幽霊になるために

日曜日の朝、東京FMでビギンの番組を聞きながら洗濯をする。
いつまで経っても田舎の仲良し青年たちのような、素朴な笑い声が絶えないのが、心地良い。
うちなーぐち(沖縄言葉)で、「くがにちんだみ」という番組名。
「黄金の調弦」という意味だという。
けさは、視聴者に「自分が伝えたいくがに言葉」を募集すると言って、ボーカルの栄昇が、自分は高校の恩師の教えてくれた「野面積み」がそれだと、その意味を話す。
野面積みは、自然の、ごつごつした角もあるやつ、丸くてちいさなやつ、さまざまな石が組み合わさって、きれいな頑丈な石垣ができる。
人間のチームもいろんな奴がいて、その特徴を活かしあって強いチームになるのだ、と。

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ビギンを知ったのは、若い頃見ていた深夜テレビの「いかすバンド天国(イカ天)」で、無名だった彼らがどんどん勝ち抜いていくところだった。
今調べたら、彼らは5週勝ち抜いて、2代目グランドイカ天キング(1989年9月)となっている。
僕がJR東日本企画を創った翌年、日経新聞から来た社長に嫌われて、後ろ髪を引かれる思いでJR本社に戻って開発事業を担当した頃だ。

その後、千葉の支社長になって、開業したばかりの京葉線の集客のために、大晦日に葛西臨海公園駅前で、徹夜でイカ天みたいなことをやったらどうか、豚の丸焼きなんかもやってさ、と半ば真剣に提案したら、まじめな部下が、あんな騒音を徹夜で鳴り響かせたら、コテンパンに叩かれますと諫めてくれた。
無人の荒野みたいに思っていたが、近くに病院もあるのだと。
のちに、鉄道会館で、体力の限りを尽くして奮闘していたときに、休日のソフトボール大会で、一塁まで疾走する途中に倒れて、救急車で運ばれたのが、その病院だとは知る由もなかった。

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その鉄道会館で、東京駅90年を記念して「I LIKE TOKYO STATION」というキャンペーンをやった。



そのとき、丸の内北口ホールで、ビギンのコンサートをやろうと思って、ビギンの出演はなんとかなりそうだったのだが、大群衆が集まったら(無料でやるつもりだった)、どういう混乱が起きるかもしれない、と、これも真面目な部下に言われて取りやめた。
思えば、懐かしくも若かりしあの頃、つい昨日のことのような気もする。
ビギンとはそんな縁があるのだ。
向こうはまったく関与していないけれど。

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「西洋近代の罪 自由・平等・民主主義はこのまま敗北するのか」(大澤真幸)を読了。

ガザ戦争・ジェノサイドを解決するために必要な仲介者は、日本がなるべきだという。
西洋近代の罪、植民地主義と人種主義の落とし子である、イスラエルとパレステイナを和解させるには、西洋の真似をして、植民地主義と人種主義に走ったのに、それを、あたかも「善意の被害者」であるかのごとくにおもいなして、心から反省して、植民地主義と人種主義を総括していない日本が。
日本人は、いまだに敗戦のトラウマを克服できないままに、極端な対米従属の「永続敗戦』(白井聡)を続けている。
最初から善人である者は、真の善人ではない。
悪だった者が、自らの悪を悔い、内発的に善を獲得した主体として立ち上がる。
その化学変化が真の善人を作る。
理念的には植民地主義と人種主義を悪として、訣別したはずの西洋の偽善が、いかなる粉飾も受けずに暴力的なかたちで実行されてきたのがパレステイナ紛争地帯だ。
自らも植民地主義と人種主義の罪を犯した者として、その状態をただ傍観しているわけにはいかない。
我々こそ、両者の平和的共存に向けて立ち上がるべきだ。
日本人の多くがこのように考えた時、はじめて日本は戦後から脱却できるのだ(「世界」を取り戻す)。

まず政府はパレステイナを正式な国家として承認することが第一歩。
そして、ユダヤ人とパレステイナ系の人々のなかにいる、批判的な抵抗勢力をさまざまな方法で結びつけるのは、NPOのような民間の組織になら、可能なはずだ。

と、大澤は言うのだが、、。
彼も前書きで、それは「夢のようなこと」かもしれない、と認める。
こんな現実に出来そうもないことを書いた自分は、学者として敗者になるかもしれないとも。
だが、たとえ現実にならなかったとしても、それを訴えて敗者になった者がいるのといないのとでは違う。敗者は幽霊となって、のちの世代にとり憑くことができるからである。本書を世に送り出すのは、幽霊になるためでもある。
と。
最後の章はトランプ現象をどのようにとらえるか。
陰謀論についての解釈などだ。
これらについては追って。

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Commented by マコママ at 2025-05-11 14:47
はじめまして。
毎日、拝読させて頂き読み逃げお許し下さいませ。
京葉線の開通を見越して購入したマンションに住んでおりました。
なかなか開通せず、夫は地域バス?で西千葉駅から通勤でした。
京葉線が開通してからは千葉みなと駅からでしたよ!
ここへ引っ越してはや、34年となりあの頃が懐かしいです。夫はもう旅立ち独り身です。千葉へももう行っておりません。
いつも綺麗なお花のお写真有り難うございます♡
Commented by saheizi-inokori at 2025-05-11 20:11
> マコママさん、いらつしやいませ。
千葉みなと、市役所や飼料コンビナートにタワー、みんな懐かしいです。
Commented by jasmine-boo at 2025-05-17 21:38
末っ子が京葉線ファンなので、開通当時の話を聞いてみました。開通式にはミッキー&ミニーも登場したんですね。
検索したら当時の動画があったので、もしかしたらsaheiziさんが映っているかも?!って見てました(^-^)

それにしても国鉄時代は色んなご苦労があったのですね。ストライキのことなど末っ子が教えてくれました。
日本の鉄道を支えるお仕事、本当にお疲れ様でした。
Commented by saheizi-inokori at 2025-05-18 09:58
> jasmine-booさん、わたしが千葉支社に着任したのは京葉線が開通したあとでしたから、そこには映らないなあ^^。
国鉄末期の悪戦苦闘も今は懐かしいです。
あれを経験できて良かったと思っています。
ブログのネタにもなりますし^^。
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by saheizi-inokori | 2025-05-11 12:33 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori