神田から神保町へ 幻をおいかける

豪雪地帯のみなさんのご苦労を想いつつ、洗濯物を干す。
保湿剤などでべたべたになった下着やパジャマは前夜もみ洗い、洗剤に漬けて寝て朝いちばんで踏み洗いしてから洗濯機に放り込む。
腰が痛くなる。
小さい洗濯機を買って予備洗いをするか、それとも今ある洗濯機でいちど予洗するか、思案中。

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(調布で)

きのうは、前回より少し遅く家を出たので、電車に座れた。
新聞を細長く畳んで隅から隅まで読む。
いつも見出しとリードくらいの斜め読みしているのがもったいないくらいいろんなことを知ることができた。
車内、ざっとみて新聞紙を広げているのはもはや骨董的存在だな、本ですら。

ざっと触診の後、薬をつづけることにしたが、薬代が厳しいので、二週間分を三週間で飲んでもいいかと尋ねて、結構ですとの返事をもらう。

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この前は日本橋の方に向かって歩いたので、こんどは神保町にむかう。
神田駅から、先ず方向を確かめて、神田警察署通りを司町、美土代町、錦町と歩く。
馴染んだ居酒屋や銭湯、前の漢方医などに行く東西の幾筋かの道を串通しにするような広い道だ。
あの頃にはみたこともないような「現代的な」ビルがあたりを睥睨している、、やっぱり三井じゃねえか。

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カレーやと蕎麦屋がちらほら見えてくると、もう神保町だ。

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福田和也が死ぬ前に行った、移転後の「グリル南海」は開店30分前なのに並んでいる。

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「さぼうる」も、「あと何分待ちますか」と訊く男、寒いからなあ、「入るだけなら10分くらいで」と顔を出した店の女。

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吉本新喜劇の劇場も僕には何の断りもなくできて、すべての公演が完売とある。
あげなものを喜ぶのは生粋の江戸っ子じゃあんめえ。

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いくつかの古本屋を歩く。
万巻の書を眺めて、いつも感じることだが、自分がいかにも卑小な存在だということ。
上京して、寮に入りすぐにしたのは、大学の生協で校章の印刷されたナップサックを手に入れてここにきたこと。
「ろうそくの科学」(フアラデー)、「零の発見」(吉田洋一)、あと何を買ったか、ずっしり重くなったナップサックの紐が肩に食い込んだ。
知の奥深さなど、言葉で知るだけで、こうしていろんな本を読めば、知の山に登れるという漠たる、根拠のない自信があったのだろう。
あの自分を思うと、肩をゆすって「いいか、目を覚ませ」と喝を入れたくもなると同時に、ちょっと愛しくもなる。

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昼飯は、「南海鶏飯 天鶏(てんちい)」で、「鶏麺」780円、パクチー大好きだ。
隣りに中年の背広姿が三人、終始笑顔で、しかもほとんど会話を交わさずに、ほぼ同時に「チキンライス」と「カオマンガイ」を食い終える。
きょねんシンガポールで息子にあちこち食べ歩きに連れていってもらって、これを食わなかったような、、まてよ食ったかな、もう忘れている。

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「古瀬戸」というギャラリーのカフエでカフエラテを飲みながら、「大森荘蔵セレクション」を読み始める。

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これも随分前に買って、積読だった。
井筒俊彦を読めたのだから、そろそろこっちも読めるかもしれない、と思って携行してきたのだった。
1921年に岡山で生まれ、長じて東京帝国大学理学部で物理学を学び、卒業後は海軍技術中尉として「殺人光線の研究」(本人言)に従事、復員後文学部哲学科に再入学、二度にわたるアメリカ留学を経て、東大教養学部教授を務める。

一般読者向けのエッセイを集めた第一部、「夢まぼろし」では、「まぼろし」も非在ではなく「見えるが触れえぬもの」として存在したという。
だから幻は不可触(アンタッチャブル)な存在ではあるが、虚妄の非在ではない。存在のこの区分は存在と非在との区分ではなく、われわれの生き死ににかかわるものと、かかわらぬものとへの分類なのである。それによって現実と幻とが区分けされ、真と偽とが区別される。だからこれらの区別はきわめて人間的な区別、というよりもむしろ動物的な区別なのである。
区別は区別された両方のものが存在していなくてはその働きを失ってしまう、って。
夢は、覚めた世界と比較されると、相手の(覚醒している)陣営の中でしか品定めされないのでどうしても影が薄くなる。
でも、夢も非在ではない。
夢と覚めた世界との対比は、人間の動物的条件に根ざした「存在の分類」なのである。
夢まぼろしはありもせぬものではない。
ただ現在只今食べられないものだのである。
そして人は時に、食べられないものをありはせぬものだと言うのである。

またまた、面白い先生がいるね。

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(天ぷら 「はちまき」のウインドウで)

帰りに東京堂によって、熟慮の末に、カルロ・ロヴェッリ「すごい物理学講義」(1078円)を購入する。
「時間は存在しない」という量子論で存在の本質について学ぼうというわけだ。
文庫本一冊で、そんなことが学べるはずもないとは思いつつも、せめてそのあたりをうろつきたいのだ。

Commented by seisyo001 at 2025-02-06 14:12
ルカによる福音書 21章
21:10そして更に、言われた。「民は民に、国は国に敵対して立ち上がる。
21:11そして、大きな地震があり、方々に飢饉や疫病が起こり、
恐ろしい現象や著しい徴が天に現れる。

ブランドン・ビッグス牧師の新しい疫病が来る預言と
世界恐慌が来る預言。              

ヨハネの手紙一 4章
4:8愛することのない者は神を知りません。神は愛だからです。

ライフラインは枯渇し、壊滅する。
Commented by kadakura at 2025-02-06 21:37
「小さい洗濯機を買って予備洗い」に一票。
安価なものでも、よく働いてくれるそうです。

文明の利器大いに活用派、です(ΦωΦ)
ラクして楽しくで良いのでは~~~。
Commented by Solar18 at 2025-02-07 02:42
さぼうる、ああ懐かしい。昔、仕事で神保町はよく行きました。古びた雰囲気が好きでしたけど、変わってしまったんでしょうね。
Commented by at 2025-02-07 06:35
神保町には私の好きなものがすべてあります。
古本屋。中古レコード店。うまい店。何よりもその雰囲気。

最近はアマゾンや日本の古本屋などを利用することが多いのですが、
「揚子江菜館」の冷やし中華を食べた後は、ついつい2,3冊買ってしまい、
明治大学近くのディスクユニオンでジャズも2,3枚買って、財布の中は、嗚呼無情!ということに(笑)
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-07 08:49
> kadakuraさん、そうですか、ではそうしようかな。
カフエ行くのを少し減らして^^。
ありがとう。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-07 08:51
> Solar18さん、さぼうる、見かけはきれいになりつつも変りません、なかには随分入っていませんが。

Commented by saheizi-inokori at 2025-02-07 08:53
> 福さん、宝の山、なんですね。
揚子江菜館は未体験ですが、いちじ私も冷やし中華を食べ歩いたことがあります。
店の名前はみんな忘れてしまいましたが。
Commented by k_hankichi at 2025-02-07 10:33
神田駅から神保町に向かうとき、道が斜めに走っているから、意外にジグザグに歩くことになり驚きます。しかし実際には鉄路のほうが街区に対して斜めに敷かれたのでそうなっているのてすよね。南海鶏飯・天鶏、僕も好きなお店です。虔十書林の、ちょっと気難しい店主が写っていて苦笑いしました。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-07 11:40
> k_hankichiさん、てんちい、空いてますね、なぜか。
このオヤジ、宮沢賢治の童話にでも出てきそうです。
Commented by tona at 2025-02-07 16:52
電車内で本を読むは骨董品。まさにその通りですね。自分の事なので笑えました。新聞を読んでいるのは最近見たことがないです。夕刊フジは廃刊に。
骨董品は更にダイソーで支払いで店員を呼んでしまいました。
大森荘藏は初めて知った名前。あとで調べてみましょう。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-07 19:08
> tonaさん、ダイソーの無人レジ、私もこのあいだ初体験、でも無事ボールペンを買えましたよ。

Commented by gophe at 2025-02-07 22:41
先日の調布といい、個人的に思い入れの強い街が続きますね。
そういえば、ルゥがグレービーボートで出てくるカレーを食べたのは神保町の共栄堂が初めてでした。
迷った挙句、ライスの方をルゥに沈めるという新境地を開拓したのは良い思い出です。

そしてその食べ方は間違っていると教えてくれたのはボンディでした。
Commented by saheizi-inokori at 2025-02-08 10:25
> gopheさん、カレーもさまざま、私は田舎の蕎麦屋にあったライスカレーが懐かしいです、スプーンをコップの水で湿してから食べるのが作法でした^^。
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by saheizi-inokori | 2025-02-06 12:19 | こんなところがあったよ | Trackback | Comments(13)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori