貧しい育ちの幸せ

ふかしたジャガイモにマグロの酒盗をつけて食うと絶好の酒の肴になる。
その酒盗の壜を、高校生はあちゃんがみつけて「わ、酒盗だ」と羨ましそうな顔をした。
はあちゃんのママにもらったんだけどね。

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(サンチの食べる焼き芋を買う)
高校の頃、うまいものというと学校の売店で売っているウドン、天かすをいれたショッパイ真っ黒な汁のウドンが、20円くらいだったろうか、いつでもすきっ腹だったからいつでもご馳走だった。
中学のときは、学校の近くのうす暗い家でつくっている「揚げパン」がうまくて、揚げたてを頬張るのが幸せだった。
包んだ新聞紙に油がしみ出た。
大学に入って、ときどき栄養補給にいく親戚の家で初めて食べたボルシチは衝撃のうまさだった。
入学祝に連れて行ってもらった、高級中華やホテルの洋食も夢見心地で食べた。

社会人になって、高級な店で食う機会が増え、とくに東京駅の飲食店街の開発をしていた頃は、今は亡き小山さんという女性コンサルタントの導きで、一流シェフたちの勉強会のメンバーに加えてもらって、今から思うと贅沢窮まるグルメ体験をすることができた。
その頃、友人と会食をすると「佐平次は舌がうるさいから、会場選びに苦労する」といわれたこともある。
店の名前とか格、知名度ではなく(高いからうまいということはない)、いっけん汚いような店でもウマいものをみつけて喜んだ。

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(学大商店街で)

八十路を越えた今、僕はもう大抵のものをうまいと思って食えるようになった。
わざと不味くしているとしか思えないような店(カッコつけてる店に多い)以外なら、なんでもOKだ。
これは、若い頃に真っ黒なウドンを喜んで食って育ったお陰だと思う。
はあちゃんは、なんでも自分で作って食べるから大丈夫だろうが、高級なものばかり食って育った子供は、そういう暮らしが出来なくなったとき、淋しい思いをするのじゃないか、と思う。

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昨日は学大のカフェで、「三島由紀夫伝説」の続き、少年詩人時代(詩魂はなかったと奥野)から早熟の天才小説家への変貌、「彩絵硝子」と「花ざかりの森」について読む。
16歳で書いた「花ざかりの森」は、三島本来の新感覚派に近く西欧的な作風を、国文学的な傑作に変えて、日本浪漫派の蓮田善明などに激賞されるが、これは三島の仮面ではなかったかと奥野は言う。
「花ざかりの森」を20歳のときに、創作集として上梓したときの、長いあとがきを読んで、「ひょっとするとこの作者は、ずるい世渡りのうまい小心者ではないのか」と感じたとも。
召集を間近に控えて遺書のつもりもあったのかもしれない。
天皇の存在など眼中にないかのような作品と、没後発見された遺書における天皇陛下万歳の文言と、どちらが当時の三島の本心だつたのか?

奥野も指摘しているが、三島は太宰とよく似ていると思った。

蓮田善明は、兵士としてマラヤのジョホールで、戦争直後の聯隊長の変節に憤り射殺、その後自らは自殺したということを始めて知った。

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(和久傳 蓮餅栗餡)

パソコンのマウスが機能しない。
スマホからの投稿。

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Commented by テイク25 at 2025-02-16 13:58
マウスの電池は大丈夫ですか?
2、3日前にキーボードが動かない!としばらく慌てた後、電池かな?と思って取り替えたら動きました。今回は神様仏様の出動なしです。
Commented by eblo at 2025-02-16 15:41
始めて就職したとき銭湯の帰りにいつも買っていた屋台のコッペパン。
パン10円、奮発してピーナッツバターをつけると5円プラス。
あれだけは未だに覚えています。
多分唯一の楽しみだったのだと思います。
Commented by open-mind1109 at 2025-02-16 16:26
蒸かしたジャガイモにマグロの酒盗、想像しただけで…🍶
味覚が優れた人は子供の頃澄んだ空気と美味しい水のある環境で育った人に多いと有名なワインソムリエの人が言っていました。
そういう人は健康に育つのでしょう。
sahwiziさんも思い当たりませんか?
私もそういう環境で育ったのに、残念ながら舌が貧乏だといつも感じています。
贅沢な食べ物にあまりそそられないというか・・・
最近は特にシンプルな味付けで薄味の物が好きになってきて年齢を感じています。
いずれ空腹であれば何でもご馳走だといつも思っています。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-16 16:57
> テイク25さん、コジマ電機にマウスを見て貰ったらなんともないそうでした。
いろいろやって今は回復しました。
ふ~っ。
Commented by sonoma0511 at 2025-02-16 16:58
大昔、弟に新宿方面のロシア料理店に連れてってもらい
ボルシチを食べたので初めてでした。可愛い小さなレストランでした。
パソコンのマウスが動かない時。
私も何度かマウスを変えたりしましたが、電池を入れ替えたら
動きましたが、どうでしょうか?
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-16 16:59
> ebloさん、コッペパンと言えば小学校の給食!
風邪で休むと友だちがもってきてくれて玄関の床に置いていくのでした。
紙には包んでありましたよ。
それを食うのが嬉しくて!
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-16 17:00
> open-mind1109さん、そちらの料理はどれもこれもとてもおいしそうですよ。
見れば分かります、余計なことをしてないもの^^。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-16 17:05
> sonoma0511さん、その後自分でもボルシチを作ったことがあります。
三日がかりくらいでゆっくり作ったように記憶しています。
美味しかったけれど、さいしょに食べた時の衝撃にはかなわなかったです。
マウス、ようやく復活しました。

Commented by stefanlily at 2025-02-16 18:54
ボルシチは長崎の「ハルビン」で初めて食べたです。永六輔の大好きなお店だとか。
 エキブロで勝手に広告に飛んでいくのに困ってます。マウスの復活良かったですね。
三島由紀夫全集にデビュー作よりも前に書かれた初々しい短編が幾つか掲載されてます。既に早熟ですね。
成績トップで銀時計を天皇陛下から賜ってる、「春の雪」の皇后の描写。
「などてすめろぎは人となりたまいし」…好きだったけど嫌いになったのかな、身も蓋もない言い方をすればですけど。
太宰を好き及び似てる論ありますが、私はそうは思いません。
短編は思ってたよりは読めたけど、太宰の長編は読めないかなあ。私にとっては、もはやアンチ巨人的な扱いですね。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-16 21:17
> stefanlilyさん、作品というよりも、人間が太宰に似ているように思います。
Commented by at 2025-02-17 06:36
「花ざかりの森」。
16歳の若者がこのような古典情趣の横溢する作品を書くとは!
読んで驚嘆した思い出があります。
後に読んだ「豊饒の海」に通じるなと感じていたところ、
「澄んだ静謐」などで通うところあり、とウイキペディアにありました。
歴史意識が主題ですが、あくまでも観念的、美的なそれであり、三島の三島たる所以を知ることが出来ます。
Commented by nanamin_3 at 2025-02-17 09:30
懐かしいタバコ売り場!!!
でも、タバコは売っていないのでしょうか?
昔は(かつての)看板娘みたいな人が座っていたりしましたが、
最近はめっきり見かけなくなりました。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-17 09:30
> 福さん、奥野は知らない読者が「豊饒の海」を読んだら、「花ざかりの森」の剽窃盗作だと思うのではないかと書いています。
二作が彼の真髄だったのでしょうね。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-17 09:32
> nanamin_3さん、これはいろんな古い看板をならべた店でタバコ売り場ではありません。
でもまだ向こう横丁のタバコやはときおり見かけますよ。
可愛い看板娘はいませんが。
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by saheizi-inokori | 2025-02-16 11:43 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(14)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori