ご褒美

ゆうべの散歩は風がすごかったね。
坂道を後ろから押してもらうような風、まだ春一番ではないのかな、寒波がまたくるんだと。
桜はどうするのよ。

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脊椎管狭窄症と膝関節炎で杖にすがって歩き、さいしょの医師は「これは治らない、安静にして出来るだけ歩かないこと」と、なんだか得体のしれない電気療法を勧められてずいぶん通った。
あまりよくならないので、違う医師に診てもらって、勧められた体操療法を何年も毎日欠かさずまじめにやり、学大前の靴屋で寸法にあった(高価な)中敷きと靴をあつらえて、歩き方もかえた(つもり)。
血流を良くするというので、貧乏ゆすりもずっと続けた。
そうして今は、ときに一万歩をこえる散歩が平気になった。
だらしのない男でも、これだけ出来たことを褒めてやりたい。
ご褒美はこの散歩だ。

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(いぜんは吼えたのに、じっと見守るのはサンチをつれていないからか)

きのうもサンチを膝に抱いて本を読んだ。

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「日本軍兵士」があまりにも悲惨で、読む気になれず、図書館から借りたもう一冊の「三島由紀夫伝説」(奥野健男)にとりかかった。

ぼくの家の応接間の椅子に坐り文壇や作品にあれこれの悪口を言い、たのしそうに大声で笑うあの男がもうこの世にいない。鳥鍋を、ふぐ刺しを、そして厚いビフテキをむさぼり食った男、葉巻をすすめられ、どちらから吸ってよいかもたもたしている北杜夫やぼくに葉巻の吸い方くらい知っていなさいとからかいながらたしなめた男、ゲイバーやいかがわしいキャバレーや大トリスバーに連れて行ってくれ、帰りに新しい地下鉄に乗ってみようと言った男、夜中気軽にダイヤルをまわせば何でも教えてくれた男、そいつが今やいない。しかもあんな常識を超えたやり方で死んでしまった。ぼくとは別世界に行ってしまった三島由紀夫、、。こんなひどい裏切りにあったのも、こんなみじめな気持ちになったのも、かなしかったのも、生れてはじめてであった。
昭和45年11月25日、三島の自衛隊における割腹自殺、その日僕は館山の国鉄保養所に現場管理者の研修の講師として出張、駅から乗ったタクシーの中でニュースを聞いて、研修の挨拶の冒頭でその衝撃について語ったことを覚えている。
でも、奥野のような悲しみの気持は湧かなかった。
この評伝の冒頭に記された奥野の文章は、生ける三島の横顔を生き生きと伝えて、奥野の悲しみをきわだたせる。
これはぜひ読まなければならない、そんな気にさせる。

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房総の友人が庭で採れた柑橘類をたくさん送ってくれた。
「採れた」というけれど、脚立にのぼったり高ばさみを使ったりして「採って」くれたのだ。
僕より一つ上、けっして安楽な仕事ではなかったと思う。
それを想いながら、金柑をムシャムシャ食う。

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もうバレンタインなんて縁のない話と思っていたら、カミさんがくれた。

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きゃあ!と嬌声をあげはしなかったが、さっそく一粒口に入れる。

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そのうえ、これは成城の「餡や」の「わらび餡」、けさはやたらにいろいろお八つが多い日だ。
きのう流しのシンクを磨いたり、いろいろ働いたご褒美なのかもしれない。

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Commented by Hana3131H at 2025-02-14 13:45
サンチを連れていない散歩、犬仲間(犬)ともコミュニケーションが取れない、取るのが辛いですね。頑張れサンチ!

私は三島の割腹自殺の日、大学の側の小さな本屋でたまたま三島の本を手に取って立ち読みしていました。市ヶ谷が近いのでサイレンの音!SNS時代でもないのに程なくそのことを知り呆然としました。翌朝「朝日新聞」(テレビはないのに、新聞は購読)の写真を見た時の驚き!あの頃の忘れられない記憶です。

奥様のプレゼントのチョコの缶、良いなぁ~!
Commented by notebook_59 at 2025-02-14 15:30
膝が痛くて歩けなかった時期、「じっとしてるともっとダメになるぞ」と夫にはっぱをかけられたときは、こんな情のない男とはとてもやっていけないと思ったものですが。
実際、毎月のヒアルロン酸注射が少しは効いているのかなと思ったのは始めの頃だけで、予約がとれなかったときから整形通いをやめています。
家の中ではやはり階段がきついのですが、リハビリだと思って上り下りしています。
佐平治さん、散歩を続けておられるのが素晴らしいです。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-14 15:50
> Hana3131Hさん、あれから半世紀と5年、昭和のかけらもなくなったように思えます。
それは昭和に絶望した、三島や太宰の望んだ変化ではないと思うのです。
もう、時代に絶望して自裁する作家は不在ではないでしょうか。
不幸な時代というべきでしようか。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-14 15:55
> notebook_59さん、筋力と柔軟性の低下がますます症状を悪化させるのではないかと思います。辛坊強く、頑張りましょう!
Commented by unjaku at 2025-02-14 16:32
saheijiさん こんにちは。
高校生時代から、三島由紀夫は浴びるほど読みました。
でももう読みたくない作家です。
耽美主義で破滅的で、自虐に満ちた小説の数々。
市ヶ谷で大きな事件を起こし自決した人。

あんなに読んだ本の数々は、もう一冊もありません。
あの人は、他人を不幸にする思想の持ち主ででした。
そのくせ大乗仏教に大きな関心を持っていました。
その矛盾を自分の中でどうやってけりをつけていたのでしょう。

自裁なんてカッコつけなくてよかったのです。
ひとりで静かに死んで、忘れられていけばよかったのです。

三島由紀夫より今一日10000歩以上を歩くsaheijiさんのほうが
よっぽど尊敬できます。
Commented by stefanlily at 2025-02-14 17:59
こんにちは、
奥野氏は三島関連でよく目にしました。著書は未読かな…
三島も澁澤龍彦もいないから読む本が少なくなりました。
「自殺作家文壇史」が面白いですよ。
亡くなった当時の三島の書籍売り上げが凄かったと。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-14 18:17
> unjakuさん、生誕百年、それは昭和百年でもあり、自分の生れて育った昭和という時代を考えることができようか、それと同時にああいう作家の人間性に興味があります。
私に似たところもあるのですね^^。
私はあんな死に方はできませんししたいと思いませんが。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-14 18:24
> stefanlilyさん、奥野は太宰治で知ってました。
東工大出身なんですね。
東芝で科学技術庁長官奨励賞、特許庁長官賞を受賞した優れた技術や、これも二刀流ですか。
今時代に絶望して自殺しそうな作家って、誰か思いつきますか?
Commented by kitaoni22 at 2025-02-14 19:39
奥野先生、、、半世紀も前の学生時代の事ですが奥野健男ゼミでした♪
懐かしいなぁ〜
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-14 21:25
> kitaoni22さん、そうでしたか。羨ましいなあ。
私は学校をサボり、ゼミも受けない学生でした。せっかくの大学生活、もったいないことでした。
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by saheizi-inokori | 2025-02-14 11:24 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(10)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori