」で昼定食でしたが、息子さんに変わって美味しくないので行かなくなった。愛想は良くなったみたい(笑)
Commented by saheizi-inokori at 2025-06-18 17:36
> higashinumaさん、あんこ屋とかね。
藤も昔一度行きましたが、、。
今は医師も薬を次回診療までの分きっかりしか処方しない人が多いようです、それが正規の扱いなのでしょうが。
Commented at 2025-06-18 19:15
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by Solar18 at 2025-06-18 20:38
次々に読みたくなる、書いたくなる。わかります。私も(こちらの)本屋になるべく入らないようにしています。薄い本でもハードカバーだと25ユーロ(4000円?)もするので。
「プーチンやイランの支配者には言葉では解決できないから、軍事攻撃で対処」という姿勢が政治(革新系も含む)でもジャーナリストの間でも支配的です。その背景には、「自分たち(西洋)だけが倫理的に正しくて、他者は悪者」というような傲慢な態度が見えます。
Commented by saheizi-inokori at 2025-06-18 21:25
> 鍵コメさん、お手数をかけてすみませんね。
玄関にある各戸の郵便受けはあまり大きなものは入りません。配達人がピンポンして中まで入ってきます。だから着払いでどうぞ。
Commented by saheizi-inokori at 2025-06-18 21:35
> Solar18さん、本屋が潰れてしまうのでできるだけ本屋で買ってやろうと思うけれど、年金暮らしにはなかなかです。
なんだか第二次大戦前のようになつてきたような感じですね。

Commented by at 2025-06-19 06:22
町田康、現代の語り部ですね。
管理人様のお読みになる世界の構造と本質を解き明かす書籍群、すごいですね。
僕はどうしても俳諧関係ばかりを読んでしまいます。
読書に関しては保守主義(?)の福です(苦笑)
Commented at 2025-06-19 09:32
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2025-06-19 11:25
> 福さん、目の前に現れるものをつぎつぎに食べる。
雑食ですね。
もう何かが残らなくても食欲さえ満たされれば、食慾のあるうちが花と思っています。
Commented by saheizi-inokori at 2025-06-19 11:26
> 鍵コメさん、ありがとう。
和の方が多いですね。あちこちにいます^^。
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by saheizi-inokori | 2025-06-18 09:11 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(18)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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